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婚約破棄?良いでしょう、私は救国の乙女なので!  作者: 杏仁
第1章 救国の乙女、戦場に立つ
9/24

9.蠢動

 ソニンク辺境伯の裏切り疑惑はシュネル王太子の心を確かに乱していた。

 王太子でありながら王国の名代として国を守るという責務。救国の乙女という奇蹟にも縋りたい。それを癒してくれたのが今の恋人ルミナス辺境伯令嬢だった。しかしそれも策略のひとつとして自身に近づいていたのだとしたら……?王太子の内心は千々に裂けそうだった。


「シュネル殿下?おはようございます」

「ルミナスか……おはよう……」


 相変わらずの眩い金髪に空色の瞳。ルミナスは美しい。

「シュネル殿下、大丈夫ですか?」

「スタセリタの侵攻のこともあるしな、疲れている。しばらく一人にしてくれ」

「……はい、殿下……」

 そう言って執務室に入ったシュネルをルミナスは見送っていた。その右手の下、太ももに括りつけた短剣をドレスの上から触りながら……。


 ———天馬部隊、詰所

 勝ち戦の宴は三日三晩続いていた。レシステンシアも救国の乙女と持ち上げられ、物理的にも胴上げされて持ち上げてられたり散々な様だった。

「レシステンシア、大丈夫か」

「レオンお兄様、ちょっと疲れました……」

「抜け出すか」

「いいんですか?」

「この浮かれ様だ。誰も気づかん」

「ではお供します」


 レオンお兄様が馬の後ろに乗せてくれる。お兄様の腰にぎゅっと抱きついて、馬は駆けていく。

 そうして着いたのはバスラット伯爵領だった。

「取り戻すことが出来ましたね、レオンお兄様」

「ああ、だが復興はこれからだ。館も修繕しなければ……」

 破城槌で扉を壊して突入したことを思い出して、本当の姿を取り戻すのはまだまだ先になりそうだとすこし沈んだ気持ちになった。

「レオンお兄様……」

「そのだな……お兄様はもうやめないか、子供でもないし……」

「あっそうでした、部隊長」

「あーそうではなくてだな」

 レオンお兄様は照れたように頭を掻いた。

「俺はお前の兄にしかなれないのか?」

「?いいえ、本当のお兄様では無いですけれど、お兄様みたいな存在でしたから……。シュネル王太子の婚約者になってから、碌に会えなくなりましたし、呼び方が幼い頃のままというのは、確かにおかしいですかね?」

「そうか……俺はレシステンシアのことは一人の女性として見ているつもりだ」

「そうですか」

「だからお前も、俺の事をひとりの男として見てくれないか……」

「……はい、お兄様は確かに男性ですね?」

「なにか伝わってない気もするが、まあいいか……とにかくお兄様はもう卒業したい。そういう事だ」

「分かりました、レオン部隊長!」

 レオン部隊長はなにか納得していない顔をしていた。お兄様ではなくて、部隊長。そういうことではないのかしら……。


 そこに早馬に乗って駆けてくる兵士が訪れた。

「レオン部隊長!ソニンク辺境伯が王宮に訪れたとのことです!なんでも捕虜の解放を要求してきたとか」

「ソニンク辺境伯が……。今すぐ王都に帰る」

 そうして、二人きりの遠乗りは終わりを告げたのでした。


 ———王宮、謁見の間


 王太子とソニンク辺境伯が相対している。

「わが娘ルミナスとは仲良くして頂き、感謝の言葉もありません」

「ああ」

「今日は姿が見えませぬが……」

「政治の場だ、下がらせている」

「……それもそうですな。本日はスタセリタ王国から仲介を頼まれましてな、捕虜の解放をお願いしたいのです。もちろんタダでとは、申しません。これだけ用意があります」

 そう言ってソニンク辺境伯は袋いっぱいの金貨を差し出した。

「これで捕虜全員を解放して欲しいとのことです」

 シュネル王太子は袋の金貨を改めて言った

「ふむ、まあ相場か。よいだろう。しかしお前には聞きたいことがある」

 シュネル王太子の目付きが鋭くなる。

「お前がスタセリタの侵攻を手引きしたのではないだろうな」

「……なぜそのようなことを?」

「下から報告が上がっている。スタセリタの軍がお前の領地を通ってバスラット伯爵領に侵攻したのではないかとな。お前が手引きしたのではないか?」

「……滅相もございません!なぜセリエンホルデ王家に忠誠を誓う私がそのようなことをしましょうか!」

 ソニンク辺境伯は汗をかきながら弁明した。

「セリエンホルデ王家に忠誠を誓うと言ったな。二言が無いこと証明して見せよ」

「忠誠の証明など……いったいどのように……!」

 ソニンク辺境伯はさらに汗をかいて王太子に相対していた。

「よい、戯れだ。疾く捕虜を連れて去ね」

「あ、ありがとうございます!捕虜の解放、ありがとうございました!」

 そう言うとソニンク辺境伯はそそくさと謁見の間を去っていった。


「あれは怪しい。やはりレオンの言う通りか……」

 シュネル王太子は独りごちた。

 こうなればルミナスにも警戒しなければならない……。


「ルミナス、話がある。」

執務室にルミナスを呼び寄せた。

「はい、殿下。如何しましたか?」

「お前の気持ちを聞かせて欲しいんだ……」

 ルミナスは音もなくシュネル王太子へと近づいた。



(レシステンシア……)

「女神様!?」

(王太子が危ない、すぐに王宮へ)

「レオン部隊長!女神様から王太子殿下が危ないとお告げです!急がないと!」

「女神のお告げが!?王都はもうすぐだ、しっかり掴まれよ!」

 レオンは更に馬を駆って王宮への道を急いだ。


何とか投稿出来ました。

毎日投稿目指します。明日も12時頃更新です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルミナスが裏切り者だった……!レシスはどうやってシュネルを救うのか、気になります。
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