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『最強暗殺公爵の異世界定食屋〜『ネット通販』と現代兵器でスローライフを満喫してたら伝説の種族が常連客になった件〜 』  作者: 月神世一


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EP 2

「ジェネラルオークの悲劇。絶対零度の八つ当たりと幻の十万円」

ルナミス帝国へ向かう街道を、一人の青年がダルそうに歩いていた。

「……あー、クソッ。何で神の眷属たる俺様が、たった三千円握りしめて『羽根モノ』で、ひーひー言わなきゃいけないんだよ」

フェンリルはマルボロ・アイスブラストの煙をふぅーっと吐き出し、道端の石ころを蹴り飛ばした。

羽根モノはチマチマと玉を増やす台だ。MAX機のような脳汁ドバドバの爆発力はない。その現実に、バトルジャンキーの心はすこぶる荒んでいた。

そんな彼の耳に、前方からけたたましい悲鳴と地鳴りが届いた。

「潰せええ!! 全てを奪い尽くせェェ!!」

「ひいいいっ! 誰か、助けてくれぇぇ!」

街道沿いの辺境の村。

そこでは、巨大な戦斧を持った巨体――Aランク指定の凶悪魔物**『ジェネラルオーク』**が、数十匹のオークの群れを率いて村を蹂躙しようとしていた。

燃え上がる家屋。逃げ惑う村人たち。まさにファンタジー世界における絶望のテンプレ的状況である。

しかし、その絶望のド真ん中に、ジーンズにタンクトップ姿のヤンキーが、ポケットに手を突っ込んだままズカズカと歩いてきた。

「……ったくよぉ。道のど真ん中で塞がりやがって。面倒くせぇなぁ」

フェンリルの機嫌は、パチンコ代の少なさゆえに最悪のどん底だった。

「あァ? なんだ、このヒョロガリの人間は」

ジェネラルオークが、見下すような醜悪な笑みを浮かべた。

身長3メートルを超えるオークから見れば、細身のフェンリルなど文字通り小枝に等しい。

「……あ? なんつった? 今」

フェンリルの歩みが、ピタリと止まった。

彼の周囲の気温が、一瞬にして数十度も急降下する。

「頭がおかしいのか!? 飛んで火に入る虫けらだなぁ! 野郎ども、そのヒョロガリの手足を毟って食っちまえ!!」

ジェネラルオークの号令で、オークたちが下品な笑い声を上げながらフェンリルに飛びかかっていく。

だが、フェンリルはタバコを指に挟み直し、氷のように冷たい目で巨漢の豚を睨み据えた。

「……馬鹿が。救えねぇな」

フェンリルが軽く指を鳴らした、その瞬間。

パキィィィィン!!

空中の水分が一瞬で凍結し、フェンリルの周囲に『無数の巨大な氷狼』が顕現した。

神気と絶対零度の冷気を纏った、美しくも凶悪な捕食者たち。

「な、何!?」

ジェネラルオークの顔から、一瞬で余裕が消し飛んだ。

本能が「絶対に勝てない次元の存在」だと理解し、全身の細胞が悲鳴を上げている。

「喰っちまえ」

フェンリルが短く命じた。

次の瞬間、圧倒的な一方的蹂躙(パチンコに行きたい八つ当たり)が始まった。

「ギャァァァァァ!?」

「グベェッ!!」

オークの群れは、氷狼たちの牙と爪の前に文字通り「秒殺」された。

反撃する隙すら与えられず、数十匹いたオークたちはあっという間に氷漬けの肉塊へと変えられていく。

「ひ、ひぃぃぃ……! バケモノだぁ……!」

尻餅をつき、戦斧を取り落として後ずさるジェネラルオーク。

「おい」

フェンリルの冷たい声が、オークの頭上から降ってきた。

いつの間にか、ジェネラルオークの目の前にフェンリルが立っている。

「お、お許し下さい……! 私が、私が悪ぅございまし……」

「言っただろ? 救えねぇなって」

フェンリルは大きく息を吸い込むと、ジェネラルオークに向けて『絶対零度のブレス』を至近距離から吐き出した。

ビュゴォォォォォォォ!!

「ひ、ヒィィィィ!! か、身体が凍って……行く……!?」

断末魔すら完全に凍りつき、Aランク魔物のジェネラルオークは、一瞬にして見事な『巨大な氷の彫像』と化した。

「ヒョロガリ呼ばわりした落とし前だ。地獄で羽根モノでも打ってな」

フェンリルは冷たく吐き捨てると、氷像となったジェネラルオークの顔面に、渾身の鉄拳制裁を叩き込んだ。

パァァァァンッ!!

硬質な音と共に、ジェネラルオークは粉々の氷の欠片となって宙に舞い散った。

「す、すげぇ……!」

「一瞬で、ジェネラルオークの群れが……神様だ! 神様のお使いだぁ!」

ポカンとしていた村人たちが、涙を流してフェンリルの足元に平伏した。

村長らしき老人が、震える手で皮袋を差し出してくる。

「あ、あの……! 命の恩人様! これは少ないですが、村のなけなしの金貨(10万円相当)です! どうか、お納めくだされ!」

「お?」

フェンリルのチャラい瞳が、皮袋の中の金貨を見て一気に輝いた。

(……よっしゃあ! 10万円!! これだけ軍資金がありゃ、MAX機で一撃ドカンと狙えるぜェ!)

「へへっ、気にすんな! 困った時はお互い様ってヤツだ! じゃあな!」

フェンリルは先ほどまでの冷酷な神のオーラを微塵も残さず、ルチアナから買ったマルボロを美味そうに吹かしながら、スキップせんばかりの軽い足取りでルナミス帝国へと去っていった。

……だが、この時の彼はまだ知らない。

この後、パチンコ屋で手痛い洗礼を浴び、結局「所持金ゼロ」になってポポロ屋の裏口に泣きつくことになる運命を。

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