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第五話 名付け親
俺が生まれてから一、二歳の記憶は断片的であまりない。
覚えていた方が恥ずかしいだろう…。
そんな俺は健やかに育ち三歳になった。
「お母さん、どうしてボクには羽根が生えてるの」
(幼いながらに可愛らしい質問をしたな)
と、思う俺。
《それは、マロンがお空をとぶためにあるのよ》
お袋が俺に言って、俺は小さな羽根をバサバサ動かしてみたが、まだ飛べる気配はなかった。
ちなみに俺の現在の名前は『マロン』である。
…は、恥ずかしい。
男なのに、こんな名前を付けてくれたのは他ならぬ、お袋だった……。
代々、魔族が名前を付けるのは母親か父親という決まりがあり、それ以外は魔族として認められない掟があった。
俺の父親は人間だから母親がつけたのだか、もっと男らしい名前が良かったぜ…。
たぶん、姉上の名前はお袋が付けたのではなく、父親の方がつけたのに間違いないだろうと俺は思った。