第6話 語りかける声
和樹が元の世界に帰って一週間。
ラキナは少しずつ和樹との生活に慣れてきたようだ。
朝一緒に起きて朝ごはんを食べ、昼は公園や街にお出かけ。たまに店で食事をし、その後家に帰り風呂に入る。
風呂に入った後は晩御飯を食べ、一緒に寝る。
二人はそんな奇妙な関係と生活を続けていた。
(あれからもう1週間か……)
この世界に帰ってきてから状況は何も変わっていない。
夢の中で神様に会うこともなくなったし、カードも新しいカードが使えないどころか、アーリーやランチェルなど既存のカードも使えないままの状態だ。
(まぁ元の世界では魔法が使えないし、そりゃそうか)
「かずきどうしたの?」
「ん? 何もないけどなんでだ?」
「うーん、かずきちょっとなやんでるようにみえたから」
状況は変わってないが生活に変化はあった。
最初は和樹を警戒していたラキナだったが今はもう打ち解けており、和樹の細かい表情なんかもこうして汲み取ることがある。
(結構周りを見てるよなこの子)
「なやんでたららきながこうしてあげる」
そう言い、ラキナは胡座をかいて座っている和樹に正面から飛びつく。
甘えるようになったのも変化のひとつだ。
(両親や兄弟に甘えられなくて寂しいんだな)
「ありがとな〜ラキナ」
優しい声でラキナの頭を撫でる和樹。これは決して犯罪的な何かではなく親代わりとしての行動だ。周りから見ると怪しいが和樹自身はそう思っている。
(可愛いなぁ……髪も綺麗な銀色でサラサラだし、肌も……はっ!)
違う違う、と首を横に振る和樹。
そんな二人の奇妙な生活に少し変化が訪れる。
あれから数日後。ラキナが風邪をひいた。
「けほっ、けほ……」
「んー、こりゃあ風邪だなぁ」
体温計の数値を見て和樹 は苦笑する。
37.6度、熱はそこまで高くはないが普通に風邪だ。
(ちょっと外に連れ回し過ぎたか……?)
和樹自身、普段からあまり出歩くこと(機会)がなかったためラキナと出かけるようになってからの外出が思った以上に楽しく、ほぼ毎日外に出歩いていた。
「ごめんな、ラキナ」
彼女の頭の下に氷枕を敷いた後、額に熱さまシートを貼る。
そして水が入ったペットボトルをラキナの口元に近づけて飲ませる。
すると水を飲み終えたラキナは首を横に振る。
「ううんだいじょうぶ。かずきとおそとにでるのいつもたのしいよ」
そう言い微笑むラキナ。
(可愛いなぁ……)
思わずニヤける和樹だった。
最初に彼女と出会った時の和樹であれば間違いなくここまでやっていないだろう。
ようするに和樹は姪っ子のような感じでラキナにデレていた。
しばらくしてラキナは眠りについた。あれから熱も上がることなく、今は37.2度まで下がっている。
「……にしてももう一週間経ったのか」
和樹にとっては二、三日くらいの感覚だった。
「っ……」
和樹は笑みを浮かべた。最初はめんどくさいと思っていたのに今はラキナとの生活を楽しんでいることに気づいたからだ。
とはいえ、このままにしておく訳にもいかない。いずれ姉や妹達家族が帰ってくる。それに、ラキナにも家族がいる。早く元いた世界に帰さなければならない。
「とはいえ元の世界の戻り方とか分かんねぇんだよな……」
唯一あの世界から持ち帰ったカードで色々と試そうとしたが何も起きない。夢の中で神様にも会えない。元の世界に行く方法はなく完全に手詰まりの状態だ。
「……俺もそろそろ寝るか」
いつの間にか時刻は0時を過ぎていた。ラキナの隣に敷いている布団に寝転がり、そのまま眠りについた。
この時、元の世界に帰ってきて以来何も無かった変化が起きた。
……たの
(ん? 今のはなんだ?)
誰かが脳内に語りかけてくるような声が聞こえた。
……たの……はまだ終わらない
(終わらない?)
たは再び戻ります……
(っ、それはどういう意味だ?)
どこに戻るのだろうか? まさか元の世界? いや、そんなことはない。俺は帰ってきた。それにあの一件があった以上、スティヴィア様がさせないはずだ。
きっと何かへんな夢でも見ているのだろう。和樹はそう思った。
……全ては、あの人のために……
変な言葉が脳内に聞こえるが、それは夢だきっと。
その後、あの声が脳内に聞こえることはなく俺は眠りについた。




