第15話『甘さと苦さと、チョコレートという試練』
季節は冬の終わり――バレンタイン到来。
村の女の子たちがそわそわする中、
なぜかガルドが「チョコ作り」に巻き込まれることに!?
「ガルドさん、お願いがあるんです!」
「……断る前提で来ているな」
「だって絶対断ると思ったから!」
ミーナが苦笑しつつ手渡したのは、カカオと砂糖とレシピ表。
「村の女の子たちがチョコ作りに挑戦してるんですけど、材料の準備とか、火加減とか……手伝ってもらえませんか?」
「……火力は任せろ」
(※全てを溶かし尽くす意味で)
かくして、ガルドは村の少女たちの「お菓子作り教室」に強制参加させられる。
最初の課題は――チョコの湯せん。
「……火が弱い。薪を三束」
「強すぎィ!! それ溶けるどころか煮えるやつです!!」
少女たちは大騒ぎ。
けれどもガルドは、鍋の湯を一定の温度で保つことに意外な才能を見せた。
「火を見ていると、落ち着く」
「わあ……それっぽいこと言う……」
次の作業は――型に流し込む。
ガルドの手によって、ひとつの型に過剰なまでに盛られるチョコレート。
「これは……栄養価重視?」
「……重装甲チョコと名付けた」
「名前からして胃もたれする!!」
だが――完成した“ガルド式チョコ”は、意外にも子どもたちに人気だった。
「これ……食べごたえある!」「歯ごたえも強い!」
「もはや武器じゃん!」「逆におもしろい!」
「……受けた」
「受けちゃったー!」
そして帰り際。
「ミーナ。……これ」
ガルドは、ひとつだけ別に作っていたチョコを差し出した。
小さなハート型。見た目は少し不恰好だが、包装は丁寧。
「あなたが……作ったの?」
「……レシピ通り。計量は±0.1グラム以内」
「……ガルドさんらしい。ありがとう」
彼女は、それをぎゅっと胸に抱えた。
「ホワイトデー、覚悟しててくださいね?」
「……何をする日だ」
「勉強しましょうねー!」
今回は“甘くて苦い”バレンタイン編。
無骨なガルドでも、不器用ながら気持ちを込められる――そんな一面が描けました。
次回は、“旅芸人の再訪と村の音楽祭”!
ガルド、今度こそリズムを刻むのか!?お楽しみに!




