第17話『宛名はガルド、差出人は不明』
ある日、村に届いた一通の手紙。
差出人の名前はなく、ただ“ガルド”とだけ書かれた宛名。
過去と現在が、静かに交差する回です。
「ガルドさん宛に、手紙が届きました」
郵便係の青年がそう言って差し出したのは、
ややくたびれた封筒だった。宛名は達筆で――
「ガルド殿へ」
裏面に差出人の名前はない。
消印も、見慣れない地方のものだった。
「……心当たりは?」
「……あるような、ないような」
(※ガルド自身にもよく分かっていない)
部屋に戻ってから、ガルドは椅子に腰を下ろし、封を切った。
中には、短い手紙が一枚。
ガルドへ
元気にしているか?
俺たちは、今もあのときのまま、ずっと戦いの中にいる。
お前が村に残ったと聞いて驚いたが、どこか納得もした。
あのとき言えなかったが――
お前が前に立ってくれたから、俺たちは今も生きている。
無理をするな。けれど、忘れるな。
どこかで、また会えたら酒でも飲もう。
名前は要らないよな。お前なら、分かるだろ。
手紙を読み終えたあと、ガルドはしばし静かに目を閉じた。
思い出されるのは、かつての遠征の日々。
名もない仲間たち。交わした剣と、言葉。
そのなかの誰かからの手紙だったのだろう。
「……無事なら、それでいい」
その夜、ガルドは珍しく火を灯し、手紙をそっと棚にしまった。
それは、飾られることのない勲章のように。
ミーナが部屋を訪れる。
「ガルドさん、どうしたんですか? 今日はいつにも増して静かで」
「……風の音を、聞いていた」
「……なんか詩人みたいなこと言ってる……!」
「……風も、過去も、どこか似ている」
「おお、やっぱり詩人だった!」
そうして、ふたりの会話が夜に溶けていく。
今回は、ガルドの“過去”にほんの少し触れる回でした。
語らないけれど、確かにある歩みと仲間。
その重みが、彼の静けさをつくっているのかもしれません。
次回は、春の芽吹きと“ガルド、家庭菜園を始める”回!
筋肉で畑を耕す日々、そしてトマトとの因縁!? お楽しみに!




