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15. 領都ケンリンバーグへ向かう

「ありがとうございます、なんとお礼をいったらよいものか」

「いえいえ、お気になさらずに」


 山賊におそわれていたのは行商人の人たちだった。

 領都へ小麦を売りに行く途中で山賊におそわれたとの事。


「私が出ていたら、山賊なんか一網打尽いちもうだじんだったのに……」


 僕の後ろで、ふくれっ面な、ちびっ子大魔導がぶつぶつ言っている。

 オッドちゃんに一網打尽いちもうだじんにされてもなあ。

 あたり一面、血みどろなのは嫌だよ。


「ああ、なんという事だ、馬が、馬が!」


 ほろ馬車の馬が、山賊の矢を受けて死んでしまったらしい。

 行商人の人が馬を抱いて悲痛ひつうな表情で、こちらを、チラチラ見ている。


「ああ、こんな所で馬が居なくなったら、俺たちはどうしたらいいんだ」


 チラッチラッ。


「替えの馬を調達ちょうたつしようにも、ここは領都りょうととサカエ村の中間地点だ、困ったなあ、困ったなあ」


 チラッチラッ。


「さあ、とっとと出発しましょう、ゲンキ」


 そして、長生きしてるっぽいのに一般社会常識をどこかに落としてきた駄目大魔導師が、空気が読めない発言をする。


「もし良かったら、このキルコタンクで馬が調達ちょうたつ出来る所まで馬車を牽引けんいんしましょうか」

「え、よろしいのですかっ、ご迷惑では」

「普通に迷惑だわ」


 だまっててくれいっ、この、ご長寿ボッチさまめ。


「この人の言う事は無視してください、わりと普通に社会不適合ふてきごうい者なので」

「ゲンキ、ひどいわよ!」


 キルコタンクの後ろにロープをかけて幌馬車をつないだ。


「ではもうしわけありませんが、領都りょうとまでおねがいします」

「わかりました、何かありましたら大声を出してください、声はひろっていますので」

「ありがたやありがたや」


 キルコタンクは馬車を牽引けんいんしてゴトゴト進む。


「げんきくん、あんまり速度は出しちゃだめなんだよ。馬車が分解しちゃうから」

「どれくらいの速度なら大丈夫なんだろう」

「馬車はだいたい人の歩く速さのちょっと上ぐらいが巡航じゅんこう速度だけど、……え、はいはい、大体日本の単位で二十キロぐらいまで平気だって、キル君は言ってるんだよ」

