001.新種か否か、難しい『コミック1巻発売記念SS』
1巻発売記念です_( _*´ ꒳ `*)_ぜひ予約してください!!
「ルシファー様っ!」
アスタロトの声が響き渡る。魔王城の日常はいつもながら騒がしかった。中庭で、幼いリリスと虫探しをしていたルシファーが首を傾げる。
「パパ、アシュタ……おこてる?」
まだ小さな「っ」が苦手なリリスが、不思議そうに尋ねる。黒髪がさらりと揺れた。保育園から帰ってきたばかり、今日は何も予定はなかったはずだ。
「そうだな、なんだろうな……アスタロト! こっちだ」
手を振って居場所を知らせると同時に、声に魔力を乗せた。受け取ったアスタロトが飛んでくる。背に羽を出していないので、緊急事態ではなさそうだな。立ち上がったルシファーは、当然のようにリリスを抱き上げた。
右手にミミズ、左手にコオロギを掴んだリリスは興奮状態だ。間違って潰さないよう、きちんと言い聞かせた。
「リリス、そっとだぞ」
「うん!」
頷いた瞬間、ミミズが……その……いや! まだ生きてる!! 昇天しかけたミミズに治癒魔法をかけて、ほっと胸をなでおろす。
保育園で虫の役割を学んだらしく、リリスは虫に興味津々だった。魔の森で生きる虫なので、まずサイズが大きい。その上、毒を持つ種類も多かった。危険なので一緒に庭へ出たのだが、先日叱られたから仕事は片付けた。
「ルシファー様、ご報告申し上げます! 先ほど、新しい種族が発見されたのですが……」
「新種か?」
意思疎通が可能で、魔力を持っていること。繁殖できる個体であることが新種の条件だ。魔の森は気まぐれに新しい仲間を増やすため、ときどき発見されては魔王城へ報告が上がる。
なるほど、署名に手を抜いたのがバレたかと思った。こっそり胸を撫で下ろすルシファーの腕の中、リリスは握ったミミズを空へ投げる。アスタロトがひょいっと摘まんで、そっと地面に逃がした。凄い勢いで穴を掘って潜っていく。ミミズというよりモグラに近い。
「リリス嬢、生き物を乱暴に扱ってはいけませんよ」
「あい!」
アスタロトに素直に頷くリリスは、丁寧な手つきでコオロギをアスタロトに渡した。受け取ったアスタロトが、また地面に逃がす。手のひらほどのコオロギは、びょんと数メートル飛んで姿を消した。
「リリス、一緒に新しいお友達を見に行くか?」
頷くリリスとともに城門へ向かった。ここまで連れてきたと言われたが、どこにいるのか……いるのはベルゼビュートだけだ。
「あっ! ルシファー様、こちらですわ」
ルシファーが抱くリリス同様、ベルゼビュートが抱いていた。小柄な種族かと覗き込めば、小さな獣がいた。あれだ、ケットシーに似ている。
「ケットシーの一種かな?」
「それが……ニャーしか言わないのよ。それも四つ足! 二本足で歩けないなんて」
困ったわと言いながら、ピンクの巻き毛をくるくると指先で弄る。豊満な胸に乗った獣は、ニャーと鳴いた。見る限り、魔力はある。ただ微量なので魔獣かもしれない。
「ケットシーには相談したのか?」
「ええ、話はできるそうです」
魔力はあって話が通じる。あとは個体数か。繁殖するなら雌雄一体ずつ以上必要だが……。
「そういや、その子は性別どっちだ?」
「両方です」
「……ん?」
両方と聞こえたぞ?? 顔に書いて首を傾げたルシファーへ、ベルゼビュートは区切りながら「りょ、う、ほ、う! ですわ」と繰り返した。
「パパ、リリスも!」
撫でたい、と主張する。ベルゼビュートが差し出すと、左手を伸ばした。右手はルシファーの髪を掴んでいるので、そのままだ。撫でると目を丸くして「やーらかい」と喜んだ。
「両性具有なら……一応魔族の規定を満たしたことになるかも」
うーんと唸るルシファーの向かいで、ベルゼビュートが「そうですわね」と頷いた。
***続く***




