第65話 クインテット騎兵vs配下
「炎槍!」
「氷槍!」
炎の槍と氷の槍が互いにぶつかり合いい、爆発する。
赤髪の男が火属性系統の魔法を放ち、イルネが水属性系統の魔法を放つ。
属性の相性としてはイルネが上だが相手が何か手の内を隠していると考え、攻めきれずにいた。
「雷撃!」
金髪の男が持つ金槌から放たれる太い雷線。
バチバチッと音を立ててテルンに襲いかかる。
だが、テルンは避けようとせず目の前に青く細長い槍を構え、呪文を唱える。
「ジャストガード!」
途端、青いシールドが円の形で展開され雷線を防ぐ。
ジャストガード。敵の攻撃が自身に触れる直前に目の前に武器を構え、ジャストガードと唱えると発動する槍専用の技。
一見、便利な技に見えるがこれが相当難しい。タイミング良くガードをしなければ発動しないため相当な練習が必要である。また、失敗すれば自身は実質丸裸であるというリスクも背負う。
「ふむ。ならばこれならどうだ?」
そう言うと金髪の男は金槌の持ち手を地面に突き刺す。
「我の必殺技、受けてみよ!」
金髪の男の声と共に金槌から衝撃波が全体に放たれる。
「ジャストガード!」
テルンは槍を構え、再びシールドを展開させる。
そして衝撃波を防いだ。1度目は。
「なっ!? ぐあっ!」
「馬鹿め、衝撃波は1回だけではないぞ」
テルンがシールドで1度目の衝撃波を防いだあとも次々と衝撃波が全体に放たれ、テルンの身体は後次々とくる衝撃波に当たり、後ろへ吹っ飛ばされた。
「くっ……なんだ? 動きにくいぞ……」
「あぁ、それは我が先程の衝撃波に麻痺の効果を付与していたからだ。貴様はしばらくの間動きが制限される」
「なん、だと……」
麻痺して動きにくくなりつつもなんとか起き上がろうとするテルンに金髪の男は歩み寄り、頬にボディブローを入れた。
「がっ……」
完璧なボディブローを入れられたテルンは先程より更に後ろへ飛ばされ、壁に激突した。
「最近腕が訛っててな。ここからは肉弾戦でいかせてもらうぞ!」
「テルン!」
「よそ見すんじゃねぇよ!」
「っ!?」
イルネに炎が襲いかかる。しかしイルネは咄嗟に真後ろに飛び下がり、炎を避ける。
「へぇ。いい反射神経してるじゃねぇか。踊り狂え、炎の手!」
赤髪の右手が突如巨大化して燃え盛る。
「くらえええええ!」
「リフレクション!」
赤髪の巨大な右手を障壁で受け止めるイルネ。
「はん、また使いやがったな! その時を待ってたぜ! 粉砕の波動!」
「なっ!?」
そう言い、赤髪は左手を障壁に添える。それと同時にバリーン! という音を立てて障壁が粉々に割れる。
「きゃああああ!」
ドッゴオオオーーーーン!
イルネの胴体に赤く燃え盛る巨大な右手がめり込んだ。それと同時にイルネの鎧にヒビが入る。
ごろごろと遠くへ吹っ飛ばされるイルネ。
「ぐっ……かはっ!」
口から血を吐き出す。どこかの器官が傷ついたようだ。
「もうおしまいか? 意外と呆気ないな」
イルネに近づく赤髪の男。
「じゃあな。ランセットにボコられてるやつも後を追うから安心しな」
赤髪の男は手のひらから炎の槍を生成し、左手に持つ。
「まだ……」
「あん?」
「終わってないわよ」
地面に倒れ伏したままにやりと笑みを浮かべるイルネ。
「あっ? その身体で今更何を……ぐおっ……! てめぇ……何をした!」
胸を抑え、相手を睨みつける赤髪の男。
いつの間にか赤髪の男の身体は傷だらけになっていた。それは目にも止まらぬ速さだった。
その目の前にはいつの間にか立ち上がり、2つの剣を持つイルネ。
その瞳には紫色の光が宿り、鎧も桃色から紫色へと変化していた。
それはイルネのもう1人の存在、ネルイだった。
「ふふふ。勝負はこれからよ?」
一気に間合いを詰めるネルイ。
両手に持つ刃が赤髪の男の喉元を狙う。
「ちっ! 炎壁!」
赤髪の男は咄嗟に障壁を展開させる。
だがーー、
「無駄よ? 壁破壊」
そう言い無慈悲に砕かれる赤く燃え盛る炎の障壁。
「なっ……なぜがっ……」
赤髪の男は喉元を貫かれ、それ以上言葉を発することは無かった。
身体を支える力を失い、地面に倒れ伏す赤髪の男にネルイは呟く。
「ふふっ、甘いわね。対人戦で障壁を貼ればなんでも防げると思ったら大間違いよ。特にあたしのような防御系の効果を潰す奴にはね」
男は悔しそうな表情をしていたが、やがて息絶え、動かなくなる。
赤髪の男が死んだのを確認したネルイは別の方向を見る。
そしてその方向へ一気に向かう。
「これで終わりだ。青い鎧よ」
「ぐう……」
金髪の男が金槌をテルンに振り下ろす。だが、金髪の男は金槌を手放し、後ろへ飛び下がる。
