尻の恨み!
─────何気に忙しい冬が終わり春になった。
この世界では、多くの国での文化で春夏秋冬どの日に生まれても誕生日は春の日と統一されている。
一部の王族だけが秋の収穫期に誕生日に設定されている豊穣というプラス要素を王の威厳に足したいというイメージ戦略かな?
なんて事はどうでもいいか、つまりだね俺は6歳になった。
「みんな用意はいいか?」
ゴツい父さんが家族全員に確認する。
冬に作った新たな村の娯楽は雪が溶けて交易が始まった途端に村に訪れる隊商に買われる事になった。
そこから爆発的に各地に広がるには時間がかからなかった。
つまり村が潤っいその立役者となった我が家に大金が転がり込んだのだよふふふん。
ならば!ならば!これ幸いと雪も解けた事だしキュレネの自然属性が何かを調べる為に近くの街に旅行に行く事になった。
街に行くだけで旅行だぜ?そりゃあ娯楽に飢えるわなぁ……
…………
………………
「なによ?シノ?なんで母さんをじっとり見るのよ?」
「母さんが旅行に行く為にキュレネをダシにしているのはわかってるよ!
でも言わないよ!ボク子供だからぁ!」
「声に出てるよ」
父さんが苦笑する。うん分かってる。嫌がらせだからね!
なんか微妙な空気になったけど言いたい事は言えたから俺は清々しい気分で父さんが借りてきた馬車にササッと乗り込む。
「母さんなにしてんのぉー?旅行いかないのぅー?」
「しばく!!」
真っ赤になった母さんが馬車の奥にに俺を追い込むが、キュレネをダシにした事が図星だっただけに俺を叩く事も出来ずに「むーっ」と唸っている。偉いね自制心があるね、でもね、
「俺の勝ちだね」
パーンとさすがに叩かれた。
親も大変だねぇ。分かってるならするな?いえいえ、両親がいる生活を満喫しておりますよ。
★☆
はぁ…… 尻が痛い。
本当に痛い。
前世の仕事で、電池がビチっと詰まった箱を持ち上げた時に痔になった事がある。
どう座ってもとにかく痛いんだよね。再発しやすくなりやがるし…
せっかく新しい体なんだから痔にはなりたくない。
話が逸れたが馬車って揺れる揺れる!グラッグラ!
普通に話していても不意に来る悪路に差し掛かると話すのもムリなぐらいに揺れる。
しかもね、座面が板なんだ。ニスも塗っていないからザラザラ…… 座っているだけてズボンが擦れ、ついでにと嫌な感じで肛門が擦れて痛い痛い…… 板ずりキュウリか俺の尻は……
両親は早々に荷物にもたれかかり横になっている。
さすがこの世界の元冒険者だ旅慣れている感じ。
キュレネは母さんが抱きしめて馬車の揺れを軽減。寝息まで立てている。
「……父さんなんで言ってくれなかったの?」
尻をさすりながら意味のない苦情を父さんに言う。
「いや母さんに止められて…ごめんね?」
父親に哀れな目を向けられる6歳児童…… 辛い……母さんとふと目が合う。
「ふふん」
……本当にふふんと笑いやがった!
母親だろ?最初におちょくった事ぐらい許してくれよ!
幌馬車内から雇われの御者さんを見るとちゃんと座布団みたいなのを敷いてやがる。
この馬車でアナルダメージ俺だけかよと思うと段々と腹が立ってきた!よっしゃ!
───────ドンっ!
「キャッ!」
「わっ!」
念動力で馬車の車輪を少し持ち上げて落としてやると見事に母さんの頭が馬車の壁にぶつかる。
「すみませーんなんか…… 岩踏んだみたいです?」
御者さんが謝ってくる。すみません俺の超能力のせいなんです。
「あらあら母さんたらオデコ赤いよぅ?」
ニヤニヤと言うと母さんは涙目で悔しがる。いやー超能力は本当に便利ですわー。
キュレネは大丈夫…寝てる?神経太いなぁ…。
睨んでくる母さんを無視するように俺は馬車の後ろから移り行く景色を眺めた。
早く街に着いて下さいお願いします……
少し超能力で尻を浮かしながら俺は強くそう願った。