第48話 最下層のボス
こんなお話ですが、続けて読んでくださってる方もいらっしゃるようで、とても、励みになります。ありがとうございます。
勢揃いしたオークたちに見送られて、オレたちは最下層へと転移した。
最下層は、まったく規模が違っていた。
ボス部屋の前の通路ですら、都会によくある片側三車線の幹線道路ほどもあった。
さらに、天井は、ドーム球場以上の高さがある。
まわりが大きすぎて、ボス部屋の前に立っていると何となく心細くなりそうだった。
ボス部屋の両開きの扉もあり得ない大きさで、これなら映画で出てきた『キン○コング』でも余裕で通れそうだった。
そもそも、コレって、人間の力で開くんだろうか…
ああ…、オレもう、ニンゲンやめた感じになってるから大丈夫なのかもしれないなあ…と、わずかに悲哀を感じていると、
「…ジュンくん」
セーラの、くぐもったような声が聞こえてきた。
オレの気持ちを察してくれたのだろうか。いちおう女神だし…
「…セーラ、オレは…」
大丈夫だから…と、セーラを見ると、
うすく目を閉じたセーラが、ちいさなくちびるをつきだしていた。
くちびるには、『ポッ○ー』の端をくわえている。
「そ、そっちの端から、食べても……いいんだ…よ」
もごもごと言いながら、頬をぽっと染めた。
オレは、その『ポッ○ー』の端をそっとくわえた。
それから、きゅっ!…とセーラの口からひっこぬくと、ぽりぽりぽりぽりぽり…一気に、全部食べた。
「あああ…!ひどいよジュンくん!」
「せっかく、励ましてあげようとおもったのに!」
また、うずくまって泣き真似を始めている。
『レオタードエプロンによる疑似新妻トーク』以来の、すすりなきポーズだった。
「ね、ねえ…、あれって『間接キッス』…?」
「そ、そうなりますよね…」
聖女セーラと、妹クレアさんが、ひそひそ話していた。
「セーラちゃんのお陰で、緊張もほぐれてきましたニャ」
結果的にですニャが…と、ライムが言った。
「そ、そうっすね」
「そろそろ、『最終決戦』といくか!」
ケンイチさんが、みんなに気合いを入れた。
まあ、また『土下座』かもしれないが…
それにしても…
「これ、どうやって、開けるんっすかね?」
ケントさんが、荘厳な上にも荘厳なボス部屋の『扉』を見上げた。
しかたがない…ここはオレが、人外パワーで…と扉に近づくと、
ギギギギギギギギギギ……
扉が、ゆっくりと開いていった。
「これ、魔道具ですね」
聖女セシリアが、片手で軽々と、扉を押しあけていた。
…………
オレたちは、完全に油断しきっていた。
ゴオオオオオオオオオオオーーー
少しずつ開いてゆく扉の向こうから、オレたちの背丈をはるかに越える大きさの炎の渦が、すでに目前に迫ってきていた。
「くっ!」
「ジュンしゃま!防御結界…」
「だめだ!もう、間に合わねえ!」
……………
ドゴオオオオオオオオオオーーーーン
すさまじい爆発音が、あたりいちめんに轟いた。
……………
……………
……………
「ま、まだ、生きてるの?」
「ダメージは、……ねえ…か?」
オレたちは、おそるおそる顔をあげた。
すると、ボス部屋の扉に片手をかけながら、真っ青な顔をした聖女セーラがいた。
「ご、ごめんなさいっ!」
涙目になりながら、胸のあたりで、ぎゅっと手を握りしめている。
どうやら、途中で、とっさに扉を閉じてくれたらしい。
『片手でらくらく』の扉で助かったようだ…
「不意打ちとは、やってくれるじゃねえか…」
ケンイチさんが悔しそうに言った。
「ちょっと、油断しすぎたわね」
久しぶりのアンナさんのセリフだった。
「仕切り直しですニャ」
ライムも、ひさしぶりに、オレの頭をぽんぽんと肉球でたたいていた。
……………
「じゃあ、今度こそ、行くっすよ!」
ケントさんが、慎重に扉を押した。
オレたちは、ぜんいん身構えた。
こんどは、強力な結界も張ってある。
ギギギギギギギギギギ……
……………
扉の隙間から部屋の中が見えてくると、フレンドリーな声が聞こえてきた。
「ようこそ、いらっしゃいました」
東京ドー○がいくつか入りそうな、広大な空間だった。
その正面のかなり向こうに、翼を広げたドラゴンが、その巨体を宙に浮かべていた。
ゆったりと翼をはためかせるたびに、あたりには強風が渦巻いた。
銀色に輝く、『メカドラゴン』だった。
その機械の眼をぎらりと光らせながら、ドラゴンは静かに言った。
「さあ…」
……………
「正々堂々、戦いましょう…」
「「「「「「お前が言うな(ニャ)!」」」」」」
みんな、マジでキレていた。




