第27話 誘拐
ーーそれから歩き始め数十分が経過したぐらいの頃、俺の猫イヤーはある音を聞き取った。
「はは、今回は大量だぞ!こいつら獣人を売り捌けば暫くは遊んで暮らせる」
「あぁ、冒険者で言うところの一攫千金だな!くくく……」
その内容は正に誘拐って感じのもので、俺は気になって歩みを止める。
「ん?どうした?」
「いや、向こうの方から誘拐っぽい声が聞こえたんだが……」
「あぁ、どうやらそのようだね。だが、この世界ではありふれた事だ。あまり気にしなくてもいい」
アランは辛辣な返答をするが、言ってる事は正論なのだろう。だが、嫌な気分になるのは嫌だし、今の俺には助けられるだけの力がある。だから当然俺は、助けに行くことに決めた。
「……行くのかい?私が言うのも何だが、つまらない感情で動くのは少し頂けないね。いくら助けてもこういうのは減らないよ」
「そんなのは分かってる。俺は馬鹿だからな。気分が悪くなるのは嫌だし、目につく範囲でやるだけだよ」
いつまでも喋ってる訳にはいかないので、俺は地面を蹴り声の聞こえた方向へと走り出す。首にはルイが寝ててマフラーみたいになってる為、落とさないように注意する。
バッ!
そして草むらを飛び出すと、そこには牢付き馬車があり、御者台には数人のおっさんが座っていた。
恐らくは、あの牢の中に獣人たちがいるのだろう。
「あ?何だお前……って、結構な上玉じゃねぇか!これはかなりの値段で売れるぞ!」
「ははは!やはり今日の俺らはついてるな!運命神様のお陰かぁ?」
そしてそのおっさんずは、ニタニタしだしてて少し気持ち悪い。
「一応聞くけど、お前たちって誘拐犯でいいんだよな?」
「誘拐犯?失礼だなぁ……奴隷商の仕事人って言ってくれよ」
「そうだぜ、俺らはただ明日の飯の為に勤勉に働いてるだけさ」
ーー何か色々言ってるが、要は誘拐犯で合ってる訳か。ならば気兼ねなくいけるな。出力は少し弱いぐらいで……こう!
「じゃあ、おじさんと一緒に行こu……」
ぱたり
おっさんずは威嚇により一斉に倒れる。レベルは平均35ぐらいだった為、耐えられなかったようだ。
「やっぱ使えるぅ……」
威嚇の便利さに軽い感動を覚えた俺はすぐにハッとなり、馬車の牢に掛けられてる布を取る。
「ヒッ……」
「え?」
「これは一体……」
牢の中には5人の獣人が入っており、その反応は様々だ。
「もう安心だぞ。俺は正義の味方キャットマン……ごめん今の忘れて」
メシ……
自分で言ってて恥ずかしくなり、気晴らし代わりに牢の鉄格子を手で強引にこじ開け出口を作る。
「は!?」
「うわぁ……」
「っ……!?」
「ねぇ、その反応はちょっと酷くない?」
さしもの俺も、助けたというのにドン引きされたのには傷ついた。
「ひ、ご、ごめんなさい!殺さないで!」
「いや殺さねーよ!もう大丈夫だから落ち着いて……」
皆んなはきっと精神的に辛かったんだろう。だからこういう反応をするのも仕方ない。それが理由であってくれ。
「終わったようだね。この人間たちの処理はどうしたい?」
観戦していた様子のアランは、おっさんずに指を向けてこちらへと歩いてくる。
「あぁ、一旦街の方に戻って引き渡せば……」
「どこに悪魔の目があるか分からない以上、戻るのは危険だ。ダンジョンにいる悪魔を討伐したのは恐らく気付かれている。ダンジョンから近い街は必ず調査の手が入るだろう」
そしておっさんずに対して手をかざした。
「ゆえに、燃やすのが一番だ。この世界では盗賊に人権はないから問題はない。覚えておくといい」
ボォ!
そしておっさんずの体は、アランによって放たれた炎により一瞬で灰になった。
「っ……!?」
「君は、魔物や悪魔は殺せてもこういうのは苦手なようだね。いづれは慣れてもらわねばーー」
何やら物騒な事を言っているアランをよそに、俺はさっきの光景で頭がいっぱいになっている。
「あのー……」
あ、忘れてた。
俺は獣人たちを待たせていることに気がつき、吐きそうになっているのをグッと堪え疑問に思った事をアランに聞く。
「危険だから戻っちゃ駄目なんだよな……だったらさ、あの街は大丈夫なのか?」
「問題ない。気がつかなかっただろうけど、あそこには私以外の神が張った対悪魔用結界がある。さてーーー」
アランの手のひらから光の蝶々が飛び出してくる。
「こいつについて行くといい。君たちの帰る場所を示してくれる蝶だ」
「あ、ありがとうございます!」
「このお礼はいつか必ず……」
そして獣人たちはお礼をして、光の蝶たちについて行き自分たちで帰っていった。
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