「む? 貴様は……まさかウィルムのやつ、負けたのか?」
「あら? あたしのことよく分かったわね」
「姿も様子も異なるがつい先程ウィルムの気配が消えた。そしてその後すぐに我の方に貴様は現れた。状況的に貴様かあるいは新手しかいない」
「そう? まぁ当たりなんだけど……っ!」
ガキンッ! ネルイが金髪の男に不意打ちで首目がけて剣を振るが短剣に防がれる。
「……不意打ちとはまた卑怯だな。むんっ!」
力を入れ、ネルイの剣を弾く金髪の男。
更に後ろに飛び下がり、ネルイと距離をとる。そしてその位置から短剣を2つ投げつける。
だが、2つとも地面に叩き落とされる。
「っ! はあっ! 甘いわね!」
一気に間合いを詰め、金髪の男に剣を振り下ろす。
「身体強化攻!」
金髪の男は口で唱え、右手で剣を受け止めた。
バキン! 次の瞬間金髪の男は受け止めた右手に力を込め、ネルイの剣を粉砕した。
「ちっ!」
「雷の波動!」
更に左手から至近距離で雷を纏った拳を振るう。
ネルイは咄嗟に左手に持つ剣の腹を向けて前に投げ、雷線を防いだ。その隙に後ろへ下がる。
もう1つの剣が粉々に砕け、地面に散らばる。
「ちっ……っ!?」
「我は肉弾戦の方が得意だぞ?」
今度は金髪の男がネルイとの間合いを詰める。
金髪の男は勢いのまま右手の拳をネルイへ振るう。
咄嗟に腕を前にクロスするネルイ。
だが、防ぎきれず後ろへ吹っ飛ばされる。
「くっ……パワーじゃ勝てなさそうね」
そう言い、両手と腕の鎧を脱ぎ捨てるネルイ。真っ白い肌……ではなく、桃色の線……まるで霊のような手と腕が現れる。
「……我の麻痺付与に気づいていたか。それにしても貴様、その見た目、人間ではないな?」
「そうよ? だから何って感じだけどね」
「くく、面白い……」
金髪の男の反応に眉をひそめるネルイ。
「隙を与えるつもりは無いわよ?」
ネルイが金髪の男の元へ一気に走り出す。
「ゲート」
金髪の男は端的に言う。次の瞬間、黒いゲートが男の前に出現した。男はネルイが来る前にゲートを背に飛び込む。
そして不敵な笑みを浮かべる。
「くく……力ある鎧騎士よ、我と更に戦いたければこちらに来るが良い」
そう言い残し、男は黒い穴へと姿を消した。
辺りに静けさが訪れる。
今この場にいるのはネルイとテルンの2人だけだ。
「……」
「っ! 待て! ネルイ!」
当然のようにゲートへと歩み寄るネルイ。テルンが待ったと声をかける。
ネルイはテルンの声に立ち止まることは無くーー、
「ふふっ。嫌よ、これからもっと強いやつと戦えるのにそれはないわ」
「ダメだ! きっと奴の罠ーー」
テルンの言葉は最後までネルイの耳には届かず、彼女は暗い闇へと消えていった。
「っ……くそ!」
麻痺の効果が消えて動けるようになったテルンは槍を持ち、ネルイの後を追うため、黒いゲートへ入っていった。
一方、ナインドのとある部屋ではーー、
「……っ! はあぁっ!」
ツィーは一気に手足を生やした魔物の前まで近づき、大剣を振り下ろす。
それを見たバルサが笑い声をあげる。
「馬鹿め! そんな小さな剣で斬れるわけが無いだろう! シャークロア! そいつを食ってしまえ!」
シャークロアは口を大きく開け、迫るツィーを待ち構えた。
その時、
「武器変化。ギガンティックソード」
すると、ツィーの持つ大剣が持ち手以外巨大化する。
「へ……?」
「いぃぃやあぁっ!」
巨大化した大剣はその重みによって振り下ろす力が更に上昇する。
そして大口を開けて待機するシャークロアを一刀両断した。
大量に詰まった部品が露見する。
「ガ……?」
シャークロアは自分が何をされたのか分からず、ただ喉を鳴らし、その場に倒れた。
「なっ……!? 何いぃぃぃ!? そんな……ワシの……ぐほっ!?」
バルサの腹部に拳がめり込む。
「あーダメだよ、よそ見しちゃ。これ戦闘の基本」
「ぐっ……」
腹部の激痛にその場でうずくまるバルサ。トルメはニコリと笑い、
「大いなる風よ……暴風」
バルサを勢いよく、ぶっ飛ばした。その衝撃でバルサはこの部屋の奥まで吹っ飛ばされ、壁に激突した。
「……あっちゃー」
トルメはしまったと声を上げる。
「……トルメ、やり過ぎ。気絶してる」
「うぅ、ごめん。加減まちがえた」
「やってしまったことは仕方ない。けど反省」
「はい。反省します。ところでこの後どうする? 隊長と合流する?」
「ん。でも待って」
そう言いツィーはシャークロアに近づく。
「えっ? 何するの?」
「んーとりあえずこいつ使えないか調べる。少しだけ待って」
ツィーに言われ、トルメはバルサを見張りつつ、待つことにした。




