最高の果実
これから勉強で忙しくなるので投稿が遅れるかもしれません。でも投稿は絶対しつづけるのでこれからもよろしくお願いいたします!
それから全員が無事、フローラ様のピンクのバラの山に頭から突っ込んで花畑に到着した。
宮殿の前で別れたアルスも合流して、また白い道の上を歩き出す。
花の中で日向ぼっこをしている妖精、種が入った壺のようなものを運んでいる妖精、背中の羽で飛びながら鬼ごっこをしている妖精とみな思い思いに過ごしている。
フローラ様が飛んでいると大きいのから小さいのまで様々な花の妖精が声をかけてきた。
「フローラ様!」
「フローラ様ごきげんよう!」
花の妖精の大きさはリリーサイズだけではなくて、スマホの画面ほどの大きさだったり俺の身長の半分くらいだったりと様々だった。フローラ様は俺どころかカナメよりも身長が高いからどの花の妖精よりも大きいけど…。
「フローラ様は何の花の妖精なんだ?」
「フローラ様はカサブランカという花の妖精だ。花の妖精の長は決まった花、というわけではなくて先代が亡くなってから一番妖力の強い妖精が選ばれる」
「え?妖精って死ぬのか?」
「死ぬぞ。寿命で死ぬこともあるし人間の世界のものに殺されることもある。だが、命が失われても妖精の意志で何かしらの形で生き返ることは可能らしい。詳しくはよく知らないが」
「……へえ」
何かしらの形ってなんだろう。輪廻転生とか?まあ、ルーナがよく知らないことを俺が考えたところで何かがわかるわけでもないけど。
「花畑は今日も安泰のようね」
フローラ様がにこにこして言った。
「なーんかお腹空いたなあ」
ミオがお腹をさする。そうだ。その言葉で思い出した。俺はルーナにずっと聞きたかったことがあったんだ。
「アースの生き物たちはみんな何を食べているんだ?弱肉強食じゃないんだろ?」
「ああ。弱肉強食は争いのもとになるからな。でもなにも食べないというわけではない」
ルーナはそう言うとフローラ様に話しかけた。
「フローラ様、アースの実のもとに連れていっていただけませんか」
「私も今から行く予定だったの。でも結構遠いから、行き方を工夫しないとね」
「アースの実?」
初めて聞く単語に首を傾げる。
「そうだ。これからアースの実の森に向かう」
「本来なら風乗りで行くのが速いんだけれど、ここは私の妖力で…」
そう言うとフローラ様は両手をくるくると回しはじめた。今度は何が起こるんだ?
宮殿のバラの花から太くて大きな緑色の茎が生えてきた。いや、茎というかもはや「ジャックと豆の木」の豆の木にしか見えないくらいの太さなんだけど……。
周りの生き物たちも何事かと宮殿の上を眺めている。太い茎はゆっくりとこちらに向かってきて、俺たちの足元に降りてきた。
「ここに座って」
「は、はい…」
フローラ様、カナメ、ルーナ、あきと、ジャック、ミオ、俺、アルスと茎の先端部分にまたがるようにして座った。てかこれさっきのジャックのより全然危なそうなんだけど…。
アルスなんて茎の上で四つ這いになってるし。
「行くわよー!」
フローラ様が手を鳴らすと一気に根本が膨らんで茎が動きだした。
先ほどの衝撃を思い出して思わず目を瞑る。が、さっきと違って体がめちゃくちゃ安定していた。よく見ると太い茎から派生した細い茎が胴体や足にしっかりとからまっている。
スピードは速いけれどジェットコースターのようで楽しい。
茎ジェットコースターの一番前にいるフローラ様に感謝の目を向けた。
「ひゃっほー!楽しい!」
ジャックの歓声が聞こえてくる。心の中でお前もこれを参考にしてくれ、と願った。
花畑の道をくねくねしながら飛んでゆく。ときおり高くなったり低くなったりして、そのたびにミオの腰の真ん中くらいまである髪が顔にかかったりもしたが、俺は笑っていた。
楽しいな。これ。
しばらく飛んでいると、やっと花畑が終わる。普通の森が下に見えてきた。あれ、細い茎が解けていくな。
「え!?わあああああああ!?」
その瞬間、乗っていた太い茎に思いっきり宙に放り投げられた。一緒に空中に投げられたあきとと一瞬目が合う。当然のことだがそのまま下の森に落ちていった。
ボフ!!!
