読書/太宰治 『富嶽百景』ノート20161007
太宰治 『富嶽百景』 感想文
太宰治『富嶽百景』1939年
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【概要】
山梨県御坂峠にある旅館・天下茶屋に、太宰治の文学の師・井伏鱒二が滞在していたとき、太宰治がそこを訪ねる。そこで、夫人となる女性(石原美知)を紹介され縁談が決まった。退廃主義作家と評される太宰は更生を試みる。そのあたりの溌剌とした心境がうかがえるとともに、「富士には月見草がよく似合う」で有名な一文が入る日本文学史上の金字塔の一つと呼ばれる私小説だ。400字詰め原稿用紙37枚相当。
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【プロット】
01 口上。富士山の詩的描写(著者の教養を表す)。
02 昭和三十八年初秋(八~九月) 師匠で、仲人である井伏鱒二とその人とが滞在している、旅館・天下茶屋についての描写。旅館からの地点からだと俗な富士。井伏と登山するが、霧がたちこめている。縁談をもちかけられる。
03 太宰に傾倒している青年・新田が面会にやってくる(自己紹介)。佐藤春男をして、退廃主義作家ときいていたのだが、会ってみると案外まともだと評した。『白蛇抄』の清姫とひっかけてみる雅な会話の遊び。
04 井伏が帰った後、自身の執筆のため、天下茶屋で滞在を続ける太宰。ペンは遅々として進まない。女将と十五歳の娘について触れる。
05 結婚費用を里に工面してもらおうと手紙を送ったのだが、自身でせよ、という感じで断られた。事情を、婚約者とその母親とに伝えるべく、バスに乗って甲府にゆく。バスには富士をみずに、道端ばかり眺めている老婆がいて、話しかけると共感した。その老婆が、月見草をみつけた。そこで、「富士には月見草がよく似合う」の一文がでる。
06 先方と、身内でのささやかな祝言をしましょうということになった。
07 天下茶屋に戻る。
08 十月、ささやかな結婚。
09 十一月、天下茶屋。執筆の合間に、ある花嫁が縁者と共に天下茶屋に立ち寄る。欠伸をこいたりする様が下品だと宿の人と話したりしている。すると、タイピスト風の若い女性二人連れがきて、カメラのシャッターを切ってくれと頼む。――太宰は二人を撮らずに富士山を撮影するという悪戯をする。そして東京に帰る。
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【所見】
ラストの、写真を撮ってくれと頼んだ若い女性二人の依頼に対して悪戯し、富士を撮って終わる風流な終り方は、梶井基次郎『檸檬』を彷彿とさせる。美文である。




