探しています! アレを!
父さんと話した翌日から工場の一室でずっとウンウンと唸って考えている。
俺がこれからやる事は、子供には手に余るものだ。
しかし、出来ないなんて言えない。諦めるなんて死んでも嫌だ。
机のメモにタスクを書き込むが…… さてどうすればいい?
①大公に気に入られる事
②この町を自由区にする
③父さんを貴族にしてこの町を領地にする
④ゾルゲの権力を奪う
…… 出来れば③までいきたいな……
一般庶民が貴族に叙されるには…… かなりの献金か、かなりの功績が必要なのは何となく分かる。
うーん…… 蒸気自動車では心許ない。
王都にある蒸気自動車はカリスト様に献上したものを含めて数台、もう販売してしまっているので目新しさはないだろう。
売り出すのが早すぎた。タイミングが悪い……
最低な結果の場合、①まで辿り着けずに大公様との謁見だけで終わってしまう可能性もある。
「なんなら飛ぶか…… ?。飛行船は船体製造はムリすれば出来るが、ガスの産出は間に合わない…… 船は蒸気部分の新たな製造が追いつかない。スクリューは…… はぁ…… 後回しにし過ぎた……」
ピクッピクッと同室で書類作業をしているドワーフ供が反応しては
「ヒコウセン…… ヘリウム…… 」
と物欲しそうにこちらを見る。もうそれはチラチラチラチラ
しかし俺の雰囲気に話かけはしてこれない。
…… いや空気を読んだのではないだろうね。
放っておけばさらに面白そうな事を喋ると思ってるんだろう。
フーッと息を吐く。疲れる。どうしたもんか……
俺が息をついたのを見計らいキュレネとアーネがお茶を持ってくる。
競い合いように一杯ずつ。
「はい!お兄ちゃん!」
「シノ、愛を込めたお茶をどうぞ」
「っ!キュレネの方が込めてたもん!」
机に二杯のお茶が並ぶのを見て、フフッと笑ってしまう…… この平和を壊さない為ならなんでもしてやる……
「…… しゃあないな!やっぱり手っ取り早いのは武器だな!そうだ、武器作ろう!」
「武器じゃと! シノ様が武器…… 」
ドワーフがガタガタと立ち上がり色めき立つ。
魔物がいる世界だから、新しい革新的な武器は相応の価値があるはずだ。
今回はドワーフら土魔法と鉄のスペシャリストの手助けが不可欠だろう。
必ず成功させるために、俺はまずこの部屋にいるドワーフに深く頭を下げた。
「すまない…… 今回の武器製造はドワーフ全員の助けがいる…… お願いします。力を貸して下さい。」
心から懇願するとドワーフは驚きアーネとキュレネは珍しく目を見合わせて困惑しているようだ。
「シノ様…… ワシらはシノ様が作りたい物を作りたいんで頭下げる必要無いですぜ!」
ワハハハとドワーフが笑う…… 気持ちいい奴らだなコイツらは。ありがたい。
「して…… どんな武器ですか? 剣ですか? 弓とかですかぃ?」
「今回、俺達で火薬武器を作ろうと思う」
「カヤクブキ……? 」
ん?火薬が分からないようだな。
どうやらまだこの星では火薬の開発または情報の公開はされていないみたいだな。
うん、上手くいけば大公様に喜ばれる…… かな?
