【3】「お前、どんだけイーサンが好きなんだよ!!」〜違います。恐怖のジャック・オー・ランタンです〜
それからチャールズは頑張った。
仕事の合間を縫って、時には残業し、カボチャに向き合っていた。
もちろんイーサンにも、逐一報告は欠かさずに。
そして、カボチャの中身をくり抜き終えたチャールズは、尋問室でヴィヴィアンに感謝する。
(ヴィヴィアン……!!
スプラッター映画の主人公みたいになったけど、君の判断は正しかったよ!!
ありがとう!!)
そう、あの真っ黒な皮のエプロンもヘルメットも作業用手袋もゴーグルも、チャールズを巨大カボチャから守ってくれたのだ。
チャールズは、電動ノコギリは使ったことがないし、怖すぎるので使わなかったが、巨大な肉切り包丁はなんだかんだ言って役に立ってくれた。
だが、くり抜き終わったカボチャを見て、チャールズは達成感を感じるよりも先に、閃いた。
(俺は情報の海を泳ぐマーメイド!!
みんなを恐怖のどん底に落とすカボチャの顔面を作れるじゃん!!
台紙を作るくらいチョー余裕☆
よーし……!!)
そうして、チャールズは、全米ハロウィン大会のカボチャを『一目で怖い顔をしたカボチャ』に絞って検索しまくり、ベックとヴィヴィアンと自分のカボチャにピッタリの台紙をPCを駆使して作り上げた。
それからの作業の楽しいこと!
確かに、カボチャが大き過ぎて、作業は困難だった。
だが、あのベックとヴィヴィアンとカリスタの三人が、「……怖っ……!」と恐怖に震える日を想像するだけで、どんな困難な作業もチャールズは乗り越えられた。
(フフフ……!待ってろよ!!みんな……!
この俺が人類側の底力を見せてやる……!!)
そうして、カボチャがイーサン・クロフォード専用尋問室に運び入れられてから10日後――
カボチャ――いや、ジャック・オー・ランタンは仕上がったのだった。
しかし、仕上がったと言うのに、オラクルのメンバーは出張中。
チャールズも自分のオフィスでオラクルの一員として、激務に追われていた。
だが、事件はなんと3日で解決。
そこで、チャールズはカリスタとベックとヴィヴィアンに一斉メールを送った。
「ジャック・オー・ランタンは完成済みだよ〜!」
即座に三人から返信が来る。
ベックは「流石は"超有能様"だな!夕方には戻るから絶対見に行く!!」
カリスタも「素晴らしいサプライズをありがとう。本部に戻ったら是非見せてね!」
ヴィヴィアンは「疲れが吹っ飛んだわ!ありがとうチャーリー!今夜はみんなでお祝いしない!?」
そして、イーサンにも「カボチャは完成です!」と報告したが、答えは「ご苦労」の一言。
それでもチャールズは嬉しかった。
(チーフは通常運転!
でもそんなの関係なーい!
さあ〜みんなを驚かせるぞー!!)
そうして、みんなが戻ってくるのを、今か今かと待っていた。
そして、夜7時。
イーサン・クロフォード専用尋問室の前に集まったチャールズ、そしてカリスタとベックとヴィヴィアンの四人。
チャールズが勢い良く言った。
「これがオラクルのジャック・オー・ランタンだ〜!」
そして、扉を開け、照明のスイッチを入れるチャールズ。
尋問室の灯りに照らされる3個並んだカボチャを見て、まずベックが口を開いた。
「すげーじゃねぇか……!!」
その声は掠れ、感嘆に満ちている。
ヴィヴィアンもしみじみと言った。
「チャーリーって色んな才能があるのね……!」
そして、チャールズが「でさあ!この中のランプを入れる件なんだけど〜!」とウキウキで話そうとした瞬間――
「チーフにそっくりだわ……!素敵!」
カリスタの感動に震える声がした。
ベックとヴィヴィアンが、ダッシュでカボチャの前に行く。
二人はじっくりとカボチャを見ると、深く頷いた。
「チャーリー!お前、どんだけイーサンが好きなんだよ!!」
そうベックが爆笑すれば、ヴィヴィアンもキラキラと音がしそうな笑顔で言う。
「これは……チーフも感動するわよ……!
あの冷静沈着なチーフだって、飛び上がって喜ぶかも……!!
録画機材用意しなきゃ!」
チャールズが心の中で悲鳴を上げる。
(ギャーーー!!
止めて止めて止めて!!
まず!!まずね!!チーフに似てません!!
それに、俺は全米が恐怖するジャック・オー・ランタンの顔を忠実に再現したの!!
そしたらチーフに似てるって……チーフに見せられないだろ!!)
すると、そんなチャールズにカリスタが美しく微笑む。
「私からチーフに報告しておくわ」
チャールズはカリスタの声に被さるように叫んだ。
「じ、実はっ……!!
これで完成じゃないんだよね!!
ままままだやることがあるんだよ!!
ダブルサプラーイズ!!」
「凄いな……!これで完成じゃないのか!?」とベックは薄いブルーの瞳を丸くし――
ヴィヴィアンは元FBI丸出しの表情でニヤリと笑い、「そう来たか……!凄いわね!チャーリー!二段階認証ね!」と低く呟き――
カリスタは瞳を潤ませて言った。
「頑張って!チャーリー!」
チャールズは――
遠い目をして、並んだカボチャを見ていた。
そして、気づく。
(あ……チーフにも完成って言っちゃったよ……!!)
チャールズは震える手で、スマホをフリックする。
『修正箇所を見つけたので、まだ完成には至りませんでした』
イーサンからの返信は――
『成る程。進捗状況の報告を』だけ。
オラクルのジャック・オー・ランタンはまだ未完成。
〜fin〜
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