第12話『編め、戦士よ――毛糸という名の戦場を』
季節は秋から冬へ。
冷え込む村で、ミーナが言った一言――
「みんなにマフラー、編んであげたいな」
そこから始まった、筋肉による“編み物”との戦い。
「……毛糸、だと?」
ガルドはテーブルの上に置かれたふわふわの糸の束を見下ろした。
それは明らかに、これまで戦ってきたどの敵よりも柔らかく、脆く、しかし――
「……戦意を感じる」
「感じなくていいです! ただの毛糸です!」
村の女性たちが冬支度を進める中、
ミーナが「せっかくだから、ガルドさんも編み物してみません?」と提案してきたのだ。
「誰かにマフラーを贈るのって、なんかあったかくていいじゃないですか」
「……任せろ。俺が編む」
「言ったな!? 絶対途中で投げ出さないでくださいよ!」
かくして始まった、“筋肉と毛糸の仁義なき闘い”。
──第一の壁:力加減。
ガルドが少し引っ張っただけで、毛糸が「ブチィッ」と裂けた。
「……弱い。まるでひよこの羽」
「優しく持ってください!!糸を!ひよこじゃなくて!」
──第二の壁:器用さ。
指先で細かく糸をかけ、針をくぐらせる工程。
しかしガルドの指は、鍛え抜かれた“岩石級のゴツさ”。
「……編み棒が、手の中で行方不明になる……」
「手がでかすぎて見えないんですね!? そんなことある!?」
──そして、数時間後。
「できた」
「えっ、ほんとに!? 見せてください!」
ミーナが駆け寄って確認すると――
そこには、異様に太く、長く、重そうな“マフラーという名の毛糸アーマー”があった。
「……これはもう、肩掛け防寒具というより、布製盾では?」
「防御力重視した」
「いやファッション性も重視して!? 寒さとの戦いですけど、見た目も大事!」
だが――その“マフラー”を子どもたちが見て叫んだ。
「すげえ! ガルドさんのマフラー、かっこいい!!」
「ぼくも欲しい!! それ巻いたら無敵になれる気がする!」
「……そうか」
ガルドは小さく頷いた。
誰かの役に立つなら――毛糸でも、編み続けようと思った。
今回の敵は、やわらかく、しなやかで、繊細。
それでも筋肉は、それに挑んだ!
ガルド式マフラー、村の小学生男子にバカウケ中です。
次回は、“雪の日のかまくら騒動”!
筋力全開で雪を運ぶガルドが、まさかの芸術家魂を発揮する……!?
どうぞお楽しみに!




