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悪服す時、義を掲ぐ   作者: 羽田トモ
正教国編
91/93

開幕話

短いです。

 は、尊厳を守るために自決した。


 も、苦しみながら息絶えた。


 が、神を呪って死んだ。


 饐えた匂いと死臭が充満したこの中で、生き残っているのはもう私だけ。


 だけど、私にもその時がきた。


 辛うじて繋ぎとめている意識で、死後の姿を想像してしまう。


 私はもうすぐ、皆と同じように腐って膨れ上がる。そして、肉体が限界に達した時、醜い音を鳴らして破裂するのだ。


(…………い……や……)


 生命の尊厳を踏みにじるような死にざまに、心が叫ぶ。


 しかし、口は動かせず、空気すらも吐き出せない。


「……ッ!?」


 霞む視界の中、眼前に立っている者たちに気付いた。


 金色に輝く数多の首飾りを身に着け、純白の衣服を着た者たちは、地に伏す私を黙って見下ろしていた。


(…………なん、で……?)


 まただ。


 何度も見た。


 どうして?


 どうして、この者たちは、私たちを見つめて笑ってるの?


 意味の分からぬ言葉を発しながら浮かべる、朗らかな笑み。


 潜在的な恐怖を感じながら、次第に意識が薄れゆく。


 私という存在が消える直前、一つの真理にたどり着いた。


 数百年間、神に祈りを捧げてきた。


 理性と尊厳を失った私に残ったのは、教えではなく本性。


 神に助けを、()()()


 救ってくれない神に、()()()()


 だが、何も変わらなかった。


 信仰とは、神を敬うことではない。神に、対価を、報酬を求めることなのだ。


(許せ……ない…………)


 無関心な神が。


 無作法な人族が。


 無知な自分が。


 無力な自分が。


 渦巻く黒い感情を抱いたまま、業火を思い浮かべて切望する。


(力が、欲しい……)


 そして私は、息を引き取った。

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