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第30話:日本との秘密交渉と世界秩序への布石

ストックが切れた為、ここから少し更新がおそくなるかもしれません。すみません。

 連邦内の極秘通信ブース。画面の向こうには、疲れと警戒の色を浮かべた内閣官房副長官が映っていた。私は、悠人の全権代理人として、この国の未来を賭けた秘密交渉に臨んだ。


「まず確認させていただきたい。貴方は、なぜ日本政府への協力を持ちかけたのですか? 私たちが行った過去の行為を、なぜ水に流せるのですか?」副長官は率直に問い詰めてきた。


 私は落ち着いた声で答えた。「私たちは、あなた方と対立したいわけではありません。私たちは、あなた方が過去に背負った重荷や、私たちに対して行ったすべての行為を理解しています。しかし、そのすべてを水に流し、あなた方の持つ真の力を、平和的な未来を築くために使ってほしいと願っています」


 次に副長官は、核心的な懸念を突きつけてきた。「協調の道を選んだとしても、マナ技術の隠された兵器転用可能性は無視できません。万が一、その技術がテロ組織や第三国に渡れば、世界は破滅します。我々は、技術の監視と情報共有を要求します」


 悠人は、私の横で静かに画面に顔を向けた。


「副長官」悠人の声は静かだが、絶対的な重みがあった。「あなた方が恐れているのは、あなた方の技術体系の延長線上にマナがあると考えているからです。しかし、マナ技術は、物理法則そのものに働きかける、言わば生命の原則に近いものです。それを破壊や殺戮のために転用することは、その本質に反するため、技術的に不可能です。あなた方が解析を試みても、それは無意味でしょう」


 そして悠人は、協調のメリットを提示した。


「私たちは、日本が持つ高度な情報分析能力と技術力を必要としています。私たちは、マナ技術で収集した世界規模の紛争予兆データを日本に提供します。日本はそれを解析し、世界平和のための情報ハブとして指導的な地位を確保できる。同時に、日本の優秀な研究者を招聘し、未来のインフラ技術の共同開発に参加してもらいたい。これこそが、旧時代に固執するよりも遥かに大きな、日本の未来です。」




 副長官は、悠人の提示に動揺を見せつつも、まだ決定的な判断をしかねている様子だった。そこで悠人は、言葉ではなく力で、日本政府を納得させるための行動に出た。


「副長官。百の言葉よりも、一つ、見ていただくのが早いでしょう」


 その直後、副長官の通信機器の画面が数秒間フリーズした。慌てる彼の背後で、日本の技術者がパニックに陥る声が聞こえた。


「これは、日本の最高機密通信システムへの、ごく短時間の一時的な介入です」悠人は淡々と告げた。「これは敵対行為ではありません。ただ、マナ技術が、あなた方のいかなる既存の防衛・情報システムも、瞬時に無力化できることを示す目的です」


 副長官の顔色は青ざめた。


「そして、副長官。私たちはこの力で世界を脅したいわけではありません。この力は、国際的な正当性がなければ使えないものです」悠人は続けた。「ですから、提案します。今から、あなた方の指示のもとで、特定の旧秩序国の軍事衛星への一時的な介入を実行してください。日本がこの力をコントロールし、国際社会に対し『マナ技術は日本が監視下に置いている』という建前を持てるようになる。これこそが、日本が孤立から脱却する唯一の道です」


 副長官は、自国のシステムが崩壊した恐怖と、国際的な孤立から脱却できる可能性という、二つの極端な感情の中で、一瞬にして決断を下した。私の外交的な役割は、この「力の外交」を冷静に、かつ毅然とした態度で伝えきることで、完全に確立された。




 日本政府は、悠人の示した力の絶対性、そして「日本の指示による国際介入」という外交的な救命策を受け入れた。しかし、副長官は最後に、日本政府の最大の懸念を問うた。


「万が一、真波悠人に制御不能な事態が起きた際、この技術を止めるメカニズムは存在するのか? 日本は、その究極のリスクを負えるのか?」


 悠人は、深く息を吸い、画面越しに副長官を見据えた。


「副長官。マナ技術は生命の原則に近いため、暴走を防ぐ唯一の方法は、この技術を用いる者の揺るぎない平和への意思です。この技術を止めるスイッチは存在しません」


 静寂が流れた。副長官は絶望しかけた。


「しかし」悠人は続けた。「その揺るぎない意志を保つために、私たちは日本の持つ倫理観と知性が必要不可欠だと考えました。私たちは、日本の協力なしには、新秩序を平和的に維持できない。だからこそ、私たちはあなた方に全てを公開し、共に進むことを選んだのです」


 副長官は、その言葉に、恐怖と同時に安堵、そして日本の未来を賭けた使命感を見出したようだった。


「分かりました。日本政府は、マナ技術の平和利用と安全保障の監視を日本が主導するという名目のもと、貴方の提案を受け入れます」


 故国日本との交渉は、ここで一旦の合意を見た。私の外交のパートナーとしての揺るぎない覚悟は、この交渉を通じて固まった。


 日本という強固な橋頭堡を確保した今、悠人は私を見た。


「綾音さん。準備だ。世界全体に対し、核兵器廃絶と技術協力による新秩序構築を呼びかける国際会議を、いよいよ開始する」

週に2、3回は更新したいと思っております。長い目で見て下さい。

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