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この世界は好きですか?  作者: ふう♪
第3章悲哀せし魔物の塔
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第20話 古き塔とクリアスライム



「なんだここは……」


 俺は今、目の前の光景に驚いていた。


 辺りは長い間手入れがされていないせいか、見渡す限り大量の雑草が生い茂り、木々も所狭しと並んでいる。

 水辺もあるが、黒く濁っており、とても飲めるといった状態ではない。


 そんな中、それらで囲まれた先に古く錆びた塔がそびえ立っていた。

 緑色の苔やモズクのようなものが所々にへばりついていることから随分と長い間使われていないようだ。無論、手入れも行き届いていないだろう。

 もはや廃墟だと俺は思った。


「ここで何をするつもりなんだ?」


 俺がそう言うとユーフィは待ってましたとばかりに答えた。


「それはもちろん、クエストよ!」


「……はい?」




 時は数時間前に遡る。


 翌朝、俺はユーフィに指定された場所で待ち合わせをしていた。


 待ち合わせ場所はミール街の中心にある噴水の近くだ。その近くでは子供達が鬼ごっこでもしているのか、走り回っている。


 と、その時、誰かが俺の肩をポンと叩いた。


「おはよう和樹」


「おはようユーフィ。今日は何するんだ? 明日になってからのお楽しみとか言ってたけど……っ!?」


 振り向くと、そこには2メートルくらいの身長はあるんじゃないかと思うくらいの大男が立っていた。白のタンクトップ姿に茶色い短パン。そのせいかムッキムキに鍛え上げた筋肉が露出している。


「お前さんが和樹だな?」

「え? あ、はい……」


 なんかヤバそうな人に絡まれたんだけど!?


 俺の思っていることを察したのか、大男は苦笑した。


「あぁそんなにビビらなくていい。俺はボブ・ライザップ。ユーフィの仲間だ。ボブでいいぞ」


 なんかどっかのCMで聞いたことのある名前だな……ってか今日は本当に何をするんだ?


「ふふん、来たわね」


 そう言い俺の前に待ち合わせ相手のユーフィが現れた。白色のコートに同じく白いスカートを履いており、白を基調としたスタイルだった。彼女自身の髪が赤色と濃い色なので色合いがいい。そしてその後ろには2人の少年少女がいた。俺と同じくらいの歳に見える。


「紹介するわね。この赤い髪の少しだらしない顔の子はアレス。んでこっちの金髪でショートカットの子はコレット」

「誰がだらしない顔だ!?」


 アレスと呼ばれた赤髪の少年が不服そうにユーフィに言う。鎧のようなものを着ており、オンラインゲームでいうパラディンという壁職をイメージさせる格好をしている。


 対してコレットと呼ばれた茶髪の少女はぺこりと俺に軽くお辞儀した。コートだったユーフィと違い、こちらは水色の魔道服姿だった。何やら杖のような物を持っているから多分魔職系だろうな。


「ボブはもう自己紹介した?」

「おう。もう終わったぜ」


「ならあとは和樹ね。この普通そうな顔の子は斉藤和樹。最近知り合ったの」

「普通で悪かったな……」


 アレスと呼ばれた少年の時よりはマシだが普通って言われてもなぁ……まぁ事実だが。


「とりあえずよろしくな! 和樹」


 そう言いボブが背中をバシバシと叩く。痛ぇ……でかい人ってなんでこんなにも加減を知らないんだ……


「えと、コレットと呼んでください。よろしくお願いします」


「あぁ、よろしく。俺のことは和樹と呼んでくれ」


 ボブ、コレットとの挨拶が終わると、赤い髪の少年がこっちに来た。


「アレスと呼んでくれ。まぁなんだ……お互い頑張ろうぜ」


 そう言い、ユーフィに見えないように彼女を指差す。


「……そうだな。あ、俺のことはコレットと同じように呼んでくれ」

「あぁ」


「さてと! 全員揃ったことだし、行くわよ!」


 え? どこに?




 というような流れで今俺たちはここにいる。


 古い塔の入り口に。


「ところでこんなところにまで来て何をするんだ?」

「こんな所にくるとかユーフィ、どんなクエストを受けたんだ?」


 俺とアレスの声が重なった。ん?


