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あまりに不遇な女勇者へ、魔王が望んだハッピーエンド  作者: 初美陽一


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第4話 女勇者に相応しい衣装とは、果たして――?

「っ……く、ううっ……こんな、こんなこと……信じられない、なんて……なんて非道な仕打ちなんだっ……!」


 いさんで玉座の間へ乗り込んでから、数十分後――勇者ユリシアは、今まさに自分が受けている所業に、思わず涙を浮かべた。

 ちなみに、手には()()と、()()()()()()()()()()()を持っている。


「こんな、こんなっ……おいしい料理、生まれて初めてだっ……お肉が柔らかくて、舌の上でとろけてほぐれるなんてっ……こんな魔法のような現象が、この世に存在するのかっ……たったの一食で、しょくへの価値観をこうも一変いっぺんさせてくるなんてっ……なんて、なんて非道な仕打ち……!」


『クックック、勇者よ、どうやら堪能たんのうしているようだな……ちなみに苦手な食べ物などは無かったか? あれば言っておくが良いわ――!』


「っ、見くびるなよ、魔王! 私は十年前に両親を失って以降、困窮こんきゅうしながらもひとり懸命に生きてきた! 苦手な食べ物なんて、そんなもの存在しない! 食べられる草を見分けてスープを作れる私の生活力、あなどるな――!」


『そうか。……そうか……まだまだ料理はあるから、たんとお食べ……』


「ふ、ふんっ、別に魔王に懐柔かいじゅうなんてされないけど、でも食べ物に罪はないし、作っちゃったものは仕方ないしぃ……だ、だから食べるってだけなんだからな、勘違いするなっ! う~、こんなちゃんとしたお料理、久しぶりな気がするぅ……数年ぶりかなぁ……」


『シェェェェェフッ!! どんどん作って持ってこォォォいッ! ジャンジャン作ッチャッテー! ジャンジャン食ベサセタゲテー!!』


「もぐもぐ。……あっ、忘れるところだった。コホン……お料理、ありがとうございます。とてもおいしいです。……か、勘違いするなっ、恩を受けたらちゃんとお礼を言わないとって、お母さんからの教えで……それだけなんだからっ!」


『クッ、クッ……クウウッ……礼儀正しい、イイ子すぎるぅ……もはや一体何を勘違いしてはいけないのかも分からぬが、何にせよ幸せになってほしい……』


 魔王の顔をおおう闇が、何だかグルグルと勢いよく渦巻うずまいているし、魔力も噴き出しているのだが、大丈夫だろうか。


 まあそれはそれ、と食事を続ける勇者ユリシアに、メイドの中から一人が声をかけた。


「……勇者様、少しよろしいでしょうか?」

「もぐ? あっはい、何ですか?」


 敵対する魔族に丁寧ていねいなお返事だが、それはそれ……〝それはそれ〟とされる件が多い気はするが、まあ()()()()()として。


 並みいる魔族のメイドたちの中でも、特に清廉せいれんとした所作で、いかにも格調高そうな美女が、勇者ユリシアに提案する。


「お食事の最中、失礼ですが……長旅を越えた旅装のままでは、落ち着かないのでは? よろしければ、お着替えをご用意しましょうか?」


「えっ……い、いえ、そんなの悪いです。それにこんなボロでも、動きやすいのは動きやすいですし、戦いにはてきしてるので……」


 その戦いに適した格好で争う相手は、彼女たちの主である魔王では、とも思う。

 とはいえメイドの美女が言う通り、今のユリシアの出で立ちは、豪勢なパーティー会場(※恐るべき魔王の玉座の間)において、少々不似合(ふにあ)いだ。


 旅装だから、という以上に、そもそもが安物の布地をぎ合わせて作ったような衣服。恐らく既製品ですらなく、ハンドメイドだろう。風雨をしのぐために厚く、大きめに作ってあるが、資金の乏しさが窺えるし、何より無骨ぶこつすぎる。


