火薬と聞くとかやくご飯が食べたくなるのは俺だけじゃ無いはず!
「はぁーつまーんなーいマジでー…… なんかないかなぁー…… つまーんなーい」
何回もそう愚痴る。
私は鉱物をたくさん集めに集め、それを加工して暇をつぶしをしてきた。仕事と思った事はない。
そんな事を続けていると、いつの間にか仲間のドワーフ達から、アネゴと呼ばれるようになった。
目上の呼び方をされるぐらいにはドワーフに尽くしてきた。それに楽しかった…… と思う。
私がこうなったのは、子供の頃に見た目が人族の神様が枕元に現れた事がキッカケだ。
「ちょっとこの星は鉱物の練成文化が低いからのぅ…… キミには才能があるみたいだし、この本でドワーフを導きなさい」
神様は文字の全く読めない本をドンッと置いて煙のように消えた。質問ぐらいさせて欲しかった。
その本は超リアルな挿絵があって文字が分からなくても表層の知識は理解が出来た。
ホントに凄い本だ…… 鉱物の一覧もあってキョーミ深々(シンシン)でメッチャ勉強したのね。
ホラ私、人間とドワーフのハーフじゃん?
結構バカにされたんだよねー…… 体小さいし人族の体形に近いしぃ。
美的感覚も人間寄りだしー…… ドワーフめっちゃゴツくて怖いし。
神様のくれた本で認められて嬉しかったけど、ホントに簡単な所までしか分からない。
何度も言うわ!字が分からないんだよ!神様ちゃんとしてよ!
……あーあヒマ。やる事は本の絵を見て鉱石を集めるか化合物をつくる…… それだけの毎日。
ホントどっか行こうかな?ドワーフ怖いけど説得したら仕事の契約解除して許してくれないかな?
「あれ?なんか外が騒がしいな?なんだろう?」
なんとなく言ってみたけど、この騒がしさはドワーフのオッちゃんだろうなぁ…… つまんね。
あー楽しい事ないかなぁ……
☆★
──────少し前、シノーンはアネゴとの面会に向かい、彼女が定住している森の入り口にたどり着いた。
「シノ様、蒸気バスで来れるのはここまでです」
「ああ、これ以上の悪路は流石に無理だな」
ふふふっ!蒸気自動車と別に開発していた蒸気バスが大活躍しているぜ。
地球では西暦1829年に存在していた蒸気バス…… 地球の歴史と発明全書という本の[知識]で作ったんだぜ。
丸パクリできる[記憶ファイル]とドワーフの精密工作の腕があれば、短期間でそれなりの蒸気バスを作り上げる事ができた。
長距離の運転でも車内空間が広くて窮屈な気分にならないのだ。
今回、ドワーフのドンンとワルフと俺の3人でアネゴに会いに来たんだが、ずんぐりむっくり2人が乗っても空間スカスカ!バスってすごいねー!
空間だけではない。ゴムタイヤのおかげで路面に対する安定性も増しているし、エンジン効率も大幅にアップしている。
熱は火の魔石というこの星では高価な物だが、よく知られていて割と簡単に購入できる物を使い、水を熱する事で燃料関連の軽量化も出来ている。
ホントにファンタジー万々歳だわ!
え?蒸気用の水? 魔法でジャーよ!
え?使えない人なら?水の魔石でジャーよ!
悪路の走行を諦めたので、蒸気バスを茂みに隠して歩き出す…… あれ?やっぱりバスって大きいから隠れて…… ないよね?
まあいい、カギがないと動かないし…… 気にしない気にしない…… どうなんだろ?
「シノ様!ワシらの足の速さなら一日くらいで着きますが……チラリ」
「そうですじゃ!ドワーフはなんせ人族より屈強じゃからのぅ…… チラリ」
「てめぇら!人間なめんなよ!」
何かを賭けるわけではないが、ニーッと3人で笑い競争するように走り出した。
3時間走っては少し休憩をくり返す。
まぁ、休憩が必要なのはドワーフの2人だけなんだけどねふふふん!
「ホントにシノ様は人族ですか? そうは思えないです」
ドンンが汗をダラダラと流して地面に胡座をかいて愚痴る。
神様の加護の下で鍛えているんだから当然だろう!俺はかなりタフになっていると思う。
走る・休む・走る・休むを繰り返してゼェゼェと過労で顔色が悪くなっていくドワーフ2人。
それでも尻を蹴りながら走り続けて、2人の体から酒が抜ける頃に、やっと大きい工房が見えてきた。
「大きな工房だな…… 」
「ハアハァはい……あそこがアネゴの家です…我々ドワーフが鉱物の知識を得る代わりに建て増しをして大きな家に…… しましたハアハァ」
ドンンはこうして絶え絶えだけど話せているんだけど、もう1人のドワーフのワルフは草むらに入ってゲーゲー言っている。
「ドワーフって虚弱だあなぁ」
「シノ様がおかしいんですよ…… 」
うわっ!ドンンのヤツまで走り過ぎて吐きやがった!
