第92話 ほどほどにしてほしいもんじゃ
指の痛みも取れたので、書けました。
やけどをした直後に、あまり痛まないからって、油断すると、ひどい目にあいますね。
とにかく、冷やしまくるのが、いいのかもしれません。
「これは、『決闘』しかないわね」
いつのまにか、お后さまが、登場していた。
なにやら、物騒なことを言い出している。
「そんなに、『貴族』の名誉を大事に思うなら、実力で示しなさい!」
それに、
「あなたもよ、ジュンくん!」
「はい…?」
きゅうに、オレに振ってきた。
お后さまは、毅然として、言い放った。
「『名誉』を傷つけられたのよ!シャルのためにも、『決闘』で決着をつけなさい!」
いつになく、強気だった。
「け、決着って…?」
何をしろというのだろう。
すると、
「あー、そうだったわ」
お后さまは、何かをふと思い出したようなそぶりで、
「『名誉』を守るための『決闘』よ」
「学生だって、『命をかける』のは当然よね……学院長?」
「そ、そうじゃの…」
いつのまにか、学院長も来ていた。
きゅうに、自分に話を振られて戸惑っている。
「ここは、お后さまの言うとおりだね」
「この国ではね。『名誉』って言葉は、それほど重いものなのよ」
賢者のばあちゃんまで、いた。
こうして、本人同士の意思は、まったく無視されたまま、一週間後に『決闘』と、決まった。
何やら、ドーム球場の数倍もあるような、闘技場で行うようだ。
最後に、シャルママが、黒板の前に転がっている生徒を見ながら、クロードたちに告げた。
「五対一でも、かまわないのよ…、いえ…」
そう言って、首をかしげながら、
「ジュンくんが、砂漠で、戦ったとき…」
「『炎のゴーレム』が五体のほかに、『デザート軍』って、どのくらい居たかしらね…?」
誰に、ともなく尋ねた。
「2万人ほどと、おじいさまは言っていたのじゃ」
シャルが、律儀に応えた。
では…さらに、
「2万人くらいまでなら、助っ人も認めましょう」
「「「「「「「「ええーーーっ」」」」」」」」」
クロードたちまで、叫んでいる。
ここで、さすがに、リリアーヌ会長が、口を挟んだ。
「そ、それは、ジュン殿のほかに、味方の軍勢がいたのではありませんか?」
「さすがに、『1対2万』というのは…」
ひどすぎる…と言いかけた。
が、
「あら、何を言ってるの、ジュンくんは…ね」
さらに、『サンドワームの群れ』も含めて、
「ぜんぶ、ひとりで、片付けてくれたのよ」
なし崩し的に、決闘の日取りまで決められて、クロードたちは、真っ青になって、引き上げていった。
『名誉』をかける以上、助っ人はOKでも『代理』は、ありえないらしい。
それにしても、
お后さまも、そうだけど、学院長や、賢者のばあちゃんまで、いったい何だって、この教室に来たのだろう。
不思議に思っていると、学院長たちの後ろから、聖女セシリアと、元聖女のイレーヌさんが、姿を現した。
学院長たちが連れてきてくれたらしい。
「聖女たちも、入学すると聞いて、すこし心配になってね」
教室まで、ようすを見に行ったのよ。
賢者のばあちゃんが、気をつかってくれたらしい。
「わしも、気になってのう…」
学院長も、元聖女のイレーヌさんのところに、行ってくれたらしい。
「案の定、男子学生に、囲まれて困っておった」
あきれた連中じゃ…、言いながら、ため息をついている。
「まあ、まあ、まあ!ほんとに、たいへんだったのよ」
イレーヌさんも、ややうんざり気味だ。
「でも、私も、イレーヌ姉様も、さいわいなことに、腕をつかまれたりとかは、されませんでしたから…」
そう言いながらも、セシリアも、疲れたような顔をしている。
オレは、あえて何も言わなかった。
余計なことは、言わないに限る。
それにしても、リリアーヌ会長が、不思議そうに言った。
「ジュン殿は、シャルロット殿下には、シルバーウルフを二頭も護衛につけていたのに…」
「聖女たちには、何の手も打っていなかったのかな?」
くっ、
なかなか鋭い生徒会長だな…
「りりちゃんも、なかなか鋭いことを言うようになったわね」
賢者ばあちゃんが、よろこんでいる。
やけに、なれなれしいが、親しいのだろうか。
「ふむ、くわしいことは、ワシにもわからんがの…」
聖女二人には、何やら見たこともない『雷属性』の術式が組まれておる気がするのじゃが…
「はい!」
セシリアが、元気よく応えた。
「もし、誰かが、ムリヤリ私たちの腕をつかむようなマネをしたら…」
「体がしびれて、半日くらい動けなくなるだろうって…」
「「「「ええっ…!」」」」
みんな、あきれていた。
セシリアちゃん、正直すぎ…
「自分の大切な人を、守りたい気持ちはわかるんだけど…」
「ほどほどに、してほしいもんじゃの」
賢者ふたりで、ぼやいていた。