 クリーム色の長髪も伸びっぱなしで、前髪はほとんど両目にかかっていた。つぶらにきらめく金色の瞳もたまにしか見えないし、服装も相まって、少女というより少年に見えてしまうかもしれない。


 とはいえ、そもそもいさましきユリシアにしてみれば、着替えなど乗り気ではないようだ――


「そ、それに、私は戦いにのみ生きる勇者だっ。衣服なんて、これだけで充分っ。余分に着飾るなんて、私には必要ない――」


『ふむ、着替えか……クックック、面白い! まあ勇者の気が進まぬなら、無理強むりじいはせぬが……ドレスの用意もあるし、気でも向けば――』


「えっ、ドレスっ!?」


『ククク?』


「あっ。……いや、その……」


 何だかはずんだ可愛らしい声が響いたが、まあきっと気のせいでしょう。ユリシアもバツの悪そうな顔をして、反論しようとしている。


「ば、ばかにするなっ……私はそんな、ドレスになんてっ、興味ないぃっ……そんな、フリフリした可愛いフリルとか、ふわふわしたファーみたいのとか、フワッとしたスカートとかぁ……そ、そんなの、戦いにくそうだしぃ……ぜんっぜん、これっぽっちもぉ……興味、ないんだからぁっ……!」


『何やら具体性にんだ葛藤かっとうがあるご様子。ククク、どうしたものか……フム』


 闇の渦巻く顔、名付けて闇顔なんだそれに片手を添え、考え込んだ魔王が――改めて発言した。


『クックック、勇者ともあろう者が、片腹痛いわ! 用意したドレスは貴様……貴様っていうのヤダな、やめよ。とにかくキミ専用にあつらえたもの――それを着用しないということはドレスにとっての意味を失い、それ即ち死を意味する! ドレスの一着も救えず、何が勇者か――ククク、ハーッハッハッハ!』


「っ、な、なんだとぉっ……見くびるな、魔王! 勇者として、私は救ってみせる! それが魔王の用意したドレスだろうと……あれ、ドレス? いい、のかな? うーん……まあでも、救えるなら、まあ……?」


『うんうん、よかったよかった。ちょっとコツを心得てきたぞ、よしよし……』


 何だかに落ちない表情の勇者ユリシアだが、気が変わる前に、と先ほどのメイドさんが流水の如く話を進めようとする。


「それでは勇者様、ついでなので旅の疲れも洗い流すべく、湯浴ゆあみも如何でしょう。その後のお着替えですが、宝飾品などにお好みはございますか?」


「あっいえ、宝石とか高価なのって本当に苦手で、落ち着きませんし……好み、っていうなら、モフモフした感じのとかが……あっ、というかその、聞くの遅れちゃってごめんなさい……お姉さんのことは、何て呼べば?」


「お姉さん。……何やら胸がホッコリしますね……おっと、わたくしは水の、えーと……サラ、とでもお呼びくださいませ。ではお手伝いしますので、コチラへ――」


 サラと名乗ったメイドに招かれ、ドギマギして付いていこうとする女勇者と、ワクワクとした魔力(?)を放出して待つ魔王……だが、その時である。


 ドン、ドン、と地鳴りのような重い足音が響き、何かが接近してきた――


「――ええい、何をしておられる魔王様! 愚かしい人間共の刺客、その筆頭である勇者を魔王自ら歓待するなど、正気の沙汰さたではありませんぞ!!」


『何だうるさいな。ツッコミでも来たのか』


「何を訳の分からぬことを言っておられる!? ええい、ご自身の立場を理解しておられぬのか、アナタは――!?」


 一体何が訪れたのか、全く全然これっぽっちも見当はつかない、〝ツ〟から始まる役割なのかも定かではないが――いかにも重厚な金属質の鎧を身に纏った、魔族の騎士は何をえるのか――!?


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