……フローラ様と言い一回転するスワーリンと言いアースの皆さんは危ないプレイがお好きなのだろうか。
またもやピンクのバラの花びらの山に頭から埋まりながら俺はぼうっとそんなことを考えた。今日一日で世界で一番危険な遊園地の乗り物を制覇した気分だ。
「陽杜くん、大丈夫?」
「楽しかったー!」
「ルーナ、怪我はないか?」
「ああ。平気だ」
俺はやっとのことで花の山からはいだした。するとフローラ様が花びらを花畑の方向に飛ばす。あっという間に山が散って、なくなってしまった。
「その花びら、どうなるんですか?」
「ああこれ?これは花の妖精たちの服になるのよ。みんな喜ぶわ。」
へえー。そんな再利用方法があったとは。
「ここがアースの実が生っている森だ」
ルーナがアルスを撫でながら言った。
濃い緑に少し青みがかっているこの森の中からは、シンシンシンシンと音が聞こえる。なんだろう、今まで聞いたことのない感じの音だ。
「太陽が照ってるはずなのに暗いな」
「ここは月の妖精らの住処に近い所にあるんだ」
「ああ、お腹すいたわ。アースの実を探しましょう」
フローラ様が言う。一同ぞろぞろと森の中を歩き始めた。
それにしても気持ちの良い森だ。風が吹いて、木が一斉にざわざわと騒いでいる。おばあちゃんの家の窓を開けた時と少し似ている感じがする。それになんだか、暖かくて居心地が良い。
「ん?なんだこれ」
突然、あきとが掌を眺め始めた。
「どうしたの?」
「上から白い粒子みたいなのが降ってきている」
「ええ?」
俺は空中をぐっと目を凝らして見てみた。ほんとだ、小さな小さなたくさんの粒子が上から舞い降りてきている。一粒一粒がほんのり光を纏っているようだ。
「よく気づいたな。それは太陽の粒子だ。アースの実を育てるのに必要なもので、アーテン様や太陽の妖精が降らせているんだ」
前を行くルーナが説明してくれた。
「あ、あったわ!」
嬉しそうな声をあげたフローラ様がある一点を指す。すぐそばにあった木にオレンジ色の実がなっていた。
「これがアースの実なの?」
「そうよ!」
フローラ様は翅をふわりと舞い上がらせてそのオレンジ色の実をもいだ。拳骨一つ分ほどの大きさだ。つやがあって、粒子と同じように淡く光っている。フローラ様はその実を一気に口に入れた。もぐもぐと口を動かす。
「んー!美味しいわ!」
頬を押さえて極上の笑顔を浮かべる。へえ、そんなに美味いのか。一体どんな味なんだろう。
「アースの実はそこら中にある。すぐ見つけられるはずだ」
早く食べてみたいな。わくわくしながら実を探す。と言ってもここは木ばっかりだから木に生っているものを探すのが一番早いかもな。
「ああ、あった」
その木には実がたくさん生っていた。一番低い位置にあるのを手に取る。
その実はとても暖かかった。なんともいえない良い匂いがする。なんだろう、懐かしいな。
大きく頬張ってみた。
口に入れた瞬間、果実がとろける。歯を差し込むと果汁があふれ出てきた。最初は甘い、と感じたけど食べているうちに塩味や旨味も感じてどんな味なのかよくわからなくなってきた。でもこれだけは絶対に言える。
「おいしい……!」
その実はもう泣きたいくらいに美味しかった。ひょっとすると今まで食べた料理の中で一番美味しいかもしれない。みんなも実を見つけたようで口をもぐもぐさせている。飲み込むとなんともいえない満足感がこみあげてきた。
「ルーナ、このすばらしく美味しい実は誰が作ったんだ」
「アースの実のことは私もよく知らないんだ。この世界を最初につくった妖精が争いをうまないために作った最高の果実、ということだけはわかっている」
「まあ確かにこれがあったら他の食べ物はいらないかもな」
カナメもミオもあきとも感動している。俺だって感動している。
「でもこれ一つでお腹いっぱい。結構小さかったのに」
「実の数を争いだす生き物がいたら困るからな。この実は一日三つで十分なんだ」
確かに。人間たちはいつだってなにかを争うから戦いとかがおこるんだよな。ここの生き物たちは全てを分け合って生活しているんだろう。
「さて、これからどうする?」
「多分今はお昼の十二時半くらいかなあ。私がお腹すくのいつもそんくらいなんだよねえ」
ミオが笑いながら言った。
「じゃあまだ時間あるな」
「私はこれから小人の森に行くつもりだったわ。一緒に行かない?ここからも近いし」
フローラ様が言う。小人の森……面白そうだな。
「小人ー?見たい見たい!」
「楽しそうだな」
「よし、決まりね」
ルーナがアルスにまたがった。
「あと一人乗れるが誰か一緒に乗るか?」
「じゃあ俺乗る」
あきとが手を挙げた。アルスを見て心なしか目がキラキラしているように感じる。こいつ、狼好きなのかな。後で聞いてみるか。
「私は二人抱えて飛べるけど、三人はちょっと難しいわね」
「陽杜、ミオ、お前らはフローラ様に連れて行ってもらいな。俺はジャックと行くよ」
「うん!おいら頑張る!」
カナメがさっき酔っていたことを気遣ってくれたようだ。ほんとに中身もイケメンだなと再び感動した。男の俺でも好きになりそうだ。
というわけでルーナとあきとはアルスに乗って、俺とミオはフローラ様に抱えてもらって、カナメはジャックとともにさっきのつるの妖力で小人の森に向かうことになった。




