読書/梅原猛『神殺しの日本』 ノート 20160914
梅原猛『神殺しの日本』感想文
概要
いわゆる「サヨク」の朝日新聞社からでた書籍。著者様は学生運動よりは少し前の世代。「基地外」種族ではないが、ちょっと左に傾いている。
戦後直後の学生を扱った小説・エッセイを読んでると「デカンショ」という言葉を散見する。最近はすっかり見なくなったので、忘れていたら、用語説明があった。デカルト、カント、ショーペン・ハウアーなのだそうだ。つまるところは哲学者で、大学というのは先人を学ぶところだとされていたとのことだ。――著者は、京都大学卒の哲学者だ。「哲学の道」という散策路を歩いて思索を重ねていた西田幾多郎が退官するころに入学したのだという。
本書は二部構成で、第一部が本題である日本の思想史・宗教史とその危機を扱っている。――セミナーの講義集のような形。第二部が哲学者になった著者の自分史を書いている。
必要な情報は第一部にあるので、その目次・用語・人名を以下に記す。
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「神殺しの日本 反時代的密語」
●理性の復讐招く靖国参拝11
●神は二度死んだ16
●民主主義道徳の創造20
●ムツゴロウは復讐する24
●理想の旗を高く掲げよ28
●日本の伝統とは何か33
●プラトンの憂慮38
●仏教の道徳42
●道徳を忘れた仏教46
●二種廻向と親鸞50
●円空の語るもの54
●円空の和歌58
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●西田哲学はロマンティシズムか64
●和辻哲郎の『風土』について68
●東アジア文明の語るもの72
●柳田國男の二つの仮説76
●怨霊を志願した人間80
●田中哲学をどうみるか84
●演劇と哲学88
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●アニミズムと生物学92
●なぜ、縄文文化か96
●天台本格論とアイヌ思想100
●金田一理論の光と影104
●何かが語っている108
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所見
「神殺し」というと宮崎アニメ『もののけ姫』にでてくるテーマだ。要は時代の潮目で、次代に移るときに、古い時代の精神を潰しておく必要がある。それが神殺し。――アニメではそのあたり闇の機能だけは、延々と朝廷が握っていたという設定。主人公の少年は、まつろわぬ民・蝦夷の人なので、森羅万象(自然神)「ダイダラボッチ」の側に属する。当然のごとく、そっちの代弁者「もののけ姫」を支援する。烏帽子様は当時の最先端技師「たたら」集団の長で貧困層を救済している文明の側からの救世主だ。時代の変り目で、両者は激しく激突。朝廷=文明は「神殺し」を推進する。
では本題。
サヨクサマの念仏の一つ、冒頭から「理性の復讐招く靖国参拝」福岡地裁に(正体不明団体)が、当時首相だった、小泉純一郎が参拝をしたことに対して違憲だとして訴えたが、確かに違憲だけれども原告が掲げる損害賠償って必要ある? という回答で敗訴させられた。さらに、中国・韓国の怒りを買ったとの親善を失う行為をなんで繰り返すのかと続けてきた。中国は、チベット・南海を侵略し、地元メディアを発信基地に沖縄乗っ取りを計り、尖閣で挑発を繰り返すギャングと例えられ。韓国は自由主義陣営にいながら中国の下にくっついたりアメリカにいったりコウモリと呼ばれているチンピラと揶揄されている。そして日本を批判すれば潰れてすり替わることができると信じるオメダタイ国だ。――日本相手なら何をやってもいいと考えている特殊な国、朝鮮を加えて「特亜三国」とまでいわれている。もう、みんな知っている。彼らは隙をみせれば撃ってくる「敵」なのだ。朝日は日本での広報機関という印象ができた。――まあ、普通の人なら、第一節を読んだところで、時代遅れな人だなあといって本を閉じてもいいだろう。90あたりのおじいちゃんなので、まあまあ。マルクスの共産主義理論は失敗したけれども、唯物史観というのは、歴史学を学ぶ者には便利なモノサシである。サヨク箇所を読み飛ばせば、この人のノートは悪くない。
梅原氏がいうところ、日本の神殺しは、大きく二回あった。そのあたりは哲学者ニーチェが、欧州の近代化が、二回にわたる在来宗教を否定したことによって成立したのだと指摘したことを下敷きにしている。
一回目は聖徳太子の仏教導入。
二回目は明治維新に伴う廃仏毀釈運動。
廃仏毀釈運動から戦後直後まで、「大教院」という日本仏教版「大政翼賛会」みたいなものが東京の増上寺に置かれて、阿弥陀様をどかして天照大神を代わりに乗っけた。その後、東西の本願寺が離脱してこのイビツな統制から脱却する。
