表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結番外編期間限定追加)傷だらけの令嬢〜逃げ出したら、騎士様に溺愛されました〜  作者: 涙乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/61

23

あれから、三日月亭に帰るまでの記憶はあやふやだ。


衝撃的な話を聞いてパニックになりかけて、その後馬車の中で……。


随分と長い時間だった気がする。


思いだす度に、羞恥心から思わず叫びだしたくなる。



いったい、私はどうしてしまったの?

あろうことかグレッグ様の胸に顔をうずめて……。


座っていた場所は、グレッグ様の膝の上。


まるで、いわゆるお姫様だっこのような状態。


思わず「きゃぁー」と叫びながら一人身悶えしてしまう。


挙動不審になりつつも、なんとか平静を保とうとする。


けれど、精神的ショックからの疲労の色は隠せないでいた。



ルイーザさん達は、何かを察したのか、何も聞かずにそっとしてくれた。


私自身も、とても仕事に集中できる状態ではなかったので、無理を言ってしばらくの間休ませてもらうことにした。



グレッグ様とは、あの日以来会えていない。


時々、手紙のやり取りをしている。


今は、ノーマン伯の件から手が放せないので、しばらく会えないという。


そんなある日、クレア様よりお手紙が届いた。三日月亭のことは、グレッグ様より教わったそうだった。



「親愛なるソフィアへ

突然の手紙を許してちょうだい。

元気に過ごしているかしら?

先日は、ごめんなさいね。

こんなに簡単な謝罪の言葉では言い表せないほどに、申し訳なく思っています。

あなたにとっては、大変ショックな話だったわよね。

すべてが落ち着いたら、また会えることを願っているわ。


王家管轄の鑑定機関から、結果が届いたの。ロバートがいなくなってからも、部屋はそのままにしているの。軽く掃除はメイド達がしているけれどね。 


保管していたロバートの持ち物の中から、鑑定に使えそうな髪の毛も見つかったの。


結果は──ロバートが、ソフィアの父親である、と鑑定されたわ。


王家管轄の鑑定機関は、あの時見せたネックレスのように特殊な道具を使用しているのよ。だから、間違いなく、あなたは、ロバートの娘よ。


もちろん、家族にも打ち明けました。

あまりにも突然のことで、皆、驚いていたわ。


ただ……。ソフィアに関して、各々内密に調べたいと言って聞かないの。


ソフィア、つらい過去のことも知られてしまうと思う。


今まで、苦しんできたのに、あなたをさらに苦しめて、不快な思いをさせてしまうのではないかと危惧しているわ。


本当にごめんなさい。


何かあれば、遠慮なく訪ねて来てちょうだいね。


あなたの祖母 クレア より愛を込めて」



私は……、本当に……あの人の娘ではなかったんだ……。あんな人と、血の繋がりはない。 あんな人とは、関係のない。良かった……。私は、あの人達とは、家族なんかじゃないんだ。


お母さんが亡くなって、もう家族は、誰もいないと思っていた……。


でも、違う。


こうして、気にかけてくれる方がいる。


おばあさま……。自身を持って、そう呼んでもいいんだ……。おばあさま。呼び慣れないけれど、なんだか嬉しい。


もしかして、母方の祖父母もご健在なのだ

ろうか。 クレア様、ううん、おばあ様に、今度お尋ねしてみてみよう。


それから、しばらくの間は、自分自身と向き合い、気持ちの整理を試みて過ごしていた。






✳︎✳︎✳︎





━数週間後━





「ソフィア。今、ちょっといいかい?」


ルイーザさんの呼ばれて、階下に降りて行くと、そこにはグレッグ様が佇んでいた。



「グレッグ様!」


久しぶりに会えた嬉しさで思わず駆け寄る。


「ソフィア。例の件のことで来た。外へ出られるか?」


ノーマン伯爵の件で、何か進展があったのかしら。


張り詰めた表情をしているのを、ルイーザさんに悟られないように、誤魔化す。


グレッグ様に頷くと、ルイーザさんに努めて明るく話しかけ、出かけてきますと伝える。


はやる気持ちを抑えて、グレッグ様と共に外へと向かった。


三日月亭から外へ出ると、グレッグ様は真剣に話し出す。


「例の件、やっと処分が決まった。」


「 処分……?」


「あぁ、彼等には、己の罪の重さを思い知ってもらわなければ。今からノーマン邸に向かう。その前に、ソフィアに報告したくて来た。」



「あ、あの、グレッグ様。私も、連れて行ってはもらえませんか?」



正直な所、二度と会いたくはない。

それでも、どうしても、尋ねたいことがある。


「それは……」



グレッグ様は、悩んでいるようだった。


「どうしても、尋ねたいことがあるのです!」


必死な様子が伝わったのか、グレッグ様は渋々了承してくれる。



「少しだけ待ってもらえるか?