魔物が来たらいけないので2人が吐いた吐瀉物を魔法で地中に埋め、やれやれと言った感じで工房のドアノッカーをトントンとした。
「はーい」
という幼い女の子の声がしてから、程無くカチャリと工房のドアが開くと小学校低学年ぐらいのギャルっぽいメイクの女の子が立っていた。
この子は…… アネゴの子供かな?
「おやワルフじゃーん久しぶりー」
ワルフと少女が楽しそうに握手する。やはり工房の家主の家族かな…… ?ここは紳士的にいこう。
「ごめんねお嬢ちゃん、お母さんいるかな?」
「!!ひぐぅ…… !イケメンの子供から子供扱い…… もうドワーフなんて嫌ぁ…… 」
…… あるぇー?この子なんで泣いてるの?
ドンンは気まずそうにしながら、手のひらを泣いている少女に向ける。お、おう紹介かな?
「あ…… あのぅ…… シノ様…… この人がアネゴです」
わああぉファンタジーやぁぁ!死ね幻想世界!
「あと…… アネゴは人間とドワーフのハーフで…… 美的感覚は人そして、15歳です。」
お姉さんじゃぁぁん!わああぉファンタジー死ね!
「ご…… ごめんなさぁぁぁい!」
この後、めっちゃ土下座しました。
☆★
ドンンは走り疲れたのかアネゴの工房に入るなり椅子にドカッと座り大い鼾をかきだした。
近道を知るドンンは俺に抜かされまいと必死に走っていたからな。
燃え尽きたんだろうなぁ……
ワルフはアネゴが子供の頃に製造の仕事を教えた顔見知だ。ワルフを介して俺はアネゴと情報のやりとりをしようと思ったんだ。
そんなネゴシエーションの用意をして来たのに俺は…… アネゴは臍を曲げて外方を向けている…… そのアネゴにヘコヘコ頭を下げ謝る代表の俺
あれ?俺って足手まといじゃん!
「まぁまぁシノ様、ちょっと私が話をしましょう」
ワルフが肘で軽く突いてくる。
なんだよ邪魔かよ〜。邪魔か〜……
「ごめんなさいワルフ頼む…… 」
ワルフがアネゴを宥めてくれるのを期待して俺はアネゴの工房をポケーっと見てみる。
木材を基調にした室内装飾に美しさを感じるモダンなデザインだな…… イメージでは高級時計屋さんのような…… なかなかいい!
ただ、壁一つ分だけは雑然としている。
様々な手描きの鉱物の絵と鉱物の名前が書いているメモが壁に貼り付けられているんだけど……
「んー?何か…… 変だ?」
何だろうと良く見る。鉱物の絵がリアルなのはいいんだが文字が…… なんか懐かしい?
「あ…… 日本語だコレ! 日本語で雲母って書いてるわ」
久しぶりに見た日本語が異世界にある?なぜ?
「うんもうんも」と繰り返しながら日本語表記のナゾを考えていると、アネゴとワルフが固まっていた。
「ねえ?ワルフ…… この人族なに? 」
「いや…… シノ様です」
ちがうちがうとアネゴが頭をガシガシと掻くと俺に近づいてくる。
「ねえ? シノ君……コレ読めるの?」
小さな体をヨイショっという感じで爪先立ちをしながら雲母の文字を指差す。
しかし本当に小さいな……小学生の一年生ぐらい?
「もう! また、小さいなって思ってたでしょ? それはいいからコレ読めるの?」
「はいすみません、これは雲母と書いていますね?」
ふんむーっ!とアネゴは鼻息をドバーッと吹き出し次の紙を指差した。
「じゃあコレは?」
「…… えっと、硫黄結晶ですね」
「これ半分の四角いっぱいのヤツは結晶って書いているの?」
「四角いのいっぱいなのは『晶』ショウですね。結ケツは前の字です」
じゃあコレじゃあコレと次々と質問される。
…… しかし何で日本語が?異世界移転者が俺以外にも?
そう思いながら端まで、日本語で書かれた紙を読み終えるとアネゴはダーっ‼︎と子供のように飛び跳ねて隣室に行きダーッ‼︎と大きい本を抱えて戻ってきた。
絶対に子供と間違うよね?俺は悪くない!
動きがね、絵本を読んでもらいたい時の孫と一緒!
