【6】空間の魔術師、最強捜査官の監査が入る〜「まずは結論。次に根拠を3つ」ハロウィンですよ、チーフ!〜
チャールズはジャック・オー・ランタンのライトを用意した人物としてのプレートだけは、長官と一緒に出張中のセシルに頼んで回避出来た。
しかし既に無邪気な巨人ベックを先頭に、カリスタとヴィヴィアンによって、社内チャットでオラクル職員全員に知れ渡ってしまった。
しかも、あのカボチャはホールに飾れたが、肝心のライトは終業後にしか点灯されない。
その理由は、イーサンの一言で決まった。
それは――
「ホールに入って来た人物に、先入観を与えかねない」ということだった。
チャールズは自分のオフィスで頭を抱えていた。
(先入観を与えるから、ライトを点けないということは、あのライトは害であるって言ってるようなものですよ!チーフ!!
俺が用意したってみんな知ってるのに……!!)
だが、午後にS.A.G.E.の元同僚で、今も友達である人物からのメッセージでチャールズは一気に浮上した。
それは――
『チャーリー!今年はどんな衣装で出勤するの?私は恒例のチェーンソーマンをバージョンアップするんだ♪』というメッセージと共に送られて来たチェーンソー型のバッグを下げてる画像。
そのチェーンソーは、一見本物に見えるが、よくよく見るとバッグだと分かる凝った仕様で、チャールズは感心した。
それに、一気に楽しくなって来た。
(凄いな〜!
どこで買ったんだろ!?
もしかして……ハリウッドとか!?
いやいや……それを聞くのは野暮というもの!
俺は毎年ドラキュラ伯爵だから……俺もバージョンアップして、あのライトの汚名を晴らそう!
うわ〜!
楽しみになって来た♪)
そんなるんるん気分で、給湯室に行ったチャールズがふと気づく。
(あれ……?
オフィスに飾り付けしてないな?
S.A.G.E.のオフィスはオレンジ色一色なのに……)
そこで、チャールズは気付いた。
(オラクルは結成されてまだ1年……!
さ・て・は!
飾り付けのセンスがある人がいないんじゃない!?
分かる〜!
子供っぽくなりがちなハロウィンを、職場で飾り付けするのって難しいんだよね!
でも!
俺は、S.A.G.E.のテクニカルアナリスト部門で、毎年飾り付けを担当してた実績があるし!)
そこに、ベックがドーナツの箱を持ってやって来た。
「よう!チャーリー!
お前も休憩か?
良かったら食えよ!」
心やさしい巨人は、ニッコニコで1ダース入りのドーナツの箱をずいっと差し出してくれる。
チャールズは「わー!ありがとう、ベック!」と言って、一つ頂くと小声で言った。
「ベック!
オフィスのハロウィンの飾り付け、俺がやろうか!?
S.A.G.E.では『空間の魔術師』なーんて言われててさあ♪」
すると、ベックが一拍置いて、大声で言った。
「イーサン!
チャーリーがオフィスをハロウィンで飾りたいってさ!」
イーサンがスッと現れ、厳しい声で言う。
「……ハーパー……。俺のオフィスへ」
チャールズが一瞬で固まる。
(……え!?
何で何で何で!?
何ならゴールドマン・サックスだって、オフィスに飾り付けしてますよ!?
どうして呼び出し……!?)
イーサンはまたもや、チャールズと二人きりになると、ドアに鍵を掛け、全てのブラインドを下ろし、自分は立ったまま告げた。
「なぜ、オフィスをハロウィン仕様にしたいのか。
まずは結論。
次に根拠を3つ。
最後に例外があれば添えて答えろ」
チャールズは心の中で叫ぶ。
(ハロウィンだったから、飾り付けしたい!
それだけです!!)
チャールズは忘れていたのだ。
S.A.G.E.のテクニカルアナリスト部門には、外部の人間は容易く入れないが、オラクルのオフィスには、それこそ様々な権限を持つ人間が出入りすることを――
オラクルのハロウィンは難しい。
〜fin〜
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