「え?」

「へ?」


 再び重なる。


「和樹、お前……ユーフィからクエストの詳細聞いてないのか?」


「そうだけど……まさかお前も?」

「あぁ。コレットは?」

「そういえば私も聞いてません……」


 3人の状況が判明し、揃ってユーフィの方を見る。


 すると彼女はーー、


「ごめん、ボブには言ってたんだけどあんた達には今日言うって言ったきり忘れてたっ」


 舌を少し出しててへっと笑うユーフィ。


「「はあああぁぁ!?」」


 そして再び俺とアレスの声が重なるのであった。




「……ったく、相変わらずどこか抜けてんなユーフィは。今日集まったのはな、この古びた塔の調査だ。なんでもこの塔は昔、人が住んでたんだが今はこの通り誰もいなくなってな。ギルド本部で近々解体する予定が決まったんだがその前に何か貴重な物はないか調べてきてほしいんだとよ」


「なるほどな」

「……そういうことだったんですね」

「もっと早く言ってくれよ……」


 そう言いため息をつくアレス。以前からユーフィの知り合いだったようでさぞかし苦労してきたんだろうな……


「んじゃっ、早速入ろう!」


 こうしてユーフィ、ボブ、コレット、アレス、俺の5人は塔の調査をするべく、中へと入った。


「暗いわね。誰か明かり出してくれない?」

「ちょっと待ってくれ。確か……」


 アレスが自分のカバンを下ろし、中を漁る。


 ん? 待てよ? 明かりでいいんだよな?


 んじゃ、あいつを出すか。


「ランチェルを召喚コール!」


「「「「っ!?」」」」

 突然出した俺の声に驚いたみんなが一斉にこちらを振り向く。


 途端、辺りに黄色い煙が蔓延し、その中から光が溢れ出す。

 そしてその中からランチェルが姿を現わす。


「チェルーーー!」


 アーリーに続く2枚目のカード、ランチェルだ。ランチェルが姿を現わした途端、真っ暗だった辺りが明るく照らされる。


「なにこれ可愛い!」

「チェルッ!?」


 するとユーフィはランチェルを見た途端、目を輝かせてランチェルに抱きついた。意外だな、可愛い物好きだったのか。


「……こりゃ驚いたぜ。まさか魔法陣を描かずにそんな紙切れから召喚するとはな」

「……私も思わずびっくりしました」


 そう言い、感嘆の声を漏らす2人とーー、


「俺のした行動は空回りか……」


 そう呟き、ため息をつくアレス。なんかすまん。




 ひとまず俺たちは効率を上げるため、二手に別れることにした。


 ユーフィの班にはランチェルとアレス。


 そしてボブの班にはコレットと俺だ。明かりはコレットが光属性魔法のライトで照らしている。はぁ……俺がやったら多分明かりにすらならないだろうな。


 ちなみに何故ランチェルがユーフィの方にいるのかというのはまぁ、察してやってくれ。


 塔の中は思っていたよりもずっと綺麗だった。茶色に塗られた壁は外の壁のように錆びることはなく、そのままの色を保っている。まだ1階だが、散らかっている様子もなく、綺麗に整理されている。


「長い間人が住んでいないのに随分と綺麗ですね」


「だな。誰かここに住み着いてんじゃないか?」

「うっ、怖いこと言わないでくださいよ……」


 ボブのからかいを間に受け、俺に身を寄せるコレット。うん、可愛い。ナイスだボブ。内心で礼を言っておいた。


 1階には特に貴重そうな物はなく、俺たちは2階へと足を踏み入れた。


 と、その時ーー、


「ひゃっ!?」


 コレットが突然足を滑らせ、尻餅をついた。


「大丈夫か? ……って、なんだこれは……」


 地面を見るとそこには透明な液体がうねうねと地面を這っていた。


「俺の記憶が間違っていなければ多分こいつはクリアスライムだ。害は特にない」


 ボブの説明にホッとする俺とコレット。


「立てるか?」

「は、はい……」


 コレットに手を差し伸べる。

 彼女が俺の手を掴み、立ち上がったその時、


「おっと、そういえば1つ忘れていたがクリアスライムは害はないが服を溶かすぞ」


 ……へ?


「え? ……っ!?」


ボブの言葉を聞いた俺は反射的にコレットの方を見た。


 確かに羽織っていた水色の魔道服と紺色のスカートが少し溶けていた。

 嫌な予感……


 コレットは青ざめた表情である部分に手を触れさせた。

 そしてみるみるうちに顔が赤くなっていきーー、


「いやあああぁぁっーーーーー!」


 俺の手をパッと離し、まるで発狂したかのように大声で叫び、2階の廊下を突っ切って行った。


「あれ? 俺何かまずいしたか?」

「あぁ、したな……ボブのせいではないけど」

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