スパイクって男の子ならテンションあがるよね?
野獣国の王城は…… 王城? と疑問に思うぐらい簡素な造りだった。
ここが!我が国の城です!王様がいます!…… と言われても初めは信じられなかった。
兵士が「こちらへ…… 」
「こちらへ…… 」
そう言いながら王城の奥へ、奥へ、と案内するので、うわぁ…… 地下牢とかじゃないだろうな…… と怖がっていると、なんと会議室のように簡素な、兵士曰く玉座の間に案内をされた。
これは…… 厄介後フラグか!?と少し身構えていると、椅子に座る男が立ち上がって俺に握手を求めてきた。
「あんさんがシノーンでっか? 自分はこの国の王でマカミっていいます。」
「え!? あ! はいシノです」
いやー王様がフランクでビックリした!
こんなとこに関西弁の獣人さんがいるとは……
会議室のような部屋には事務的な机があり、その机を挟んで向かい合って座っている。
…… その事務椅子が玉座…… なのか?
「ひとまず、おおきになシノさん」
「うぇ!? 何がでしょうか? 」
国王が頭を下げて礼を言う…… なんて気楽な国なんだ!
「孤児院の事ですがなー! 」
「ついさっきの話なのにもう知っているんですか!? 」
あまりの情報の早さに驚くと国王は大声で笑う。
「すんませんなぁ…… 人族が王都に来た時には一応、監視をつける事になってますんや!怪し無かったら監視は解くんでっけど…… シノさん飛びはりますしー!消えはりますしー! 」
うわぁぁぁぁ見られてましたがなぁ!
「いやぁ飛んでません…… 」
「…… うん、まぁええわ! そいでやね孤児院建て直してくれた御礼に食事に御招待したいんやけど? ええやんな? 」
利用価値アリという気持ちを微塵も隠す気が無い顔で、ニーっと国王が笑う。
狼の獣人…… かな? 歯が鋭いな…… 怖いっす。
「ほなら今晩!」という国王の言葉で強制的に面会は終わった。
断ることは許さない、という事だろうな……
市役所のような王城からトボトボと帰る。
イタタタ…… あぁ胃がまた……
回復魔法を胃痛とシクシク痛みだした腹にかけて王様との夕食の用意を考えながら宿屋に戻った。
「おお! シノ様おかえりなさい」
「テメー! ワルフ! 逃げやがったな! 」
宿屋の食堂で酒を飲んでいたワルフにコブラツイストをかける。
「いたたたた…… いやホント痛いですシノ様! 」
真っ昼間から俺の金で酒を飲みやがって……
「オマエ!本当にオーディーの町に帰れ! ったく! 」
★☆
最高国家権力者から食事をお呼ばれしたなら、もちろんお土産が要るだろう。
まとまった金は持っていないから王様が喜ぶような買い物は出来ないが…… 買うだけ買ってみるか。
簡単なリンゴの詰め合わせでも買って行けば、不敬罪になる虞れがある。マジどうしよう。
お菓子…… カリスト様印の菓子を持ってくれば良かった……
しかし、ないないないでは済まされない。
「あとは…… 魔法のカバンに入っているもので献上出来る物となると……錬金術で何かしら作るしかないな…… 」
王様に渡せるそれなりに格式があるもの…… またはレア品。
一瞬、関西弁を喋る国王にアヘミクレヘンのハリセンを渡したら似合いそうと思ったがダメだ。
「ワルフ何か獣人が喜ぶ武器とかあるかな? 」
ここは腐っても製造業に魂をかけるドワーフに聞くのがいいだろう。
ワルフは半目にならながら、耳垢を小指で穿っては宿屋の窓に擦りつけるという、もう死ねばいいんじゃないかな? という行為を止めて俺の答えを考える。
「獣人はのう…… 身体能力を魔法で強化する戦いを主軸にしとる、素早い動きが出来る物か、真逆に力強い武器を好むじゃろうな」
靴を脱いで今度は、自分の足の指の匂いを嗅ぎ出すワルフ。死ねばいいんじゃないかな?
ったく何だよコイツは…… おいおい嗅ぐなよ!
しかし、汚ない靴だな洗えよ…… そういえばワルフっていつ風呂に入ってた?あ、風俗で洗ってもらったのか…… じゃあ何故もうそんなに汚い?