「了解、ちょっと時間かかっちゃうけど、まあ、良いよね、これも旅の醍醐味だいごみだから」


 領都りょうとまでは、大体三時間ぐらいかかりそうだ。

 ちなみに、キルコ内では最初パンゲリア式の時計が表示されていたが、キルコゲールの中の人の手で地球型の時計が表示されている。

 一日の時間は地球と二三分違うのだけれど、パンゲリア時間で零時になった時点で時間調節しているらしい。

 キルコゲールの中の人は、なにげに優秀だ。

 一度話をしてみたいのだが、あやめちゃんが、かたくなにヘッドセットをしてくれない。

 なぜだ。


 野をえ、山をえ、谷をえて、どんどんキルコタンクは進む。

 途中、橋を渡るのに、牽引けんいんを外したり、水場で水分補給したりしたが、おおむね事件も無く僕たちは進む。

 ちなみに、僕らの水分補給の方法はオッドちゃんが買ってくれた異世界水筒すいとうだ。

 なんかの魔獣の胃か何かで出来ていて、変な形だけど、水漏みずもれしない。これに水場で水を入れて使う。

 砂漠の魔獣らしく、入った水を浄化じょうかする機能が付いてるとのこと。

 水場が無い場合は、オッドちゃんが水魔法で水を生成せいせいして入れてくれる。

 魔法は便利だなあ。


 そして三時間後、丘をえると、遠くにケンリンバーグの街が見えてきた。

 わりと大きめの街みたいだ、街全体を高い石の壁で囲んでいる感じ。

 背後にはちょっとした丘があって、その上には小ぶりな白い城が建っていた。

 街道と街道が交わる地点にあるようで、街の南と北にも街道が接続せつぞくしていて、馬車が沢山行き来していた。

 はじまりの村に比べると大都会だな。


 街の門の前まで行って、馬車の牽引けんいんはずした。


「ありがとうございます、ありがとうございます、これは些少さしょうですが」


 そういって行商人の叔父おじさんはコインを少し僕に差し出した。


「い、いいですよ、そんな、困った時はお互い様じゃないですか」

「いえいえ、ヒダカ様には本当にお世話になって、ちゃんとした馬車でもここにくるまでには一泊しなければならないところです。本当に気持ちなのでお受け取りください」


 そういって、商人さんは無理矢理のように僕の手にコインを押しつけた。

 手の中には、思ったよりも小さい金の貨幣コインが三枚。

 ここらへんの貨幣かへいの単位は、ケルというんだ。

 鉄貨が一枚一ケル、銅貨一枚が十ケル、銀貨が千ケル、金貨が一万ケルとなってるらしい。

 この上も白金貨|(十万ケル)、赤龍金貨|(百万ケル)、とあるんだけど、これらはほとんど流通していない。

 記念貨幣というか、国家に貢献こうけんした人のご褒美ほうび用らしい。

 国家ごとに適当に貨幣を鋳造ちゅうぞうしていて、種類が多くて為替業務かわせぎょうむとかが大変らしい。


 ぺこぺこ頭を下げて街に去って行く商人さん一行に僕は手をふった。

 オッドちゃんが近くに来たので、金貨を全部、彼女に渡した。


「あら、行商人にもらったの? 別にゲンキが持っていてもよかったのに」

「オッドちゃんにはお金の世話になってるしね」


 オッドちゃんはチャラリと音をたてて、金貨を無限財布にしまった。

 お財布の中は異次元につうじていて、お金がいっぱい入ってるらしい。どれくらあるかは教えてくれなかった。


「さあ、これからどうしましょうか。街で一泊するか、それとも距離をかせぐか」


 街の門から綺麗な青色のドレスを着た女の人が小走りで出てきた。


「……、とりあえずタンクに乗ろう」

「そうしましょうね」


 綺麗な青色のドレスを着た女の人は、僕たちがタンクの上に登りはじめると全力疾走しっそうしてきて手を振った。


「ケンリンバーグの街にようこそっ!!」


 それは予想通り、着飾きかざったパトリシア嬢であったが、無視。


「キルコタンクは夜にも走れるのかい?」

「んー、ライトはあるみたいだよ、つけてみるよ」


 意外に強い光が、寄ってきたパトリシア嬢を照らす。

 あおい綺麗なドレスを身にまとい、髪を¥い上げて、ネックレスなどを付けたパトリシア嬢は、キルコのライトの中で、それはそれは綺麗だったが、無視。


「ケ、ケンリンバーグの、街に、よ、ようこそと言っているっ!」

「ようこそ、しねーから」

「ここは夜行しても距離を稼いだほうがいいな」

「賛成だよ、もう日本を二日はなれているんだよ、月火と授業をサボっているから、帰るまでに、どれだけ授業が進むか怖いんだよ」

「きょ、今日は疲れたろう、みんな、私の家で泊まらないか、ねっ」


 心躍こころおどる提案だが、無視。


「街を通るときキルコはどうしよう、オッドちゃんの異次元収納しゅうのうに入れる?」

「それがいいかしら」

「あ、キル君が、五分ぐらいだったらキルコジェット可能って言ってるんだよ」

「み、みんなが来るからって言って、お父様に、晩餐ばんさん会をひらいてもらうように、頼んで」


 晩餐ばんさん会とか心引かれるが、無視。


「ジェットを試せるのかあ、いいな」

「二日溜めて五分しか飛べないなんて、魔力の燃費ねんぴが悪いわね」

「うえっぐ、な、なんで、みんな、わたしを、無視する、んだよお」


 わあ、パトリシア嬢、泣き出した、なんて豆腐メンタルなんだ。

 なんか、嫌な感じにみんな沈黙。

 あやめちゃんとオッドちゃんが、二人して僕を責めるような眼で見るけど、僕が悪いのかいっ?


「うわああああん、っていって、私の家にっていってよおおおおっ!!」


 顔をぐちゃぐちゃにして、地面に倒れ、手足をばたばたさせながら、パトリシア嬢は泣く。

 それはもう聖騎士の威厳いげんも、くそもない、ただの駄々っ子であった。

 血相けっそうを変えて、門番の兵士さんが、こちらに全速力で走ってくる。

 ど、どうしたら良いんだ。


 結局、泣く子と領主の娘のセットには誰も勝てないという事で、今晩はケンリンバーグ城にお世話になることとなった。

 ちなみに、無視した事をあやまって、まると告げたら、パトリシアは一瞬で泣き止み、えへへと輝くように笑った。

 とても可愛い感じだった。


 だが、なぐりたい、この笑顔。

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なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第16話

パトリシアの猛攻

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