第32話 元聖女イレーヌ
きょうは、日曜日ですし、お話もまだ、残ってるので、追加しました。
こんなお話なのに、読んでくださる方がいらっしゃるようで、ホントにありがたいことだとおもっています。
セーラの運転のお陰か、ラリー車なみの高速走行で走り通したオレたちは、夜とはいえまだ早い時刻にミルフィーユ領に到着した。
オレたちが、最初に目にしたのは開け放たれたままの城門だった。
「開いたままとは、物騒っすね…」
「そうね、おかしいわね」
「何かあったのかもしれねえ!急ぐぜ!」
念のため、城門の前で車から降りた。
この魔道具の車内が、最も安全なのは言うまでもない。
女性陣は、車に残ってもらうことにした。
さらに、護衛として、頭以外の暗部の男たちにも残ってもらった。
オレたちは、あたりの気配を探りながら、慎重に城門をくぐって街中へと入っていった。
ひとけのない街は、明かりもなく闇のなかで沈黙している。
「ずいぶん、暗いっすね」
「魔物のことを考えれば、うかつに灯りなんぞは点けられねえんだろう」
「待ち伏せの気配は、ないようでゴザルな」
こういう時、闇が得意な暗部の頭は頼もしかった。
ケンイチさんもケントさんも、以前、この街には来たことがあった。
ふたりの案内で、街路を登って行くと広場のような場所が見えてきた。
「…っ!」
とつぜん、頭が腕を伸ばしてオレたちを制した。
「…だれか、来るようでゴザル」
すると、二匹のシルバーウルフが駆け下りてきた。
闇のなかでもぼんやりと光りを帯びているので、すぐにわかった。
「ウルフたちっすね」
「あいつら、ずいぶん先に到着してやがったんだな」
みなでほっと息をついていると、ウルフの後ろから人の足音も聞こえてきた。
「…ウルフちゃん、だれかいるの?」
若い女の声だった。
暗がりで、姿は、よく見えない。
しかし、とつぜん、女が足を止めた。
「…ま、まあっ!こ、これはっ!」
何かに、驚いたようだ。
「…ま、まさか…よねっ!」
もう、何なのか。気づいたらしい。
「…で、でも、…こ、この魔力の波長は…」
聞き覚えのあるワードに、ひどくいやな予感がした。
あたりは、真っ暗で、未だに姿は見えない。
「やっぱり!…ま、まちがいないわ!」
いや、たぶん、まちがっているだろう…と、オレは思った。
「…さつきちゃんが、来てくれたのね!」
「…さーーーつきちゃあああああああああーーーんっ!」
感極まった女の声が聞こえる。
「ふにゃ?」
ゆいいつの誤算は、ライムがおねむ状態だったことかもしれない。
しょせんは、子猫なのだ。無理もなかった。
セシリアに似た美しい女性の顔が、いっしゅん目の前に現れた。
…と、思ったときには、すでに地面に押し倒されていた。
「会いたかったよおおおおおおーーーーっ!」
押し倒したオレの上に、馬乗りになった美人はそのままオレに抱きついてきた。
ぎゅうううううううううううーーーーっ!
セシリアを遙かに凌駕するやわらかでふくよかなツインの肉塊が、オレの顔を挟み込んだ。
ま、まさか…、下着を…つ、つけて…いないの…か…
その生々しい感触を堪能するうちに、オレの意識は落ちた。
おそらく、一時的な酸欠だったのではないか…と、今は思う。
………
「ふにゃあ…、このシ○クロ率は…」
ライムが、ごしごしして眠い目を開けたときには、すでに手遅れだった。
………
「にゃ…?」
………
「ま、またにゃのか!にゃああああああああああーーーーーっ!」
………
その夜、
ふたたび、
世界は、震撼した。




