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第33話:絶対的な宣言と核兵器の無力化

 華々しく開幕した会議で、悠人は登壇した。マナ技術によるリアルタイム翻訳システムのおかげで、悠人の言葉はタイムラグなく世界中の言語で参加者に届く。その声は極めて冷静かつ淡々としており、それがかえって、彼の絶対的な自信と揺るぎない決意を裏打ちしていることを、私は感じていた。


 悠人は一切の儀礼を排し、即座に本題に入った。


「人類の未来は、核兵器という自己破壊の恐怖によってではなく、技術によって決定されるべきです。」


 悠人は、マナ技術が提供する未来図を提示した。マナ技術はエネルギーコストをゼロ化し、世界の電力網を瞬時に統一できること。さらに、マナによって資源の再生が理論上無限となるため、飢餓と貧困、そして資源を巡る戦争の根本原因を消滅させられる、と具体的に説明した。


「武力を持つことよりも、新秩序に参加することの方が、遥かに大きな利益をもたらします。」


 そして、本題に入る。


「よって、私は、既存の核兵器・大量破壊兵器の即時かつ不可逆的な廃絶を要求します。」


 悠人は言葉を切った後、旧秩序側が事前に用意していた「共同質問状」を画面に映し出した。


「その紙切れは、過去の遺物に対する執着であり、未来の議題ではない」と、悠人は冷徹に一蹴した。議論の余地は一切与えられなかった。





 旧秩序側の代表は、悠人の非礼な態度に激怒し、即座に反論を開始した。


 アメリカ代表は「相互確証破壊こそが長きにわたり平和を保ってきた」と主張し、ロシア代表は「国際的な安全保障体制の崩壊を招く強権的な行為だ」と非難した。彼らは好き勝手に核保有の正当性を主張し、会議の正当性を揺るがそうとしたが、悠人は一切耳を傾けなかった。


 悠人は静かに宣言した。「証明は言葉ではなく力で行う。」


 次の瞬間、会議のホログラム画面上に世界地図が映し出された。世界中に散らばる核弾頭の位置が示され、その点が一瞬、鈍く光った。


 悠人は、全世界の主要な核弾頭の起爆制御システムに対し、一瞬だけマナによる完全な介入を行ったのだ。物理的な破壊ではない。ただ、核兵器の制御が完全に悠人の支配下にあること、つまりその「存在意義」が無効化されたことを、全世界に示した。


 会議画面では、核保有国の代表の背後で、軍事担当官たちが制御喪失を示すアラートにパニックに陥る様子がはっきりと映し出されていた。


 その衝撃が世界を支配する直後、私は日本の代表として発言した。


「この力は、一勢力の所有物ではなく、人類全体の倫理的責任の下に置かれなければならない。日本は、この技術を平和利用と国際的な監視下に置くために、真波悠人と協調する」


 私の発言は、旧秩序の暴走を牽制する、外交上の最後の楔となった。





 デモンストレーションによる旧秩序の完全な無力化の後、悠人が会議画面を見渡しながら、最終的な通告を統合して行った。


「これより、核兵器の解体プロセスを、本日より48時間以内に開始することを要求します。この通告は、会議に参加しているか否かにかかわらず、核兵器を保有する全ての国に対して適用されます。また、核兵器を保有していない国も含め、この新秩序構築の枠組みに協調する意思を示すか、あるいは保留するかを、全ての国に求めます。新秩序に参加するか、旧秩序のまま孤立するか、選択してください。」


 その言葉は、一切の感情を含まない、静かな命令だった。


 画面上では、数カ国の代表が、絶望と怒りを滲ませながら「会議の正当性を認めない」と発言し、通信を遮断し退席した。彼らは、即座に永久孤立の道を選んだのだ。


 一方、旧秩序側の同盟に依存していた中堅国の一部は、「国内での協議が必要」として保留票を投じた。彼らは即座に排除されることはなかったが、その表情は極度の不安に覆われていた。


 退席者と保留票が出た後、悠人は改めて通告を繰り返した。


「保留を選択した国々も含め、48時間以内に最終的な参加の意思を示さない場合、マナ技術の恩恵から永久に排除します。期限は絶対です。」


 発展途上国を中心とした多数派は、退席した国々の強硬姿勢を無視し、満場一致で悠人の構想を熱烈に支持し、核廃絶と新秩序構築の枠組み採択を宣言した。屈服せざるを得なくなった核保有国の代表たちは、怒りと諦めの表情で採決を見守るしかなかった。


 画面越しに、日本の副長官が映った。彼は、かつての同盟国である核保有国の代表たちに対し、同情ではなく、歴史の必然を受け入れた静かな満足感のような表情を見せていた。


 核兵器の時代は、終わった。


 私の個人的な迷いは、この絶対的な力の前に完全に消滅した。人類は、武力による破滅の道から引き戻され、進歩への道へと静かに押し出されたのだ。悠人への絶対的な信頼と、歴史を書き換えた瞬間の重さが、私の胸を満たした。

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