小さい女の子!
「なに? コレは箱か? 鉄の箱なのか? 」
面白いものが見れると聞いて、アネゴはお見送りに来てくれた。
あの…… 蒸気バスをバンバン叩かないでもらえますか?
「箱馬車みたいじゃが…… ただ鉄で作っただけじゃないの! 期待して損したわ! 」
めっちゃガッカリしてる。あ、ガッカリの後は不機嫌にプリプリ怒った!やっぱり幼女なのではないだろうか?
ドッキリをしたいんだろう、お調子者のワルフがいそいそと運転席に入りエンジンスターター兼車の鍵である魔石に魔力を送る。
プシ───────ッ!
「ひぇぁぁぁ!なに!」
蒸気バスは高温の蒸気を吐き出してエンジンが力強く動き出す。
「な! なにこれは!? で…… でもこんな振動だけの箱なんて子供騙しだわよ!」
アネゴはかなり驚いてるがまだ強がりを言う。
子供が子供騙しって…… プッ…… クスクス……
ドンンはニヤニヤとしながら、ヒョイとアネゴと一緒にバスに乗るとワルフに合図する。
その合図でググゥゥン…… !と蒸気バスが唸りを上げて進みだした。
おいおいドンンとワルフ…… ドッキリするのにノリノリじゃないか!最高かよ!
「す…… 進みよる! 進みよるぅぅぅ!」
もうアネゴったらキラッキラに目を輝かせて蒸気バスに大興奮!
スピードを上げて遠ざかっていくアネゴの嬉しそうな声に俺は思った……
…… おいおい! 俺を置いていくなよ!馬鹿野郎!
☆★
「えっと…… なんでアネゴはそのままバスに乗ってるの? 」
あれ? お見送りだけだよね?
蒸気バスが発車して2時間くらい経つのにまだ、椅子に座って足をプラプラさせながら車窓を楽しんでるんだけど…… どうして?
「大成功じゃな」「ああ全くだ!」
オッさんドワーフ2人が何か良からぬ事を企んでいたようなのでジッと真顔で見てみる。
「あ…… 」
「オマエ言えよ」
「モジモジすんな筋肉ダルマ!」
言い得て妙じゃのぅとアネゴは笑うんだけど…… あの、工房はどうされるんですかー?バスのスピードと距離の感覚を分かってますか?かなり遠くまで来てますよ?
「シノ様…… あの…… このままアネゴも連れて町に帰ってくれんかの?」
「「え!?聞いてないんですケド!? 」」
見事にアネゴと俺の声が重なる。
あれ? こんな長い時間乗っていたのにアネゴったら気付いていなかったの?
「アネゴったらどんだけバスを楽しんでるの?気づかなかったの? クスクス…… 」
「グッ…… 」
もうアネゴったら…… 前世の孫の小さい時みたいで……ホントに……
「可愛いなぁ…… 」
「ググッ……かわいいとか…… ぐっ…… 」
本当に悔しそうにするなぁ…… 面白いなぁ真っ赤になっちゃってクスクス……
「シノ様…… アネゴはドワーフと人間のハーフでさぁ…… 懐古主義…… ハーフ嫌いのドワーフにはイジメられて育ちました。」
ほう、ドワーフみたいに気のいい連中の中にも虐めがあるのか。
「確かに今は、その能力を認められていますが…… やはり蒙味は居ります…… アネゴはそろそろ我慢しての仕事よりも屈託なく楽しく、ドワーフとして何時間も際限なく仕事をさせてやりたいんでさぁ……」
え?仕事が楽しい?え?
お調子者のワルフが蒸気バスを停止させて、いつに無い真面目な顔で話す。
アネゴはそんな事をワルフが思っていてくれたと知り黙り込んだ……
ワルフはアネゴを保護者みたいに心配していたんだな……
しかし……!俺は自分の膝をピシャリと叩いて怒る!
「ワルフおかしいと思わないか?」
「何がでしょう? 」
俺はギリっとワルフを睨む。
種族的な感覚の差異をここで怒らないとダメだ!
「仕事が楽しいのは分かる…… 何時間でもって何だよ?人は…… 長時間の仕事はしたくない生物なの!」
「「「え?」」」
オッさんドワーフ2人とアネゴのビックリした声が合わさる……
「仕事はしんどいもの! 何時間もするもんじゃないの! 」
「「「は?」」」
あーなんだよコイツら! 揃いも揃って!
「俺はたまには仕事を休みたいの! てかたまには休ませてよ!何でオマエらが嬉々として俺を働かせるか分かった気がするよ!」
その俺の魂の言葉に笑いが溢れる!え!?なんで?
おい…… ワルフ普通に運転を再開するな!俺は真剣な話をしているんだ!!
アネゴは何でそんな爆笑してるの? 普通の事を言っただけですけど!?
「シノ様、帰るまでに素材の選定をしましょう。アネゴに黙ってですが幾つか余分に鉱物などを積み込んでますのでな」
「仕事をさせるなよ!バスの旅をゆっくり…… コラ!爆笑すんな!これはギャグじゃねぇ!」
帰りのバスには荷物が増えたよ!アネゴが収集した鉱物や火薬に必要な化合物!めっちゃ仕事が増えるよ!
早くゾリゲを黙らせて休みたい!
食べ歩きや…… 旅行にだって行きたい!
────────蒸気バスのエンジン音に恐れたのか、または偶然なのか魔物に会わず順調に町に到着出来てホッとする。
蒸気バスは力強く走るが、如何せん車体が大きい。魔物には良い的になってしまうからな……
工場でアネゴの工房から持ち帰ってきた素材を荷下ろしをしていると、何故か帰宅を知ったキュレネと荷物の記録を録ろうとするアーネが笑顔で近づいて来る…… なぜか鳥肌が…… あれ?
「ただいま!」
…… と手をキュレネとアーネに挙げたら、俺の後からバスから下車したアネゴを2人が見て死んだ目をしながら器用に真顔になる。
「「女がやっぱり増えてる!」」
なんだよ帰ってきた人には、おかえりなさいだろ?
あーあ、今日は寝ちゃおう。疲れたよ。