「じゃあコレはなんて書いてるの!? 」
アネゴはダンっ!と机の上にかなり分厚い本を置いた。装丁がかなり綺麗なんだけど…… あれ?
「え? [業務用]鉱物・化合物百科辞典完全版 日本語訳…… なんで日本語の本があるの!!?」
「ふぇ?ふええええん!」
アネゴが泣き出してしまった!俺のせいじゃないよね!?
俺とワルフは目を合わせ困っているとアネゴはスンスンスンと泣き止もうと鼻をスンスンスンしだした。
…… ほらほら、ハンカチで鼻を拭こうね?はい、これで大丈夫。
「…… ほらアネゴさん飴でも食べて落ち着いて…… ね?」
「うん…… ありがとうシノ君」
俺の自作の飴をコロンと口に入れてやると、よほど美味しかったのか目を輝かせて…… 少し舐めてからすぐにゴリゴリっと噛んで飲み込んだ。
やっぱり子供じゃないかよコレ!
「…… この本はね神様が私が子供の頃に授けてくれた物なの。でも、文字が全く読めなくて…… 解読しようにも手掛かりがなくて…… 読める日が来るなんて思わなくて嬉しくて……」
そう言い終わると、またアネゴはスンスンと泣き出した。
もうどうすりゃいいんだよ!
アネゴが抱きついてきてスンスンスン泣き続けるから話が進まない!
あと神様! たまに思うけど 色々と雑だね?読めるようにして渡してあげようよ!アネゴの人生どうしてあげるつもりなの!?
☆★
「ホンマかいな…… 」
「うむ、アネゴは凄いぞ?」
アネゴはドワーフと人間のハーフだった。
体力とパワーはドワーフの種族的な遺伝から、小柄でスピードがあるのは人間の遺伝子から受け継いだらしい。これはアネゴの自己分析。
本人が強いもんだから、方々各地で採掘をしては工房の奥のスペースに保管していた。
ドワーフとの契約があるから長い採取の旅はムリだったみたいだけど、かなりの量の資源・資材がアネゴの工房には保管されていた。
「アネゴは魔物避けなんかの細やかな物を作るのも得意じゃぞ! ワシもシノ様に合う前はアネゴの魔物避けを持って出歩いたもんじゃ」
回復したドンンが言うにはこの工房にも魔物避けが施されているらしい。
なるほど穏やかな感じがする……
いや嘘ですすみません。聞いてからイメージ変わっただけです。気のせい気のせい。
そして俺が歓喜したのは化合物の製造、説明がアネゴの本に記されていた!
読んでみると、ここの工房でB火薬…… つまり無煙火薬が作れるという事だ。
火薬の歴史は黒色火薬→無煙火薬と移り変わる。
煙が少ないだけではなく火薬の爆発力もパワーアップする。火薬の進化…… それは銃につながるんだ。いかんな。危ない。広めて良い技術のラインを大分と超えてしまっている。
この星で火薬武器はたぶんない。ドワーフが見た事ないんだ…… 無いと思う。
それが、無煙火薬を手に入れる事で、いきなり地球時間西暦1884年以降の武器が製造できる事になる。
作るにしても根幹部分は極秘にしないとな…… 作らない?いいえ、作ります!家族を守るために大公様に献上するので!やっほう!
「アネゴありがとう!」
「うぇっ! え!?」
あまりに嬉しくて、親戚の子供を抱っこする感覚でアネゴをギューっと抱きしめてクルクル回る。
あれ?胸がやたら大きい?
あれ?アネゴ真っ赤になって怒ってる?
「すみませんでしたー! また調子に乗ってしまいました! 」
俺はまた、めっちゃ土下座しました。
「なあワルフ、こっちに来い。」
「なんじゃい?アネゴ? 」
あれ?土下座する少年の前で雑談が始まりましたよ?
ちょっと…… なんで少し離れるんですか?
土下座で置いてけぼりとか…… かなり怒っているの?どうしよう…… 火薬つくれないかも…… ?
「この人族はなんじゃ?博識だし抱きしめられた時には、この私の力でも振り解けなんだぞ?」
「それがシノ様ですわ…… クックック…… この人といたらもっと驚く事がたくさんあるぞい…… そうじゃ…… アネゴがシノ様と結婚すればドワーフの血縁になる。知識引き出し放題じゃ」
「…… うぇぇぇぇ!け…… 結婚てそんな…… 確かにシノ君カッコイイケド…… 」
土下座の少年を前にボソボソ話さないで下さい!
不安になるじゃないですかぁ!
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アネゴのイメージです
イメージと合っていたら幸いです
ゲルボールペンでグリグリ描きました
ゲルゲルゲー
2021/4画像をアップデートしました。