「靴…… 靴か…… 靴の装備!そうだ!」
やっぱりドワーフは腐ってもドワーフだ。いいヒントをくれた。
部屋の床に魔法のカバンから鉱物をいくつかと、アヘミクレヘンを取り出す
「シノ様…… 何か作るので? 」
「ああ[かんじき]っていう靴の下に履く物を作る。今回はスパイク付きのかんじきだ」
「カンジキ…… スパイク…… 」
ワルフがドワーフらしい仕事モードに入る。
この世界にスパイク付きの靴は無い…… と思う。
出会った人々が履いているのを見た事がないからだ。
獣人の脚力に耐えられて、魔法を通したらスピードを補助出来る……
俺は炭化タングステンとコバルト、炭化チタンさらにアヘミクレヘンを床に並べて考える。
「これでアヘミクレヘンを含んだ超硬合金を作ろう!」
錬金術を使い素材をこねくり回し満足がいくまで混ぜるとアヘミクレヘンを含んだ超硬合金の金属塊になる。
「シノ様…… 」
「うん? 」
「シノ様…… この超硬合金というのは見た事がないですぜ? 新しい金属でしょうか? 何故今まで隠していたんで? 」
ハハハハハと笑って誤魔化す。
いつかワルフの事だからオーディーに帰ったら他のドワーフに喋ベリまくるんだろうな…… ワルフはお喋り魔人だからな……
いつか来る未来の仕事量に眩暈を覚えながら作業を続ける。
かんじきは柔ではダメだ。
強固に靴を覆い固定しやすい物にして…… スパイクは山登りに使うようにアイゼンのタイプに……
イメージを固めてアヘミクレヘンを含んだ超硬合金に錬金術を使う。
七色に輝きアヘミクレヘン超硬合金がグヌヌヌっと形を変化させる。
「おお…… 素晴らしいのう…… !」
ワルフが思わず感嘆の声をあげる。
「精巧な出来上がりのアイゼンタイプのかんじきになったな…… 錬金術の精度もかなりアップしてきたよね?」
自信過剰になりそうになり、ワルフに意見を求めようとすると…… それはもうワナワナと興奮していた。
やっぱりよくできてるよね?ね?
「これは凄い…… つまり靴に装着して踏み込みと蹴り上げを助ける…… 革命じゃあぁぁぁ! 靴の革命じゃあぁぁぁ!! 」
ワルフが大騒ぎするのを止める!
ここは宿屋だぞ?追い出されたらどうするんだ?
「お客様どうしました…… あぁやっぱり…… 失礼しました…… 」
ワルフの騒ぎ声を聞いて宿屋の主人が部屋に飛び込んで、目をそらしてスグに出て行く。
…… ワルフの大騒ぎを止めた俺はワルフをベッドに押し倒した状態になっていた。
勢いがついて、ちょっとワルフの上着がめくれているし……
「…… シノ様…… トゥクン…… 」
「…… 殴り殺すって言ったよな? 」
そのギャグはホンマにやめなさい!
とりあえずワルフの腹にワンツーパンチして宿屋の主人の誤解を解きに走った。
「そうでしょうそうでしょう。わかりましたわかりました」
そう答える主人の顔は「隠さなくて良いのに…… 」と思っているのが露骨に顔の表情に出ていた。
辛い…… 全く辛い。
いや、LGBTを馬鹿にする気はないけど、俺はヘテロセクシャルだ。
こういうギャグは辞めていただきたい。
☆★
「あぁ! シノさんいらっしゃ〜い! ちゃんとお連れのドワーフさんも来てくれはりましたか! 」
夕方、王城からの使者が登城の為に迎えに来た。
そこで何故かワルフも必ず一緒に来るよう誘われる。
ワルフは嫌そうな顔をしていたが、トゥクンの罰として無理矢理に引っ張って連れてきた。
「本当にこのアホドワーフも一緒で良かったんですか? 」
「もちろんですがなー! 」
国王は笑顔で俺達を晩餐に案内する。
「ふわぁぁぁ! 酒じゃぁぁ…… しかも高い酒じゃぁぁ…… 」
ワルフが晩餐に並ぶ酒をガン見する。
「コラ! ワルフ待て! 」
散歩中の犬みたいだなコイツ……
「いやシノさん、ええんですよ! シノさんはあまりお喋りしてくれへんから、ワルフさん? にしっかり喋ってもらいたいんでー」
…… ん? なんか引っかかるな?
「…… えっと、ワルフの事を知っているんですか? 」
「そらぁね…… 王都にある性風俗にいらはった時に、シノさんの事もよ〜け喋りはりましたから報告を受けてますよ? 」
あー!!俺が孤児院のログハウスを建てた時にワルフが行ってたな……120分2万円コースだったかな?
一呼吸あけて国王は続けて話す。
「………… 錬金術の事とかねぇ? もちろんこの席でワルフさんに色々と話してもらいたいなぁと…… 」
ワルフを連れて来て失敗だった。
ほろりと心の涙が流れた気がするシノだった……




