◼️第三章:濃霧会議
扉を開けた辻浦。
目を細めて正面を見る
ベッド以外には何も無いコンクリートの部屋
気持ち程度の小窓からの光
天井の鉄製の配管にぶら下がり扉の方に背を向け懸垂をする男性
白のタンクトップとグレーの囚人が履くズボン
左右の肩にはナイフのような傷跡。
吐息と配管を握りしめる音だけが聞こえる。
沈黙を裂くように辻浦が左の内ポケットからタバコをだし徐に煙を燻らせる
外からの僅かな光とタバコの煙が混ざり部屋の中が靄がかかったような重苦しい雰囲気になる
タンクトップの男が手を離し床に降りて声を出す「Smoking is in a place with an ashtray」
辻浦がそれを無視するかのようにタバコをコンクリートの床に落とし下を向き足で踏み消しながら「8年間も巣穴に居て自国の言葉も分からなくなったか…」
「なぁ……元少年兵……いや…」
タバコを消し終わりゆっくり正面を向き呟く
「……FOX……」
FOX→「今更何の用ですか…昔話しでもしにきたんですか?」「それとも謝罪として保釈金で持ってきたんですか?」
辻浦→「相変わらずだな、頭の中も獣になったな…」
FOX→薄っすら微笑み「頭じゃなく動きを見たほうが良いですよ…」
直後、扉の向こう側で話を静かに聞いていた黒いスーツの辻浦の部下らしき女性が扉を開けFOXに銃を向ける
FOX→その女性の眼を見ながら「…その弾丸に後悔するなよ…」
女性捜査員の銃を持つ手が微かに震える
辻浦が女性捜査員の手を優しく下に下ろし「落ち着け…」「ただの口喧嘩だ」
雰囲気を変えるようにため息混じりで左のポケットからさっきのとは違うタバコを取り出しFOXに片手で差し出す。
辻浦→「話がある…お前はフィルターがあるのは嫌いだったよな…」
FOXはそれに火をつけ加えタバコでベッドの端に座る
辻浦→「…いいか…たった今から人生をやり直せるとしたらどうする…酒に酔って暴れて人を傷つけて捕まった…犯罪は犯罪だ…だが…8年前お前があいつから受けた傷…守れなかった命…これは避けれなかった真実…そしてお前とあの子の新しい人生があったことも真実……」
FOX→「何の話だ…終わったことだ…俺が彼女を傷つけた…それが真実だ…」
辻浦→「違う!終わっていない!お前が首からぶら下げてるドックタグがその証拠だ…今ならやり直せる……」
FOX→「何をやり直すんだ!もう何にも残ってない…」
辻浦→「聞け……奴は生きてる……狩を始めようとしてる…終わらせるんだ!そしてやり直すんだ!あの時とあの子の為に!…
wol……奴に挑めるのはお前しかいない…それと俺も眼を背けたい過去でもある…もう立ち止まらない……」
FOX→「生きていたのか……」
辻浦→「あぁ…」
FOX→「間違えないのか」
辻浦→「あぁ…間違えない…」
暫くの間の後FOXが立ち上がり歩き出す
辻浦→「どこに行く」
FOX→「…灰皿のある場所で……
それと……」
辻浦→「それと何だ…」
FOX→「…長い戦いになる…タバコ代奢ってもらいますよ……」
共に捜査員数名と黒のセダンで辻浦とFOXが拘置所を後にする…




