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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 11

「あのアイドルは今!? 激撮・ルナミスTV局」

「クルックゥゥゥ!!(※渡すものか!)」

「負けないわよ! これは私が先に見つけたオーガニック・ビーンズ(ただの鳩の餌)なんだからぁぁ!!」

ルナミス帝国・中央公園。

ドゥルルル!と羽を膨らませて威嚇するボス鳩に対し、リーザは一切引かなかった。

彼女はアイドル時代に培った「完璧なウインクと投げキッス」のポーズから、素早く手を伸ばして地面のパン屑と大豆を鷲掴みにした。

「シュバッ! ……ふふふっ、とったどぉぉぉぉ!!」

リーザは両手いっぱいの鳩の餌(戦利品)を天高く掲げ、勝利の雄叫びを上げた。

ボス鳩は「クルル……(※ヤバい奴だ……)」と呆れたように飛び去り、リーザは満足げにエプロンのポケットをパンパンに膨らませた。

「大豊作ね! このパン屑はリアンさんにクルトンにしてスープに浮かべてもらって、お豆は塩茹でにしてもらうのよ! あぁ、今夜のまかないが楽しみだわぁ♡」

極貧生活の知恵と逞しさが生んだ、満面のアイドルスマイル。

だが、その愛らしくもあまりに悲壮感漂う姿は、公園の茂みに潜む『ルナミス帝国のTV局クルー』のカメラに、余すところなく収められていた。

「……撮ったか?」

「バッチリです、ディレクター。……まさかあの、一世を風靡したシーランの親善大使リーザ様が、公園で鳩とパン屑を奪い合っているなんて……」

カメラマンが、同情で涙ぐみながらレンズを回す。

番組名は『特番・あのアイドルは今!? ~栄光からの転落人生スペシャル~』。

ルナミス帝国で一瞬だけ巻き起こったアイドルブーム。そのブームが去った後、表舞台から姿を消した者たちの「悲惨な末路」を追う、極めて悪趣味で視聴率の取れるドキュメンタリー番組である。

「よしっ、突撃インタビューだ! あの悲壮感に満ちた笑顔の裏にある、涙の苦労話を引っ張り出すぞ!」

ディレクターがマイクを握りしめ、茂みから飛び出した。

「あ、あの! リーザさんですよね!? ルナミス帝国のTV局ですが、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか!?」

「えっ!?」

突如現れた巨大なテレビカメラとマイクに、リーザは目を丸くした。

しかし、次の瞬間、彼女の瞳に「プロのアイドル」としての熱い炎が宿った。

(わぁっ! テレビの取材!? 私、最近はポポロ村の定食屋でウェイトレスばっかりだったけど、やっぱりまだ帝国では需要があるのね!!)

リーザはエプロンについた泥とパン屑をササッと払い、カメラに向かって完璧なキラキラ・スマイルを向けた。

「はいっ! シーランの親善大使にして、みんなの永遠のアイドル、リーザですぅ☆ 今日はどんな取材ですかぁ?」

「あ、あの……リーザさん。単刀直入にお聞きします。今、そのポケットに詰め込んでいるのは……」

ディレクターが、痛ましく泥にまみれたリーザのポケットを指さす。

「これですか? ふふっ、今日は公園で『大自然の恵み(オーガニック食材)』を収穫していたんですぅ♡」

「オーガニック……(※ディレクターの脳内変換:『鳩の餌すらもオーガニックと呼んで虚勢を張るほどの極貧生活……ッ!』)」

ディレクターの声が震えた。

「リーザさん……辛くないんですか? かつては豪華なステージで歌っていたのに、今は……そんな、鳩と争ってまで……」

「辛い? ううん、全然! だって、このお豆、茹でるとすっごくホクホクして美味しいんですよ! それに、このパン屑も、良いお店のやつみたいで甘みがあって……!」

リーザは無邪気に笑いながら、拾ったパン屑を一つパクリと口に入れた。

「ん~っ! 美味しいっ♡ アイドルは、どんな環境でもファン(鳩?)と触れ合って、逞しく生きるのが大事ですからねっ☆」

「…………ッ!!」

そのあまりにも健気(に見える)な姿に、ディレクターとカメラマンは号泣した。

どん底に落ちてもなお、アイドルの笑顔を崩さず、鳩の餌を「美味しい」と食べる少女。これ以上の感動(お涙頂戴)ドキュメンタリーがあるだろうか。

「リーザさん……! あ、ありがとうございます! この映像、今夜の『特番・転落人生スペシャル』の目玉として、全国ネット(および周辺諸国)で大々的に放送させていただきます!!」

「えっ!? 全国ネット!? やったぁぁぁ! 私の歌と魅力が、また世界中に届いちゃうのね!!」

番組の趣旨(転落人生)を全く理解していないリーザは、カメラに向かって元気いっぱいに手を振り続けた。

「みんなー! 絶対見てねー! ポンポコポンポーン☆」

かくして、リーザの「鳩との死闘&パン屑もぐもぐ映像」は、最高画質で電波に乗り、ルナミス帝国全土……そして、遥か遠き海の底へと放たれてしまったのである。

この映像が、娘を溺愛する『最恐の海神(母親)』の逆鱗に触れることになるとは、満面の笑みのリーザは知る由もなかった。

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