083 本当に成功している選手は日々の努力を忘れない
チビの中で結論に至った物事が一つだけある。それは本当に成功している選手は凡人が多い事実だった。ほとんどの天才は道半ばで挫折し、球界から姿を消していく。そして一握りの努力家だけが本当の名誉と成功を手に入れているのだと気が付いたのだ。チビはどれだけ有名な選手の自伝を読んできたのか分からないが、ほとんのど選手はチビですら想像を絶する練習量を自身に与えていたそうだ。21世紀最高の5ツールプレイヤーと呼ばれるAKIRAでさえも、夜の22時には寝て朝の3時に起きる生活を現役引退するまで続けていたのだから、自分なんてまだまだだと思ってしまうのも無理はない。しかもAKIRAはスクランブルに対処するため、全てのポジションを守れるために日々準備していたのだから恐れ入る。チビに至っては遊撃手のポジションだけで息切れをしているのに、AKIRAは10のポジション全てを守れるように鍛練を欠かさなかったらしい。そして彼は左利きなので、右手でボールを投げ、左手でボールをキャッチする術さえも習得していたのだ。そこまでの技術を手に入れるのだから毎日朝の3時に起きるのも納得でである。
「ふう……やっと終わった!」
元々、体力の無いチビがトラックを15周したのだから、疲れて寝てしまいそうだった。今月は1月にも関わらず日差しが強くてお天気日和が多いのである。それはそれで厚着をしなくて済むので楽だったのだが、お日様の日差しは猫のチビにとってはあまりも天敵過ぎる。体がポカポカしてくると、とたんにチビは眠気が襲って、しまいには寝てしまう危険性もあるので眩しい日差しは大敵なのだ。と言っても日光は幸福を生み出す神経細胞のセロトニンを活発化させるので存在自体は悪くは無いのだが。
「お疲れ様。次は何の練習をするの?」
ミラベルは年上のお姉さんなのに、あまり疲れていないようだった。やはり1軍で試合経験のある人は違うなと、素直に尊敬するチビであった。
 




