魂の辿る場所!
「蝶野くん…… 」
あぁ神様か……
「…… 随分とドライじゃのう…… 」
なぜか神様の所に呼ばれた?俺、死んだ?と思っていたらいつもの白い神様の部屋ではなかった。
「ここは…… ? 」
俺は真っ白い煙で作ったような、不確かな揺めきを繰り返す回廊に立っていた。
モンサンミッシェルのように中庭のある回廊をキョロキョロと見る。
「蝶野くん…… 今回は失敗したのぅ…… 」
神様が悲しそうに俺に話しかける。
「…… はい…… すみません…… 皆を守る事が出来ませんでした。人もたくさん殺してしまい…… あの…… やっぱり俺は死んだんですか? 」
神様は腕を前で組み、首を左右に振る。
「いや…… 死んではおらんよ…… 」
「…… そう…… ですか…… 」
なんでここに来たんだろう…… ここは何だろう……
「ここはのぅ…… ホレ…… 」
俺の心を読んだ神様が、答えだとばかりに中庭を指差す。
先程まで白い煙が湧いていた場所に上空から光が射してきた。
煙は次々と光と合わさり人の姿に変わる。
「あれは…… 」
「殺された獣人達の魂じゃよ…… 」
次々と煙から人に変わる…… 野獣国で出会った事のある人々…… 宿屋の主人…… 孤児院の子供達……
そして国王……
「国王! 」
思わず大声をあげると国王は俺を見て驚く。
「あらぁ!シノさんやないですか…… シノさんももしかして…… 」
「いえ…… 違います…… 俺は神様に呼ばれてここにいます」
国王は隣にいる神様を見ると深々とお辞儀をしてからまた俺を見る。
「道理で! シノさんの力が規格外なんは神様の使徒さんやったからやねんねー? いやー死んでから神様なんて、おらんと思って生きてきたのに…… ホンマお恥ずかしい」
フワフワとしたいつもの国王につい泣いてしまう。
「父さん! 」
「おお! 王子! グチャグチャにされたのに綺麗に元に戻してもうたなぁ…… よかったなぁ…… 」
国王は王子と泣きながら抱き合うと空間に白い煙になって溶けていった。
他の獣人の魂も獣人同士で話したり笑ったり……
子供は一緒に笑って走り…… 空間に消えていく。
小さい子を持つ母親はギューっ…… と愛する子供から離れないように抱きしめているが、消える瞬間には魂が別々になり母親の泣く声と、何が起こったか分からず笑う子供の声が消えて無くなる。
涙が流れて止まらない…… 俺は獣人達をちゃんと助けられたはずだ……
「神様…… 獣人達はどうなるんですか? 」
「…… 殺された魂は全て記憶を消されて来世に行く事になる。寿命や自分で選んだ死は天国か地獄に行く事になるかのぅ…… 」
なら獣人達はどこかで生まれ変わるのか……せめて良い来世をと俺は手を合わせ祈る。
「さて蝶野くん、彼らの魂に会わせたのは意味はあまりない…… 会いたかっただろうなぁ程度じゃ」
「かなりユルイ理由をブッ込んで来ましたね!? 」
涙を拭いながら、なんとか笑う。
「それでな一応、今回の事で蝶野くんが地獄に行く事は無い…… あまりにも敵の思想が神に背いておる。地球でいうならジャンヌダルクも戦争をして戦ったが地獄には落としておらん」
それを聞いてホッと安心する。
「気にするなとは言わん…… だが前向きに生きてもらえたらワシも楽しい」
「エンターテイメントじゃないですかー! 」
ふふふと笑い合っているとユルユルと視界が回る。
神様の空間での滞在が終わるんだろう。
「あ! そうだ神様! もっと頑張りますから次は天国の嫁さんに会わせてくださいよー! 」
おお! と神様が手を叩く。
「蝶野くんの地球での伴侶は来世で元気にしとるよーー! 頑張って魔物を倒して楽しく旅をしなさいなー! 」
神様はいつも元気だなぁ……
俺は目を瞑りシノの肉体に戻る感覚を覚える。
────あれ?
………… 蝶野くんの地球での伴侶は来世で元気にしとるよ!
────あれ?あれ来世?嫁さんは…… 殺されたのか?
★☆
パチリと目を覚ますと、辺りはすっかり夜で美しい星々が空にあった。
────…… 泣き声が聞こえる
切なく泣き続ける声は王女だった
王女は月を見上げて大声で泣いている。
いつから泣いているんだろうか声は枯れてしまっている。
「王女…… 」
「ダーリン…… 殴ってええか? 」
王女は俺の胸をポコポコと泣きながら叩く。
「何でウチだけ助けたんや…… 何で死なせてくれへんかったんや……」
王都から脱出した時に瞬間移動で辿り着いた場所は、王都を見下ろせるような山の中腹だったようだ。
王女の肩越しに広がる王都は、王子に埋められた魔石の爆心地からほとんどが消えて無くなっていた。
誰も彼も、家も城壁も全てが綺麗に無くなっていた。
「ウチ…… なんも無くなってもうたよ…… なんも…… 」
王女は俺を叩くのを止めて震えて泣くだけになり、その頭を撫でるしか俺には出来なかった。
「ダーリン …… もう王女って呼ぶん止めて…… 国が無くなったのに王女や言われたら…… 辛いだけや…… 」
「わかったよ…… アイ…… 」
★☆
アイが泣き止んでから瞬間移動で王都だった場所に戻る。
なだらかな坂になっている所、そこに井戸があったはずの穴にその面影を感じるが…… 全てが原野に変わってしまっている。
「おーい! シノ様ー! 」
あれ? 素っ頓狂な声が聞こえたような気がする。
「シノ様ー! 何で無視するんじゃー? あれ? ワシ死んだ? もしかしてゴースト? 」
うひゃーうひひと俺に何かしようとするワルフにラリアットをする。
「ブペッ! シ…… シノ様!? 」
「何で生きてんの!? 」
「あっ! 感じるわるーい! …… ワシも死んでた方が良かったかのぅ…… グスン…… 」
いや…… 生きてて嬉しいけど、もう少し死者を悼もうや!?
ワルフはずっと穴に隠れていたらしい。
光魔法が暴走して爆発した時も穴にいて、俺が嫌がらせでかぶせた岩が重しになりギリセーフだったんだとか。ギリギリって…… なんだよギリセーフって……
「オッチャンは生きてたんか…… ホンマ良かったなぁ…… 」
「おお! 王女様も生きてなさったか!他の人達はどこにおるんじゃ? 腹減ったのぅ! 」
アイの表情が曇り、俺はワルフに再度ラリアットをした。
地面を滑るように吹き飛んだワルフを見て俺は、「何でコイツこんなに運がいいんだ? 」と呟いた。
気絶したワルフは放って置いて、俺は土魔法を発動し10メートル程の十字の墓を建てる。
「今はこれだけしか出来ない…… アイごめんね」
「ううん…… ありがとう」
アイはまた泣きながら、墓に跪き国民の冥福を祈った。
さて野獣国の現状確認に敵兵が来る前に逃げないとな……