☆★
「ショウセキ? 」
「やっぱり分からないか? 」
工場の1番大きい鉄鋼の製造場所でドワーフを全員集めて集会をしている。
出荷前の蒸気自動車のハンドルをグルグル回し、手遊びしながら火薬作りに必要な素材の在処を誰か知らないか…… それを問答をしているのだが上手くいかない……
黒色火薬が作れたらウィンチェスターM1887という銃を作れる。
連射を可能にした散弾銃で現代でもファンがたくさんいる名銃だ。
『銃』本体の設計は[記憶ファイル]でなんとかなる。
ドワーフの土魔法の精巧さがあるなら銃身の製造も…… おそらくは可能だ。
蒸気自動車のエンジンを作ったシートさんのスタッフに手伝ってもらおう。
銃は作れるんだ。ただ…… 現段階では火薬の精製がどうにもならない。
「うーん…… どうしたもんか…… 」
「お兄ちゃん、そんな焦らなくても公爵様は蒸気自動車で満足してくれるよー?」
キュレネが優しく俺の腰をなでてきて、笑顔でそれを返す。
キュレネは知らないんだ。仕方ない、でも期限は冬までなんだよ…… 焦らなきゃ…… なんとかしなくちゃな……
沈んだ空気の中、前歯が全部無いドワーフが声をあげた。
「あ!そうだアネゴなら…… 」
ドワーフが笑いながら手を打つ。
「あ! そうか! アネゴか!」
「アネゴがいたのぅ……! 」
ドワーフがアネゴ!アネゴ!と盛り上がる。
姉御って事だろうか?屈強なオヤジに姉御と呼ばれる人物…… うーむ濃いそう…… 。
「アネゴって人はどんな人なの?火薬の材料とか分かりそうな人かな?」
「うむ!アネゴなら珍しい鉱石を知っとるからな!分かるやもしれんぞ! 」
「ああ!アネゴは博識じゃからの! 」
アネゴアネゴとうるさい!コラ!問題が解決したんじゃないんだから酒を取り出すな!飲むな!
「いや、すまんすまんシノ様。アネゴはなワシらドワーフの中でもかなりの変わり者でな…… 色々な鉱物を集めるのが好きな好事家なんじゃよ」
「そうじゃ拗ねんでくれよぅふふふふ」
心配するなら心配してよ! 笑うなら笑ってよ!
なんだよ!共通の話題で盛り上がるなよ!
ちぇーっ!仲間はずれかよ、ちぇーっ!
俺の顔を見てクスクスクス笑いながら酒を飲み、ドワーフが話を続ける。
アネゴは小さい頃から色々な鉱物を集めては合成したり、溶かしたりして遊んでいたドワーフとしては変人で、鉄の強度を上げたり柔らかくしたり色んな事を知っている智慧者でもあるという。
アネゴには創作物を作る時にアドバイスをもらったりして随分と助けられている奴が多い。
だからドワーフの皆は親しみを込めてアネゴと呼んでいるそうだ。
…… ちなみに、本名は捨てたらしい。え?アネゴって名前で納得してるの?アナゴと一字違いでしかないよ?
「アネゴは今まで集めた物・合成した物・採取場所を事細かに記帳しとる。シノ様の目当ての素材とアネゴの記録とを擦り合わせれば、案外と早く火薬とやらの素材が見つかるかもしれん」
なるほど力強い味方になりそうだな…… え?アネゴって女性なの?マジで姉御なの?…… カッケェ……
「誰か…… その、アネゴの居る場所は知ってるかい?」
ほら!そこのドワーフ! シノ様が拗ねから回復された拗ねシノ回復じゃぁ!とか言わないで!
何だよスネシノって……
「クックック面白いのぅシノ様は…… アネゴの居る場所はこの辺りに住むドワーフならみんな知っとりますわい」
「なるほど…… では会いに行こう」
「「待って! 」」
部屋の隅で会話を聞いていたキュレネとアーネから待ったがかかる
「アネゴさんって女性なんですよね?」
「アネゴさんは若い女性ですか?」
それ今、重要じゃないよね?あら真剣すぎない2人とも?
詰め寄られたドワーフがブンブンと首を上下にふる。
「おいおいキュレネ、アーネ今はそんな事どうでもいいだろ?」
キュレネは赤い顔に涙を滲ませて、アーネは赤い顔でキッと睨みながら声を合わせる。
「「女性ならライバルが増えないか心配なので!」」
2人でハモりながら俺に怒ったね?いやいや実は仲がいいんじゃないか2人とも…… 何だよライバルって。この工場の女性には階級制度があるの?ねぇ?
「…… お兄ちゃんって鈍感!」
「そんなシノも好きですわ ♡」
なんなの?ホントにどうしたいの!?




