ドワーフコント!
アーネに来てもらって助かった事がある。
彼女は元はつくが貴族として教育された過去がある。
教養があり読み書きが出来て、ウチの工場に足りなかった知識である貴族への返礼方法を知っていた。
これは実に大きい。貴族はキチンと順序を守る過程に強い拘りがある。
派閥や各貴族ごとに組み立てられた手順に従わないと無礼になってしまうのだ。
以前の話になるが、蒸気自動車の販売時に貴族様に対して画竜点睛を欠いてしまった事がある。
無駄な時間を使い無意味な割引をさせられた事があるのでアーネの能力は本当にありがたい。
「ホントに助かるよ。ありがとうアーネ」
キッ!
キッ!
…… 最初のキッ!はアーネが照れて睨んだ音。
次のキッ!はキュレネがアーネを睨んだ音なんだよ。
仲良くしておくれよぉ…… 仕事しずらいよぉ……
工場の事務仕事は基本的にずっと座っての仕事になる。
これには実は忍耐力がいる。それをアーネはどんどんこなしていくから実に関心、関心。
本当に忍耐力が凄く高い…… 普通は書類記入のキリの良い所で伸びをして一呼吸入れたり水分をとったりするでしょ?
しないのよ、アーネは。
じっと、書類を書き続ける。
書類の記入が終わるか、俺かドワーフが終業時間を知らせるかまでずーっと書類を書き続ける。
おかげで溜まっていた書類仕事がバンバン片づいていくからもうね、感謝ですよ。有能!アーネ有能!
この忍耐強さ、アーネ本人の話では環境のせいだとの事。おそらく何かの称号でステータス補正があるんだろう。
教会の水晶の壁でステータスチェックすれば[忍耐]とかスキルが出るんじゃ無いかな?
──────シノの考察は正しく
アーネのステータスには[飼育士 動物の飼育を代々受け継ぐ家系に与えられる/忍耐力+500]
というスキルが備わっている───────
住環境に関してだけど、アーネは工場の管理室で暮らしている。
俺に泊まり込みで仕事をさせようとドワーフが作った部屋だから住むに困らない設備が全て揃っている。
「あの、シノ…… 一緒に暮らしませんか?」
アーネのその言葉にキュレネが大声でキレたのはびっくりした。
アーネったら赤い顔でキッ!と睨みながら言うんだもん…… ちょいキュンとしたのはナイショだよ?
ドワーフとの顔合わせの時もアーネの真面目さが炸裂。
「私にも仕事をさせて下さい」
というアーネの言葉にドワーフは一気に仲間意識を持ったようだ。
奴らドワーフは仕事狂だ。仕事したいという人間は仲間と思っとるんだろう。
ドワーフだけは上司にはしたくないなホントマジで
アーネはドワーフが苦手な書類関係や契約、事業管理を担当している。颯爽とパンツルックで歩き回る姿に清涼感すらある。
キュレネとは仲が悪いけどね。ケンカする時はすっごいキュレネを睨むんだもん…… 清涼感期限付きだわ。
しかし、何でこんな仲がよくないんだ?
俺が一日、リバの町で遊び回ったから仕事が停滞。
今はドワーフに工場で監禁・監視されて図面を描く仕事に従事している。
「児童虐待じゃないッスかー!」
と叫んだら一瞬の沈黙の後に俺を指差してドワーフどもは大爆笑!笑い事じゃねぇ!
もうコップに入った水に波紋いくぐらい大声で大爆笑!
「シノ様が子供…… シノ様が子供ヒィ〜ッヒッヒッヒ!」
なんつー事を言うのキミら…… ちょっとムカつくから描いていた図面を破ろうとしたら、後ろからはアーネにホールドされて、前からはドワーフ2人に両手を掴まれた。
こいつらマジでなんなの!仕事しないと死ぬの?
「ここは子供っぽくワガママを聞いてもらう!」
俺はサイクロプスを狩って大幅にレベルアップした腕力を使い、無理やりドワーフごと図面が描かれた羊皮紙を捻り破く体勢をとる。
「ホラホラ破っちゃうからねー」
と煽った時のドワーフの顔ったら…… ははは!
子供が舐めようとする飴を、汚泥に叩き落とした時のような顔をしやがる…… ホントに…… もう楽しいったらない!
ピリッと少し破ってみた!
「ヤメて下せいシノ様! 子供みたいな事しねーで下せぇ! 」
「だから子供だって! 」
…… また少し笑顔でピリッと破る!
「なんて力じゃ…… 止まらん! 」
「お…… 奥方様…… 何とかして下せぇ…… !」
…… え?何て言った?
ドワーフは今、俺を後ろで羽交い締めにしているアーネになんか言ったよな?
後ろにいるアーネの顔は見えないが背中越しにアーネの体温が上がったような気がする……
あれ? 苦笑して見ていたキュレネが真顔になってる?これは良くないなぁ……
「めんどくせぇ! ダリャー! 」
ビリィーッと図面を破く!ふふふ…… さぞ悔しいだろう。
…… ドワーフを見ると溜息をあげるだけで想像していたのと違う残念な状況に困惑する。
「シノ…… 」
「はい…… 何? アーネ」
アーネは俺への羽交い締めをやめて、俺の前にまわり手をクイッと動かす。
アーネの合図で、俺の手を離したドワーフが無言で動き出す。
え? なんでそんなアーネの配下みたいになってるの?軍隊なの?
「シノ…… 」
「え?はい」
アーネがドワーフとの仕事が増える前の嫌な感じのやり取りを始める。
「この破れた図面は最近、王都でも話題になっている蒸気自動車を王族に献上する為に描いていたモノ…… ですよね?」
「はい」
ドワーフが無言で羊皮紙を持ってくる。
「つまりシノが破こうが、また描き直さないといけません」
「…… はい」
「そして描くのはシノです。」
ドワーフが新しい羊皮紙を机に広げる
「…… あ…… あぁ……」
「頑張って下さい! 忍耐ですよ! 締切日は近いですよ!」
「うわぁぁぁぁーーー!」
頭を抱える俺を見てドッ!!っとまたドワーフが笑い出した
おい人の不幸をみて酒を飲むな! キュレネそんな悲しい顔をしないで……
なんてバカな一人芝居をしちゃったんだろう?悔しい!
「シノ様、子供が舐めようとする飴を汚泥に落とした時のような顔しないで早く図面描いて下せぇ」
ドワーフゥゥゥ!!てめええぇぇぇ!!
☆★
私はシノのお仕事を手伝える事になった。
「アーネさんが書類関係をしてくれるから助かるわい」
山のように残留していた書類をまずは一期分だけ片付けた時にドワーフから信頼を得たようだ。
田舎の暮らしを覚悟していた。つまりシノをナメていた……自分を恥じるべきだろう。何を人を下に見ているんだと……
工場の事務の計算をしていたら分かる。
私の未来の旦那様のしている仕事は恐ろしい稼ぎを出している。
あと一押しすれば下級の法衣貴族ぐらいなら賜れるのではないだろうか?
しかし蒸気自動車を始め、私が王都で食べたお菓子などもシノが開発していたとは……
最高だわ!必ず妻にしてもらおう!
しかし妹のキュレネさんは女として嫌な予感がします。噂では本当の兄妹ではないとか……
「あなたにはお兄ちゃんあげないんだから…… 」
そのように出会ってすぐに耳元で囁かれてからは喧嘩状態が続いている。
私もシノを諦めるつもりはない!
この国は税金を納める額で側妻を娶る事が許される。
私は第二夫人にはならないわ!!
キュレネさん!あなたが第二夫人よ!!




