表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅の記憶 さすらい雲   作者: 報苔京
2/68

記憶の中の旅日記「精霊の囁きが聴こえる」

 国宝・姫路城の北西にある霊峰・書写山は、四季の花々や鳥類、昆虫類の豊富な自然の宝庫らしい。

 この山には自然界の精霊が棲んでいるのだという。

 その山全体を庭園にする円教寺は、966年、性空上人しょうくうしょうにんによって開かれた天台の古刹で、西の比叡山とも呼ばれてた。

 ロープウェイを降りると、そこは確かに深山幽谷の世界だった。

 まさに「何か」を心の奥底が感じ取ってしまうのだ。

 参道を登りきると、京都の清水寺に似た摩尼殿、重要文化財の大講堂、食堂などが続き一見の価値があった。

 また、この寺は随分昔の映画「ラスト・サムライ」のロケ地としても有名。

 トム・クルーズと渡辺謙が心を通わせ、武士道に共感するシーンなどはここで撮影された。

 平日の昼間、清閑な参道をゆっくり散策していると、大樹や大気に宿る不思議なその「何か」に触れている気がした。

 さて、なぜこの地がロケ地になったのか。

「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィック監督は、滅びゆく武士道をテーマにした映画のロケ地を時間をかけて探していた。

 紹介を受けこの地に降り立った監督は、畏敬の念を持ち、即座にロケ地にすることを決めた。

 撮影に訪れたクルーズも何度も「ビューティフル」とつぶやいたらしい。

 役作りに没頭していたクルーズもこの山のもつ「何か」が、武士道のテーマにも通じると確信し、その「何か」と共鳴することができたのだろうか。

 映画が公開されると参拝客も急増。

 若い女性のグループも目立ったらしい。

「映画ロケ地提供」という試みは上々の効果があったようだ。しかし不思議なことに、この山にはそのラストサムライもトムクルーズも痕跡ひとつ残ってない。

 当たり前ではあるが観光地ではないからなのだ。

 ロープウェイのガイドにそのことを尋ねた。

「せっかくの宣伝効果、もったいないよ」

「うーん、そうですねぇ。ロープウェイにも乗ったんですよ。ちょうどそこに座ってましたよ」

 笑いながらこちらを指さされ、思わず腰を浮かせてしまった。

 

 夜、姫路城の見えるレストランで夕食をとった。

「何か」に触発されたのか、ライトアップされた姫路城、まさしく白鷺のように飛び発とうとしている気がした。

          (兵庫・姫路、陽春)


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