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(本編完結番外編期間限定追加)傷だらけの令嬢〜逃げ出したら、騎士様に溺愛されました〜  作者: 涙乃


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グレッグ様と共に三日月亭に戻ると、ルイーザさんが駆け寄ってくる。


「ソフィア、どうしたんだい⁉︎ 何があったんだい? おや、あんたは、確か……。

あっ、これは、これは、ハモンド家のグレッグ様ではないですか! こちらへ、どうぞお座り下さい。」


「突然すまないな。私のことよりも、ソフィアを休ませてあげてくれ。」


「私は、大丈夫です。グレッグ様、どうぞお掛けになってください。今、お茶をお出ししますのでっ。」


「ソフィア、お茶なら私が──。」


「いいえ、ルイーザさん、私にさせてくださいっ!」


「そ、そうかい? じゃあ、お願いするよ。」


グレッグ様が椅子に腰をおろすのを見届けると、キッチンに向かう。キッチンには、ダンさんが、作業をしていた。


「ダンさん、遅くなってすみませんでした。」


「おぉ、ソフィア⁉︎ ど、どうしたんだ? その怪我は?」


誤魔化すように、なんでもないですと微笑み、お茶を淹れる。

ダンさんから逃げるようにキッチンを出ると、グレッグ様の前にお茶を置く。

ルイーザさんとグレッグ様が、二人で話し込んでいた。

私の姿を見ると、グレッグ様は言葉を続ける。


先程の出来事を、可能な限り詳細は伏せてルイーザさんに説明してくれた。


トラブルに巻き込まれて怪我をしていた所を、治安部隊で保護したと。


ダンさんも慌ててキッチンから出て来て、「大丈夫なのか」と声をかけてくれる。



ダンさんにも同様に説明をすると、「しばらくは、安静にするように。」と言い残してグレッグ様は去って行った。


グレッグ様が見えなくなるまで、見送った後、二人に改めて事情を説明する。


「本当に、ご心配をおかけしました。」


「ソフィア、心配したよ、痛かっただろうに……。本当に、グレッグ様には感謝してもしきれないよ。本当に、災難だったねぇ……。」


そう言うとルイーザさんは、ぎゅっときつく抱きしめてくる。


「ルイーザさん、心配かけてごめんなさい、あの……く、苦しいです……。」


「あぁ、ごめんよ、苦しかったかい?さぁ、もう、ゆっくりとおやすみ。」


「どこのどいつだ! うちのソフィアに怪我をさせたのは!」


「あんた、気持ちは分かるが、後はグレッグ様にお任せしよう、騎士様達で捕まえてくれるさ。」


「だって、そんな悠長にしてられるか?」


「私だっておんなじ気持ちだよ、でも……、とりあえずまずは、ソフィアを休ませてあげようじゃないか。ねぇ、ソフィア、しばらくはしっかりと休息をとるんだよ? 宿屋の仕事は気にしなくていいからね。」


