雄山羊の真実
1
雄山羊は突きまわしていた 柱の周囲にいた黒い子羊たちを
雄山羊は追い散らしていた 青草を食んでいる黒い子羊たちを
柱の周囲に有るものはすべて 自分のものであるかのように
柱の周囲に有るものは 誰にも渡そうとはしないかのように
すべての子羊たちを散らした時、雄山羊は柱がもたらしている安寧を味わっていた
本来ならば全ての者にもたらされていた安寧を 自分一人が独占するために
だからこそ、罰が当たったのだ 喪失の災厄による黒い嵐によって 得ていた 味わっていたものが奪われた
永遠に失われた 倒木の直撃によって砕かれ崩れた柱を 目の辺りにした時に
食んでいた青草は 枯草になった 生気を失った枯草へと変わり果てた
自分が独占していた安寧はもはや無い 虚しき空虚に覆われたのだからーー
2
鴉は思ってた 柱のレリーフと仮面の男のレリーフが同じであったことを
夜空を飛びながら思っていた 黒い柱と黒い仮面の共通点を
鴉はふと気付いた 自分も同じ黒色だったことに
鴉は思考していた 自分が何故白い雄山羊に災いを告げたかを
鴉は導かれていた そして、気付いた 自分は宣告の使者だったことに
そして、鴉は飛び去って行った 災厄の嵐が過ぎ去り、白い雄山羊に伝え終えた現在
自分が果たす役割は終わっていたのだからーー
3
時計は刻む 時間を ただ、静かに 黒い仮面の掌で
月面をモチーフに 数字が配列された懐中時計 それが今、仮面の男が握っている
月明かりに照らされながら 夜風を浴びながら 勝利を確信して 嘲笑っている
黒い雄羊のレリーフが刻まれた仮面が 持ち主の男に同調するかのように笑っている
白い雄山羊の敗北を確信したかのように 勝利の愉悦に酔い痴れているように
時期早い雪が降り始める 災厄の時を示すかのように 招獄の時を告げるかのようにーー