私は、別行動で行く旨を隊の皆に伝える必要がある。」


グレッグ様は、伝言を伝えに一旦本舎に戻られた。


しばらくそのまま待っていると、グレッグ様は、馬に乗って駆け戻って来た。


「ソフィア、隊員もすぐに向かうようだ。話す時間はあまりないかもしれない。急ぐぞ。馬に乗ったことはあるか?」



私は首を振る。グレッグ様は、私を抱え上げて馬に乗せてくれた。


「しっかりと捕まって」


「はい!」


後ろから、グレッグ様に抱きしめられるような体勢になっていた。


身体が密着して、グレッグ様の息遣いも感じられる。


恥ずかしさから心臓が飛び出しそうなくらいに早鐘をうつ。


だが、馬が走り出すと、何も考える余裕がなくなった。



グレッグ様が後ろから支えてくれているとはいえ、振り落とされないように必死にしがみついていた。


しばらくすると、ノーマン邸が視界に入ってきた。


「見えてきたな」


私は、もう二度と戻ることはないはずだった邸宅を見つめる。


あぁ……、またこの邸に来てしまった。


もう二度と来たくないと思っていた場所。


今までの記憶が甦ってきて、恐怖から小刻みに身体が震える。


「ソフィア。一緒にいるから大丈夫だ。それでも、無理してまで、行かなくてもいい。」


グレッグ様は、怯える私を優しく励ましてくれる。


「……ありがとうございます。大丈夫です。」


敷地内に入るとグレッグ様は馬を止めて、私を抱え下ろしてくれた。


グレッグ様の後を追うように、邸の中を一緒に走った。



「これは、騎士さま、なにごとですか?」


門番や使用人に何度も呼び止められたが、構うことなく強硬突破していく。


「王命だ!ノーマン伯はどこだ!」


私を庇いながら、突き進んで行く。


各部屋の扉を開けて、ノーマン伯を捜索した。



そしてついに、書斎にいるノーマン伯をみつけた。


「これはこれは、若造が何の用だ!

お前は……⁉︎ いなくなったと聞いていたが、ふんっ、戻ってきたのか。」


ノーマン伯は、グレッグ様を一瞥した後、私の存在に気づき目を細める。


「王命により、ノーマン伯、貴殿を拘束する!」


「なんだと?」


一切動じることなく、ノーマン伯は私達に向き合っていた。その瞳からは、何の感情も読み取れない。



こうして正面から向き合うのは、いつぶりだろうか。


それとも、初めてかもしれない。


まともに目を合わせることが、できなかったから。


こわい……。


ノーマン伯が一歩動くだけで、ビクッと全身が硬直する。金縛りにでもあったように。


幾度となくぶたれた記憶が蘇る。



恐怖から声がなかなかでてこない。


どもりながらも、どうしても尋ねたいことを口にする。


「あ、あの、お聞きしたいことがあって来ました。あなたは……あなたは、どうして私を引き取ったのですか?

わ、私の父親と言っていたのは、嘘なんですよね? おばあ様……、クレア・フォルスター様にお会いしました!そして、私のことを孫だと言ってくれました!」


ノーマン伯は、立ち位置を変えるようにゆっくりと移動する。


ドッドッドッと自分の鼓動がうるさくなる。 手を握りしめてらノーマン伯の返答を待つ。


「くそっ! ロバートの母親に会ったのか……。あのあいぼれめ、余計なことをふきこみよって! まぁ、でも、そうだな……、元々、隠し通せることではないからな。

どうしてか、知りたいか?はっ!理由か?

理由は、ただの復讐だよ。

あぁ、そうだ!お前の父親は、私ではない!」



「!」


意外なことに、ノーマン伯は、抵抗することなく真実を語り始めた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