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第23話:EMP弾の無力化と特殊部隊の末路

 ムアンバ大臣による非道な命令が下されてから、わずか数分。私たちの傍受端末は、特殊砲弾「スコーピオン」の発射を正確に捉えた。その軌道は、他のミサイルとは異なり、ピンポイントで防御壁の中心、すなわちコア制御ルームの真上を狙っていた。


「来るわ、悠人! スコーピオン!」私の声には、さすがに緊張が走った。通常兵器とは性質が違う。もしEMP効果がコアの演算に一瞬でも干渉すれば、防御壁の維持が不可能になりかねない。


「問題ない、綾音さん」悠人は静かに言った。「自己防御シールドは起動済み。外部とのマナ接続は遮断している」


 彼は、コアの物理的な防御には絶対の自信を持っていた。しかし、EMP弾が防御壁に接触する際の挙動こそが、連邦軍の最後の賭けだ。


 スコーピオンは、防御壁に到達する寸前、その弾体から強力な電磁パルスを放出しようと起動した。しかし、その瞬間、悠人が仕掛けたマナトラップが作動した。


 マナは、物質の構成情報を書き換える力を持つ。悠人は、飛来するスコーピオンの弾体を捉えると、電磁パルスが発生する前に、弾頭を構成する高密度な金属を、急激に、そして無害な低密度の非金属物質へと変質させた。


 結果は、静かで劇的だった。EMP弾は、爆発する間もなく、その弾体を保持できなくなり、空中でバラバラに分解し、無害な粉塵となって霧散した。もちろん、強力な電磁パルスが発生することもなかった。


 防御壁への負荷はゼロ。コアの演算機能にも一切の異常なし。


 ムアンバ大臣の「最後の切り札」は、悠人の技術によって、物理法則を逆手に取られる形で完全に無力化された。





 EMP弾の失敗が前線指揮本部に伝わるや否や、通信は再び激しい混乱に陥った。ムアンバ大臣の怒鳴り声は、以前にも増して常軌を逸していた。


「無効だと? 馬鹿な! EMPが、効かないだと!?」


 彼は、もはや論理的な思考能力を失っていた。連邦の持つあらゆる通常兵器、そして極秘の非通常兵器までが無力化された。残された手段は、ただ一つ。


「特殊部隊に告ぐ! 直ちに強行突入せよ! 防御壁がわずかでも揺らいだ隙を突け! 技術者を確保しろ! 生死は問わん! コアを破壊される前に、真波悠人を拘束しろ!」


 ムアンバ大臣は、特殊部隊の命と、連邦軍最後の威信を、この絶望的な突入作戦に賭けたのだ。彼は、兵器の無力化は技術によるものだが、人間の動きは止められないと信じていた。


「来たわ、悠人。彼らは、あなたの技術の根幹を狙ってきた。EMP弾よ!」私は焦燥を隠せなかった。通常兵器は無力でも、マナ制御の一瞬の停止は、致命的な隙を作り出す。


 悠人は、その非道な計画を既に予測していたかのように、素早く端末を操作した。彼の指の動きは冷静そのものだった。


「最後の悪あがきだ、綾音さん。彼らは、村人の避難を私が手伝った隙を狙っている。だが、その避難経路こそが、彼らの墓場になる」


 悠人は、コアシステムへのマナの流入口を瞬間的に遮断し、外部からの干渉を受け付けない「自己防御シールド」を起動させた。さらに、特殊部隊の侵入経路となる可能性のある防御壁の数カ所に、新たな迎撃用のマナトラップを展開する。





 特殊部隊員たちは、瓦礫と化した村の周辺を強行突破し、防御壁をかすめるように内部へ侵入した。彼らは熟練の兵士であり、目的地のコア制御ルームに向かって、迅速に移動を開始した。


 彼らが侵入したのは、悠人が村人を地下シェルター空間へ転移させるために使った、偽装されたダミーの入り口の近くだった。


 部隊がそのダミーの入り口に接近した瞬間、周囲の空間が微かに歪んだ。


 突入した隊員たちの目には、突如、コア制御ルームへの明確な通路が現れた。それは、彼らの潜入を誘導するために悠人が仕掛けた視覚的なマナ錯覚トラップだった。


「見つけたぞ! 前進!」指揮官のカマラが叫び、部隊は迷うことなくその通路へと飛び込んだ。


 しかし、彼らが踏み込んだのは、通路ではなく、悠人があらかじめ設定しておいたマナの収束点だった。悠人は、彼らを殺傷することなく、完全に無力化するためのマナを起動させた。


 一瞬の静寂の後、特殊部隊員たちの全身が、まるで強靭なゴムで縛り上げられたかのように硬直した。彼らの意識は正常だが、指一本、呼吸さえも思うようにできない。体中の筋繊維が、悠人のコントロール下に置かれたマナによって、強力に固定されたのだ。彼らは、動けないまま、恐怖に顔を歪ませた。


「無力化完了、悠人。全員、生存。行動不能」私は報告した。


 ほぼ同時に、遠隔地の連邦軍通信が、再び沈黙した。ムアンバ大臣は、特殊部隊との通信も途絶し、全戦力の無力化と作戦の完全な失敗を悟ったのだろう。


 私たちは、朝の光が差し込む防御壁の最前線で、静かに勝利を確信した。連邦軍の飽和攻撃、EMP攻撃、そして特殊部隊の強行突破。そのすべてが、悠人の技術という絶対的な力の前に、無抵抗に屈したのだ。


 ムサ村の戦いは終わった。しかし、この敗北は、ムアンバ大臣という強硬派の権力を完全に崩壊させ、世界に対する悠人の技術の存在感を、絶対的なものとして確立させるだろう。

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