第33話 「ほんとうに、おらんのう」
明日は、月曜なので?、すこし早めに、投稿しました。
「ジュンくんはね!おっ○い耐性が低すぎると思うんだよ!」
聞き慣れない『新語』を発するセーラと手をつないで、まだ早い朝のミルフィーユの街中を歩いていた。
ちょっとふくれているのか、セーラはそれきり口をきこうとしない。
三つの条件がそろうと、セーラは世にも美しい人形となる。
ひとによっては、『至高の美少女フィギュア』と称えるにちがいない。
その三つとは…
①「食べていない」
②「しゃべっていない」
③「動いていない」
…である。
とくにいまは、イレーヌさん二十歳というちび女神をかまいたくてうずうずしている元聖女が増えたので、さらにビジュアルを一新していた。
いぜんのセーラの背面ビューは、体を隠してしまうほどの長い金髪でふんわりと覆われていた。
しかし、いまは、イレーヌさんに結んでもらったのか。ツインテールである。
しかも、チェック柄のリボンで髪を結び、星の形をした髪留めで飾っていた。
…というわけで
むくれているお陰で、ほぼ『至高の宝玉』と化したセーラと、手をつないで歩いていた。
「ほんとうに、一匹もおらんのう…」
第一城門から、外に出たレギンさんがしみじみとつぶやいた。
「あの魔物の大群は、どこに行ったのかしら?」
「まったくだぜ、城壁は、ほとんど魔物に埋め尽くされてたってのに」
「まったく…、すさまじいとしか、言いようがありませんね」
小鳥のさえずりさえ聞こえてくるあたりののどかさに、誰もがあきれていた。
ちなみに、ふつうの動物は、魔力を感じ取る能力が低いのか。オレから逃げ出したりはしない。
「『魔物の森』でしたかニャ…。あの奥で、ひっそり隠れているようですニャ」
ライムが、森を、肉球で指して言った。
その森も、ここから眺めている分には、おだやかなものだった。
「だいいち…。王都からここまで来る間に、魔物は三匹しか見てないんっすよ」
「ああ、その三匹も、ワケアリばかりだったしな」
そのことばに、ぴんと来たのか。
「まあっ!そのうちの二匹が、この子たちだったのね!」
そう言ってウルフの頭をなでなでしながら、イレーヌさんはじっとオレを見ている。
何か尋ねたいようだが、彼女の胸のあたりを睨みつけているセーラに気を遣ってくれたのだろう。いまは、黙ったままだ。
いずれにしても…
「ジュンしゃまがいなくなれば、また、もとに戻ってしまいますニャ」
だから…
「今のうちに、何か。手を打っておきたいですね」
聖女セシリアが、言った。
「そりゃあ、もちろん…。いろいろと頼みたいことはあるのじゃが…」
「しばらく、ここにいてもらうことになっちまう」
「よろしいのですか?」
領主のアルベールさんをはじめ、Sクラス冒険者の四人は意外にも遠慮深いひとたちだった。
聖女セシリアも、不安そうにオレを見ている。
「セシリアを守る」と宣言したのは暗部に対してであって、彼女に直接、告げたわけではない。
「はい、大丈夫です。オレも、ここにいさせてもらったほうが、情報をあつめやすいですし…それに…」
オレは、セシリアを見つめながら、ことばをつないだ。
「セシリアさんのこともあるので…」
「おやおや…、よかったじゃないか。セシリア…」
セシリアを後ろから抱きしめながら、エルフのイザベルさんが言った。
ミルフィーユ領の人たちは、セシリアにとっては親戚のような存在らしい。
じっさいに、領主一家は親戚で、アルベールさんの奥さんはセシリアたちのお母さんの妹だという。
セシリアのお母さんは、すでに、他界しているらしいけど…




