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アニマる☆エンジェル  作者: けしごむ
9/11

#8『対峙』

 強風吹きさらすビルの屋上で、真っ白な少女は問う。

「さて、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

 対峙するのは、白い髪を長く伸ばし、黒い外套を纏う少女。

 にこやかに笑っている様でいて、どこか感情の抜け落ちた様なそんな表情をしている。

「目的は何?」

 黄色に輝く瞳に赤色を差して、頭上の環もまた、赤く淀んでいる。

 その手に握られた黒々しい槍は、まるであの化け物を彷彿とさせる。

「あの娘はどこ?」

 表情は変わらない。

 感情の読めない異様な雰囲気。

 人として、何か、決定的に欠けている。

「あの娘?誰の事かな」

 張り詰めた空気が心拍を加速させていく。

「あなたも知らないの?うーん……」

 人差し指を立て、唇に当てる。

 首を傾げて、何やら考え込んでいるようだ。

 見開かれた目は少女を見たまま外れない。

「まぁ、いっか。それじゃあ……」

 吊り上がっていく口角。

 まるで獲物を見る様なその視線が徐々に緩んでいく。

 瞬間、耳元を何かが通り過ぎる。

 限界まで引き延ばされた感覚の中、まるで目で追うことが叶わない圧倒的な速さ。

 数瞬の間を置いて、漸く異形の槍が耳を翳めた、そう理解する。

 視界に赤い飛沫が舞っていく。

 臨戦態勢を取り、万全の準備をした状態での攻撃だった。

 避けられないはずがない。少女は思う。

 現世代最強と謳われた精霊術師を置き去りにし、次撃が脇腹を薙ぎ払う。

 おかしい。そんなはずはない。少女は思う。

 外壁に身体がめり込んでいく。

 まるで、攻撃を放つその前、既に攻撃が命中しているかの様なそんな可笑しな感覚。

 壁を突き破り、建物の中に転がり入る。

 強力な亡霊と対峙した時、似たような感覚に陥ることがあるが。

「あれ?まだ生きてるんだ」

 粉塵の中に赤色が伸びる。

「他の子は皆———」

 内臓を幾らかやられたようだ。まるで声が出ない。

「丁度いいや。君も連れて帰ろうかな」

 赤みを増していく瞳が少女を見下げる。

 身体から漏れ出す光が勢いを落としていき、まるで灯の様に揺らぐ。

 槍を床に突き刺して、表情一つ変えずに、手を伸ばす。

「君も奇跡を宿しているみたいだから」

 黄色に輝く瞳をじっと見つめる。

 伸ばされた手が少女に触れようとしたその瞬間、視界から少女が消える。

 空中には幾重にも分断された腕が舞っている。

 見開かれた赤い瞳が、漸く感情の様なものを覗かせる。

 見据えるは、一層白く、まるで燃える炎のような光を纏う少女の姿。

 満身創痍だったはずの少女が己の腕を切り刻み、その爪は既に自分の命を奪える距離まで迫っている。

 おかしい。そんなはずはない。少女は思う。

 私に追いつけるはずがない。だって———。

 瞬間、凄まじい閃光が世界を塗りつぶす。

 放たれた斬撃は、周囲のビル群諸共すべてを引き裂いていく。

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