読書/伊集院静 『三年坂』 ノート20170118
集院静 『三年坂』 感想文
伊集院静『三年坂』朗読/梶村ケイ子 横浜録音図書株式会社
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【概略】
14才の春、少年は瀬戸内海沿いの故郷を出た。そしてそれから20数年後美花鮨を開店した。開店当日母が急死する。ずっと彼を支え続けてくれた母の人生は…。
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【目次】
01 明け放った障子戸から射す陽射しが……14分
02 どうしてそこへ母と二人で出かけることに…… 24分
03 京都に着いたのは夜の8時を点……15分
04 清水寺へお道を宮本はゆっくりと歩いた。……12分
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【所見】
物語はフラッシュバックが多いため時系列で示す。
戦後直後の瀬戸内の町。宮本少年は母一人子一人の家庭で育った。バス旅行があって、片腕のない復員兵あがりの男が旅行に同行していて、母親と話しているのをみて嫉妬する。それから男は物語に直接登場しない。若く綺麗な母親で、親戚の料亭でまかない頭のような職をして宮本を育てた。高校進学時、野球好きの宮本に、上京するようにうながす。宮本は訪ねてきた母親に銀座で鮨を食べさせられ、憧れの職業だといった。宮本にはマザコンめいたところがあり、母親の青写真に沿った生き方をする。十五年、寿司屋で働き、結婚。それから鎌倉で店をだす。母親に楽をさせてやろうと思っていたら開店したその日に亡くなった。
妻と大喧嘩の最中、母の法時を故郷でやるということになった。妻は自宅でやればいいのになんで遠くの故郷でやるのだといったので、別れてやると言い渡し、むこうも受けて立つといった感じ。ゆえに一人で法事をやった。故郷での法要は縁者が少ない割に故人を知る人との語らいがあった。自分を育てることだけに生きがいを見出していたようにみえた、哀しい母が、実は自分の父親らしい男性(片腕の復員兵)と逢瀬を重ねていたことが判って安堵した。その母の幻に妻とうまくやりなさいと肩を叩かれるのだった。
ノート20170118




