大公様とリリアとアヘミクレヘン
「ああ、よかった大公様…… 王女様もこちらにおられましたか」
臣下であるセバスチャンが2人に頭を下げる。
その息はゼエゼエと荒く、早く王族の2人を探そうと急いでいた事が分かる。
夏の王族誕生日祭から幾日か経過して、オスカー大公と王女リリアはシノの住む町オーディーに行こうとしたが、冬の間に公務をサボリまくった皺寄せが怒涛のように押し寄せ王都から出る事が叶わなくなっていた。
今日は月に1度あるドワーフのワルフからの定期報告の日だ。
シノの動向を掴む為には欠かせない。
オスカー大公と王女リリアは王城にある中庭のテラスで紅茶とカリスト印の菓子を食べて報告を待っていた。
外では兵士がルベルM1886[MA]の射撃訓練をしている。
しかし、風魔法で仕切られたテラスは外の銃声が遮断され優雅な時間が流れていた。
「しかし王都で大暴れしてすぐに何かある訳ないよな」
オスカー大公の言葉に王女リリアもクスクスと笑う。
前回の定期報告はファミリーレストランなる物と冒険者ギルドと教会が小夜枕に顔を埋めているうちに出来ていたそうだ。
ありえない…… 戦の陣を張る時にどれほど有利になるか判断すら出来ない。
「それが…… 大公様…… このような包みが一緒に届きまして…… 一応、中を確認しましたが…… その…… 」
ほほぅ…… とオスカー大公は驚く。
臣下のセバスチャンがこれ程に狼狽えるのは珍しい…… 走り回り王族の2人を探すほどのモノが入っているのかと興味が湧く。
オスカー大公に手紙と包みが手渡るとオスカー大公は片眉を上げる。
長い包みの中にあるのは…… 恐らくは剣であるからだ。
シノーンが剣を作った記憶がないオスカー大公はますます中身が気になって仕方ない。
しかしそこは王族である、子供の様に真っ先に包みを開けて楽しむ事はしない。
まずは手紙での状況確認だ…… 相変わらず文字が汚いし誤字が多いな…… 不敬なドワーフだ。フフフ……
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大公様……
シノ様は錬金術に続き
神の偉業を達成さるまるた。
魔石をシノ様の錬金術でグニグニかえて
アヘミクレヘンという金属合金を作るまるた。
そのアヘミクレヘンを使用した剣グラディウスです。
シノ様は純度が高いアヘミクレヘンは危なくて売れないと純度を下げていっとります。
手紙と同時に届けます。はい。
大きいのは隠して送れませんデルタ。
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「まるたとデルタに目が行ってしまうが…… 魔石でアヘミクレヘンというのを作ったという事か? 」
「おかしいですわ叔父様…… 魔石は武器などに填める物で剣なんて作れる訳がありません。本当にワルフは愚かですね。作り話にも程がありますわ…… ふふふ」
そう…… 魔石は加工は出来ない。
それは歴史が証明しているオスカー大公は、バカバカしいと首を振る。
無理に加工しようとすると魔石は割れてその力を失うものだ。
しかし…… 臣下セバスチャンがチラチラ見ている剣が入っているであろう包みに目をやるオスカー大公。
「危ない物ではないんだな? セバスチャン」
「はっ! それは大丈夫です。中身は…… どんな宝石より価値のある物です…… 」
宝石の言葉に反応して王女リリアがシノーンから"買った"ダイヤモンドの腕輪を優しく摩る。
『いかんなあれは恋に落ちているな……』
オスカー大公は王女リリアが恋する女の顔になる事に少し危うさを感じながら包みを開いた。
「…… うむぅ…… これは…… !」
オスカー大公が包みを開けると、片手剣で小振りな剣が入っていた。
それを手に持ち鞘から抜くと光が部屋に溢れる……
「剣が光っている? 」
軽いな…… 接近戦に役に立つのか?
「オスカー…… 魔石を加工して作ったと言うのが本当なら」
王女リリアの言葉にオスカー大公は頷きテラスから外に出る。
風魔法のカーテンを抜けると兵士の訓練の騒音が耳に飛び込む。
「とりあえずやってみようか…… 」
剣に火の魔法を付与する。
「なんて事だ魔力の循環が…… こんな事が…… 」
オスカー大公はまるで自分の手が伸びるような感覚を受ける。
剣に自分の魔力が馴染み効果が数倍にも上がるのが分かる。
「オスカー! あなたそんなに魔法の付与が上手でしたか!? 」
王女リリアが顔を強張らせながら叫ぶ。
「これが…… アヘミクレヘン…… 凄いぞ!」
剣に火魔法をオスカー大公の限界まで込めると真っ赤な太陽のように輝く!
「大公様! それは…… 危のうございます! 」
臣下セバスチャンが心配の声をあげる。
オスカー大公はその静止を聞こえないフリをした。
この剣をとにかく振ってみたかったのだ。
「オラァァ! 」
剣を地面に叩きつけように振り下ろし突き刺すと、そこから地面が赤く焼けて溶け、熱量が限界になった大地はまるでマグマのように地面が広がり叩きつけた前方方向へ爆ぜた。
ドオォォォォン…… !
オスカー大公は歓喜に震えてた。
前方へ向け爆破した溶岩は200メートル程飛び散り地面から火をあげている。
兵士は離れた射撃場から爆発音に驚き大地に伸びる炎に驚愕している。
「これでも…… アヘミクレヘンの純度を下げたというのか…… ? 」
オスカー大公はニヤつきが止まらず、吹き出してしまいには大笑いしてしまう。
「これは…… マズイな全て買い取る。そうしないと国に危険が及ぶ……」
オスカー大公はシノーンが本当に王女リリアと結ばれてるなら…… 国として本当に良い事なのではないかと考え直しをはじめていた。
「シノ様…… 」
また、王女リリアもアヘミクレヘンの価値を目で見て、シノーンに対しキュレネのような心からの陶酔をしはじめていた。




