泣くな! 気合いだ!
「ほうほう何もしてないと? 」
<はい全く全然に>
どうやら大精霊が冒険者を殺したのは全くの間違いだったらしい。
<それどころか>
──────2日前の事。
「よっしゃ! この森のオークは弱くて楽だったな! 」
──────はじめは元気のよい人族が4人集まってきて湖の前でキャンプを張ったんですよ。
私も大精霊としての体裁があるので顔を出しました
「おおーっ! 精霊だわ! 実体化した精霊なんて初めて見る! 」
──────女性の冒険者は私を見て大喜び。私もやっぱり気分がいいじゃないですか?だから……
<ずいぶんと武器が汚れていますね…… 私の湖で清めなさい。水の加護も与えられましょう>
──────ええサービスしますよ暇ですもん。
それから冒険者達は私が特別に暖かくした湖で水浴びを始めました。
私が武器にこびり付いた穢れを払っていた所、討伐をたくさんして殺しまくったのでしょう。復讐に燃えるオークがオークキングを引き連れて湖に来ました。
「ぶ…… 武器! あ! 大精霊が持ってグベェ!」
──────それからは惨殺でした……
なんとか1人は逃げたようですが
「大精霊! テメー…… オークと仲間だったのか! 」
という捨て言葉で逃げられてしまい…… シクシク……
「あー泣かないで大精霊さん……」
キュレネが優しく大精霊の背中を摩るようにチャプチャプする。
「なんで冒険者を助けなかったの? 」
大精霊は涙目を俺に向けスーッと涙をさらに流した。
<私…… いい感じに雨を降らせて村に豊穣の加護を与えるだけで戦いには向いてませーん! もう惨殺されてる時は気持ち悪くて湖に隠れていましたよぅ…… シクシク>
なんか…… 可哀想になってきた。
俺もキュレネも大精霊の何年も耐え積み重なったような号泣に引いてしまい真顔で泣き止むのを待つしかなかった。
☆★
「聖女様! ありがとうございます!」
ぶるんぶるんエルフさんが目を覚ます頃には大精霊は泣き止んでいた。なんとか威厳は保たれた。
泣き止まない大精霊を見ていると…… なんか疲れてきて、お腹減ったからエルフ村で買ったパンを火魔法で温めてキュレネと食べ、ぶるんぶるんさん達が風邪をひいたらいけないから枯れ木を集めて火を起こして……
久々にマイムマイム訓練をしたがるキュレネに苦笑しながら付き合って、ハアハアと汗ばみ抱きつきながらピクピクと痙攣するキュレネを心配したり、母さんの思い出話をたりした頃に大精霊は泣き止んだ。
溜めていた物が晴れたのか大精霊はとっても良い笑顔になって、ぶるんぶるんさんを見つめる。
<エルフよ村への加護は続けましょう。これからも安心をしなさい…… あの笑わないで下さい? >
いや……あんな泣いていたのにマジメな感じで話すとギャップが……
「お兄ちゃんダメよ笑っちゃペースプスクスクスク」
ほら、キュレネも笑ってんじゃん!
「何があったのですか? 大精霊様?」
<いえ、聖女様に厚誼を賜っただけですよ……クッソ >
「厚誼をとかハハハ! 友達になって下さいって泣いただけじゃん! 」
<こっ…… コラっシノさん! >
大精霊がジュワーっと蒸気を出す
怒ったのかな? ごめんごめんと頭を下げる。笑いながら。
<クッソクッソー! >
ちょっと大精霊は笑顔だった。
☆★
「…… で? これは何? 」
<私の分身ですが? >
なんか俺の肩にちょこーんと乗っているスライムがいる
「スライムだよね? 」
<え? そうですよ? >
ん"ん"? 話が噛み合わないと思ったら、スライムは元々は水の眷属らしく精霊を宿しやすいらしい。
スライムって体のほとんどが水だもんな水の精霊が操り易いのは分かった。でも、ちょっとキャンサースライムの件でスライムに苦手意識あるから嫌なんですけど……
<まだ安定していないのでスライムの形ですが成長すれば人型になりますよドンマイ >
「いや……ドンマイて…… 」
大精霊の分身があれば遠く離れていても通信ができるようで、とても暇な大精霊としては面白そうな聖女様と同行したいらしい。
これ、異世界で電話を作る手がかりになるな…… でもなぁ…… スライムだし。
置いて行こう…… いや大精霊さんそんな悲しい顔しないで。
「お兄ちゃん可哀想だよ…… 一応さ良いスライムみたいだし。」
「んー」
微妙な感じで迎えたら可哀想だよな?犬や猫も機微を感じとるし……
しゃあねぇなぁ友達 (仮)の大精霊の為だしな!
頷くとキュレネはスライムに両手を広げた
「おいで! 」
キュレネにスライムが飛びついてスリスリする。
「ところで貴方は女の子じゃ…… ないわよね? 」
おいおいおーい! 怖いよキュレネさん!スライムに嫉妬とかダメだよ!
エルフの村に戻り大精霊様はお許し下さったと報告するともう大騒ぎ!
俺は米をちょっと分けてもらいホクホク顔で町に帰って行った。
「村長様……」
ぶるんぶるんエルフがパンを売る村長に近づく
「うむ……王都とギルドと教会へ聖女様のお話を伝えなくてはな! 村神様である大精霊様とお仲間になられた…… まるで伝説のようだ! 」
こうして、キュレネの聖女としての名声が高まったのだ!




