なんで家に来るのさぁー
──────かまくらを作った次の日
朝ごはんを食べ終わる頃、見計らったように家に兵士が伝達があった。嫌だ嫌だ。
今日の昼過ぎに王都魔法隊さんの隊長カリストー=セルディック様がお越しになるというのだ。
兵士に詳しく話を聞くとガッテン!そう、カリスト様とはあの美人な貴族の女の子だった。
「あの、こちらから拝趨しますけど?」
「いえ、こちらにぜひ来たいとの事ですので家でお待ち下さい」
え〜っ、なんか家族を人質にされたりしたら嫌だなぁ…… まぁ、しゃーないと言う事か……
「か…… 家族揃って奉迎します」
俺の言葉に兵士は頷き帰って行った。
「アンタ、あんな言葉を知ってる?シノに教えたの?」
「い…… いや、拝趨とか奉迎とか全くわかんないよ…… 」
父さんは内股でソワソワしだすし、母さんは掃除を始めた。
あーめんどくさいな……
「シノがどっしりし過ぎなんだよ」
いや、父さんあなたの筋肉は発泡スチロールですか?もっと頑張って下さい。
「あぁぁぁ!アンタはお茶とお菓子を用意しなさい!!」
母さんヒステリーにならないで下さいね〜。
確かに、[記憶のファイル]能力を得てから我が家の料理や菓子の幅は広がりましたが…… 俺まだ6歳だぜ?
料理に鼻水が入らないか親は心配するぐらいの年齢だぜ?
地球だったら虫あみ振り回してカブトムシ採ったりして体力の配分も出来ずに熱を出したりする時期だぜ?
家計に貢献してるのにまだ働かすかね?
という思いが顔に出たのかいつの間にか母さんと睨み合いになった。
「なによ?」
「いーえ!なんでもありゃっせーん!」
飲み屋の掛け声みたいに返すと、ギリって母さんが奥歯を噛み締めて掃除に戻っていく。
スゲー歯ぎしりかよ……
「シノあまり母さんをからかわないでね」
筋肉ゴツい父さんがやんわり注意する。筋肉で心配そうにクネクネする様は息子として辛い……
「あれでもシノを心配しているんだよ?」
わかってるって言わなくてもさ、人生2回目の両親もいい人でよかったよ。ホント……
☆★
さてお菓子作りだ。ウチは砂糖がある!魔物が闊歩し、流通と産業が滞っているこの星では甘味も酒も貴重なものだ!
しかし俺には地球での[知識]がある。
サトウキビのような糖分を含む植物があれば精製できるのだよ!ははははは!
はじめて砂糖作りしていた時はキュレネが大はしゃぎした。
「何騒いでるの?シノ?え?それ!砂糖!!?作り方を知ってる!?キャ────ッ!」
はい、ダイジェストでお送りした母さんの反応でした。
そこから暫く、俺は砂糖作りの先導者として村で働かされた。噫無情なり……
キュレネと母さんはそうだろうなぁ〜と思っていたけど、意外と父さんが甘党で試しに砂糖入りの果実ジャムを作った時なんて頰に手を添えてウルウルしていたな…… 本当に乙女だ…… 苦笑乙女だ。
ジャムの日のリアクションに対して、あ〜あって感じで無表情で父さんをジーっとみていたら『かぁっ』と擬音がなるぐらい赤くなってモジモジしていた。
筋肉ウルウルにモジモジオヤジだぜ!やってらんねーよ!苦笑筋肉モジモジ乙女だぜ!
「お兄ちゃん、偉い人がウチに来るの?」
「うん、嫌なんだけどね…… でも印象を良くしとかないと権力者は面倒くさい事を言い出したりするから…… とりあえず茶菓子としてパウンドケーキでも作るかな?」
[記憶ファイル]からテレビのお菓子作りの番組で放送していたパウンドケーキ作成を思い出す。
うん、ウチの素材では素朴な感じになるけど作れるな。
「ぱうんど?」
台所で用意していたらキュレネが来て覗きこんでくる。
この星での質量名はポンドとか全く関係ないのでパウンドケーキでは通用しないなぁ…… どう説明すればいいか分からないから笑顔で頷いとこう。うんうん。
[パウンドケーキ]小麦粉、バター、玉子、砂糖があれば出来る菓子だな。どうせなら甘味を増す為にドライフルーツも入れてやる。
親が見てないし良いよねって事で念動力でタネをグルングルンかき混ぜて耐熱皿に瞬間移動で移し入れオーブンへ。
暫くすると、あま〜い美味しそうな匂いがしてくる。
「うわぁいい匂い」
キュレネがキラキラとオーブンを見て笑う。
だろー?へへへん!地球の菓子は多種多様。
老人になって暇な午後の料理番組はよくポケーっと見ていたからレシピストックは凄くあるぜ!
あまりにいい匂いで焼けるもんだから、父さんと母さんも覗き込んできて思わず笑ってしまう。
平和でいい家族だよ本当に。




