2.5章 “不”が“幸”な昔話
「やぁ、長秋くん」
神前が目の前に姿を現した。
「今日なんだな……」
感慨深そうに言ってみる。
「やっぱり後悔とかしてる?」
「…………」
意味もなく無言をしてみる。
「今からでも遅くないけど」
「何が?」
「あなたが死ぬのを取り消せるよ」
「もしそれをしたら姫奈はどうなるの?」
いい結果にはならないんだろうなと予想しつつ聞いてみる。
「死ぬよ。本来死ぬはずだったからね」
やっぱりか。
「じゃあ、そんなことするわけないよ。今さらそんなことしたら姫奈に悪いし」
「優しいんだね。もし私が人間だったら惚れてるよ」
僕は優しくないよ、とは言わなかった。自分を褒めてくれてるのに水を差したくなかったからだ。
「僕の人生の最後ぐらい格好いい死に方したいからね。今までが酷過ぎたよ」
本当に最低な人生だった。それでも今日まで生きた。だからもういい。これでいい。
「そう」
神前はただ短くそう言った。
その日長秋慎は死んだ。姫奈梓のために。はたまた姫奈梓のせいで。始まって欲しくない物語の始まりはそこだった。そして姫奈梓は病んだ。
あいつは死んで彼女は病んだ。それだけの話。
――――――昔々あるところに男の子と女の子がいました。その子達はいつも遊び、お互いを信頼していました。けれでも、女の子のお父さんは病気で亡くなり、またお母さんは殺されてしまいました。そして女の子も一緒に殺されてしまいました。しかし男の子は女の子が生き返ることを神様に願いました。それが叶えられ、女の子はあら不思議、生き返ったのです。しかしその代償に男の子は死んでしまいました。そして女の子は病んでしまいました。女の子のためにはたまた男の子のためには本当はどんな結末がよかったのでしょうか?悲劇で終わらない方法はあったのでしょうか?誰も死なない誰も悲しまないそんなおとぎ話みたいなメルヘンチックな終わり方がこの世に存在するのでしょうか?