「ダンさん、ルイーザさん……。」


二人は、私をこんなにも心配してくれる。犯人が義姉だとは言えないけれど……。犯人に対して、怒りを抱いてくれる。

二人の優しさが嬉しい。

これ以上、心配をかけるわけにはいかないので、部屋で休ませてもらうことにした。


「ただいま。」


誰かいるわけではないけれど、自室に入り声をかける。ため息をつきながら、ベッドに腰掛ける。まさか、あんな所で義姉と遭遇するなんて思わなかった。

しばらくは、あまり出歩かないようにしよう。


「あら?」


ポケットが膨らんでいる。

何かしら。

ポケットに手を入れる。 グレッグ様からお借りしたハンカチを入れたままだった。


「いけない。すぐに洗わないとシミになってしまう。」


綺麗に洗って、グレッグ様にお返しに行こう。 でもしばらくは、言われた通りに安静に過ごそう。怪我が治るまで。



それから2週間後──。



ゆっくりと、じっくりと、色々な角度に顔を動かしながら、鏡に映る自分の顔を覗き込む。


「うん、これくらいなら、大丈夫。」


顔の傷もあまり目立なくなった。目を凝らしてみなければ分からない。


これなら、大丈夫。


宿のお仕事は、まだお休みさせてもらっている。もう大丈夫なのに、二人から止められている。 ちょっと過保護なんじゃないかな。でも、いやじゃない。

グレッグ様へ何かお礼がしたくて、クッキーを焼くことにした。

今なら、ダンさんがキッチンを使っていない時間帯。


三日月亭の名前にちなんで、クッキーの型抜きは三日月型と星型。


グレッグ様が、甘いものが好きかは分からないけど。

ルイーザさんから聞いた情報によると、グレッグ様は、ハモンド侯爵家の御子息らしい。 治安部隊は、貴族の方も庶民の方もいるとか。


「あっ」


いけない。考え事をしていてクッキーを焦がすところだった。 慌ててオーブンから取り出す。


室内に 甘い匂いが漂う。


「いい匂い。」


私はクッキーをカゴに詰めると、ハンカチを持って騎士団へと向かった。


義姉に見つかることが怖いので、頭からは髪を隠すようにスカーフを被った。

周囲を警戒しながら、早歩きで向かう。

門の所で、グレッグ様に用がある事を伝えると、しばらく待つように言われた。


ここなら、大丈夫だよね。

スカーフを取り外し、しばらく待っていると、若い騎士様が迎えに来て、本舎の中へと案内してくれる。

物珍しくて、周囲をきょろきょろと見回しながら歩いていた。

ある扉の前で立ち止まると、騎士様はノックをする。


「グレッグ殿、お客様をお連れしました。」


「通せ。」


「中へどうぞ、では、私はこれで。」


「ありがとうございました!」


案内してくれた騎士様にお礼を伝えて、緊張しながら入室した。


「し、失礼します。」


「やぁ、ソフィア。」


執務机に向かい作業していたグレッグ様は、私の姿に気づくと手を止める。

書類を隅へ片づけると、立ち上がり近づいてくる。


「あ、あ、あの、グレッグ様、近いですっ。」


ゼロ距離なのではないかというくらいの距離で立ち止まり、グレッグ様は顔を近づけてくる。


「あぁ、良かった。怪我は治ったようだな。」


ぐっと顔を近づけて、覗きこむ姿勢になられて、頬が紅潮する。

顔の怪我の跡を見ているだけだとは分かっているけれど、近すぎる。


「おかげさまで、この通りよくなりました。」


じりじりと後ずさりしながら返答する。


「それで、今日はどうしたんだ?あぁ そこに座るといい。」


「はい、ありがとうございます。」


椅子に腰掛けると、ハンカチをお渡しする。


「グレッグ様、先日お借りしたものです。ありがとうございました」


「あぁ、それをわざわざ持ってきてくれたのか。 別に良かったのに。」


グレッグ様はハンカチを受け取ると、向かいの椅子に腰掛ける。


「いえ、大切なものかもしれませんし、お返ししたくて。それと、あの……その……もし良かったら……お口に合うか分かりませんが、こちらをどうぞ。」



渡そうか渡すまいか、ここまで来たのに悩んでしまう。しどろもどろになりながら、クッキーの入ったカゴをテーブルの上に差し出す。


「これは?」


グレッグ様は、カゴの中を確認していた。


「ソフィアが焼いたのか?」


「はい、お口に合うか分かりませんが……。」


グレッグ様はクッキーを手に取ると、一口かじる。


「おいしい。優しい味がする。」


柔和な笑みを浮かべるグレッグ様。 おもわずドキリとした。この胸の高鳴りは、なんだろう。


「これは、三日月型なのだな。なるほど、三日月亭にちなんだのか。ソフィアも良ければ一緒に食べないか?お茶を淹れよう」


グレッグ様が立ち上がったので、慌てて声をかける。


「お茶なら、私がお淹れします」


「いや、気にしなくていい、そのまま座っていてくれ。」


グレッグ様手水からお茶を淹れてくれた。


私もクッキーを一口食べる。サクサクとして、我ながら美味しいと思う。三日月型と気づいてくれて、嬉しい。


「お茶をありがとうございます。いただきます。」


温かくて、ほっとする。グレッグ様に喜んでもらえて、良かった。

グレッグ様と一緒に食べると、いつもより美味しく感じる。


穏やかな時が流れて、心地いい。


もっと、グレッグ様のことが知りたい。


とりとめのない話をしながら、いつの間にか長居していた。


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