読書/津原泰水「作家をめざす人のための恋愛論」 ノート20161019
『作家をめざす人のための恋愛論』 感想文
《著者&読者の、小説的恋愛の体験》
01 体験した「ときめきと涙」を効果的に描写すること。
02 親友への手紙のように、恋の楽しさや難しさを、懇切丁寧に、情熱をもって描く。
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《小説的恋愛》
01 小説的恋愛とは、作家が、小説(の決め事として扱う)恋愛のことだ。
02 『ロミオとジュリエット』が下敷きにならなくてはならない。
03 なぜ恋に戸惑い胸を高鳴らせるか? 恋愛の相手「彼or彼女」が他者であるからだ。なぜ告白したときに躊躇・戸惑い・胸の高鳴り・額に汗があり、成就したあとに無上の喜びがあるのか? 別の人間である。考え方が違う。コントロールできない。そこが読者の心をつかむ。
04 恋人は他者(別の考え方をする人間)である。それが『障壁』だ。ゆえに相思相愛・同一思考・同一境遇といった設定は避ける。
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《恋愛に『障壁』要素を加える》
01 『ロミオとジュリエット』では、長年対立する名家同士の抗争が『障壁』だ。
02 若い二人の視点で、「家」の問題も内面の一部だ。自分を培ってきた障壁「家」の存在と新たに芽生えた「恋」の狭間に揺れる恋人たち、『ロミオとジュリエット』はその葛藤を描いたもの。短い逢瀬の中で不安にかられる恋人たちは、堅固な「家」という障壁を打破することができず、究極の打開策「死」を選ぶ。観客の願いむなしく、死の淵に引きずり込まれて行く。
03 自分の作品に、どのような『障壁』を設定するかが成功の鍵だ。
04 舞台仕立て/部屋・目地・自然物……人物を取り巻くあらゆる要素を物語のために総動員する。
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《恋愛小説に『三角関係』は有効だ》
01 物語(恋愛小説)の主要登場人物は三人が妥当だ。三は「不安定な安定」をつくりだす。主要な人物ふたりが対話しているとき、ものがたり上にもう一人の主要人物が設定してあれば、「ところで、あの人はどうしているのだろう」と読者は期待する。
02 第三の人物の効果/恋人二人の対話が生きず待った時に新展開になる情報を提示する。恋人二人の喧嘩の仲裁。
03 第三の人物を二人に進行する恋愛の『障壁』にする。三角関係でなくても無粋者=朴念仁=空気が読めない人という形とすると、二人の気持ちに気づかず、読者を巧みにじらす。但し、ヒロイン(orヒーロー)が二股がけ的な思いを抱くと読者の反感を買う。
04 登場人物の「気持ちの変化」によって結果的に三角関係を形成してゆくのも醍醐味の一つ。高度なテクニックだが……。
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《恋愛小説以外のジャンル作品での恋愛》
01 特に必要がなければ描かぬほうがすっきりする(ノート2012.08.10)。
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引用参考文献
津原泰水 『作家をめざす人のための恋愛論』(『ジュニア小説講座』実践編Ⅰ 東京カルチャーセンター 1997年)
ノート20161019