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備考:以下は気になる文節の抜きだし
著者は、ニーチェが、欧州版神殺しの結果生まれた現象を、ドストエフスキーの『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』の主人公たちに重ねてみている。
仏教の戒律(道徳)で強烈なのが、一つ目がキリスト教の人間に限定せずに、「生きとし生けるものを殺してはいけない」としているところ。二つ目が「嘘をついてはいけない」というところにある。
農耕文明が始まって人間を特別なものとする思想が生まれ、それが理性によって人間の他の生物に対する優越を示すプラトンの哲学になる。これがキリスト教に受け継がれる。キリスト教では人間の上に神が存在した。デカルトが登場し、以降は神様を負いだして人間が世界の中心に座って自然に対する絶対的支配権を行使した。
「教育勅語」は「廃仏毀釈」の上に作られたイデオロギーだ。仏教破壊とともに、天皇の系譜から外れた神々を廃止して、新たな
聖徳太子の仏教導入後、日本の仏教は縄文時代以来あった神道と習合した。それが(奈良時代末期の)泰澄・行基によって完成した。天皇を神とする主張は、『古事記』『万葉集』『神皇正統記』からあったが、江戸中期から起った国学で盛んとなり、討幕運動に利用された。廃仏毀釈・教育勅語で、古来の多神教的要素・包容力のある道徳的要素をもった神仏習合様式を弾圧。戦後の天皇の人間宣言で、国民はメンタル崩壊に陥った。
プラトンの理想国について、英国パートランド・ラッセルは、ヒトラーの独裁国家だと批判した。
仏教の道徳は、十善戒と六波羅蜜がある。十善戒はしてはならないこと、六波羅蜜はすべきことの規定だ。このうち六波羅蜜は布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧からなる。持戒と禅定と智慧は「戒」すなわち戒律を守り、「定」すなわち瞑想をし、「慧」すなわち知恵を磨く徳であり、釈迦が愛欲を滅ぼすために必要な徳として挙げたものである、六波羅はこの戒・戒・定に大乗仏教が新たに布施・忍辱・精進の徳を加えたものだ。/利他の行を重んじる大乗仏教は布施の徳を第一とする、布施には財施・法施・無畏施の三種がある……。
「十七条憲法」では仏教を根幹に、儒教・道教を加えた三教一致の道徳を唱えた。
後出の各宗派開祖は、十善戒と六波羅蜜をよく守った。平安期は最澄・法然。鎌倉期は明恵・貞慶・叡尊・忍性。江戸期はキリスト教弾圧に利用され、新規での寺院造成を禁止された。仏教の改革運動者・白隠は六波羅蜜を厳しく説く、慈雲は僧侶ばかりでなく一般人も護れと説いた。
親鸞の『歎異抄』。もともと西本願寺の書庫に眠っていたのが、江戸中期に見直された。それが明治になって世に注目された。その第三章に「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。その本の基礎には、主著『教行信証』がある。
行基・泰澄は修験道で神仏習合を完成させた。円空は木彫仏で衆に説法をした。円空仏の護法神は独創的だ。
仏師円空は和歌を残した。
柳田國男への賛同と批判。
柳田國男の、個人にして神になる条件。「第一に官位が高い・一芸に秀でている・卓越した能力をもつ。第二に死罪あるいは流罪・死後に余執がある」聖徳太子、柿本人麻呂、菅原道真が相当、聖徳太子の場合は本人の死の直後に一族が殲滅させられた。……さらに信長・秀吉・家康と為政者が自ら神となる。そこに芸術家利休をからめ、利休の子孫は残ったと述べる。
演劇と哲学において、シェークスピアはベーコンではないのかという説。
著者はスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』を書いて、猿之助が演じ、大当たりした。
アニミズムの復権。――英国文化人類学者E・B・タイラー。世界中の宗教の原点は多神教だ……縄文文化の多様性。芸術性に気づいたのが、岡本太郎・宗左近・著者自身だとする。
天台本格論。開祖最澄よりも元三大師良源のほうが巣杯されている。良源は円仁・円珍に始められた天台密教の完成者。『天台本格論』「草木国土悉皆成仏」と唱える。
民俗学者・金田一京助の引用で、沖縄古語とアイヌ語との類似性から、言語の大半は縄文から引き継がれている。文法が征服者である韓半島系のものとなったようだとする。
著者は、ニーチェ『反時代的考察』を本書の下敷きとした。蜜語は空海から学んだ。
日本霊異記』でしきりに霊異をとなるのは、三世の因果を説く仏教が、現世のみを説く儒教に勝るというのがテーマだからだ。
●梅原猛『神殺しの日本――反時代的密語』朝日新聞社2006




