第10話『サプライズは静かに、でもバレてる』
ミーナの誕生日が近い――
村人たちはサプライズパーティーを計画するが、
無表情・無口のガルドが“囮役”に選ばれてしまった。
果たしてこの筋肉男に、演技はできるのか!?
「ガルドさん、相談です!」
「……なんだ」
ミーナがいないタイミングで、村の若者たちが集まってきた。
「今度、ミーナちゃんの誕生日でサプライズパーティーやるんですけど……」
「あなたが“目くらまし役”をお願いします!」
「……俺が?」
「だってガルドさんって、いつも無表情じゃないですか! 何考えてるかわからないし、絶対バレない!」
「……褒められているのか?」
「最大級に信頼してます!」
というわけで、当日。
「ミーナ。木材の整理を頼まれた。手伝え」
「へ? え、なんでガルドさんが……? 今日、暇って言ってたのに……」
「忙しくなった。突発的に」
「……?」
ガルドの“違和感のある淡々さ”に、すでにミーナは首をかしげていた。
彼女がいない間、村では急ピッチでパーティー準備が進んでいた。
料理、飾り付け、プレゼント、そして――ガルドの“戻し役”。
「じゃ、ガルドさん。頃合い見て戻してきてください!」
「……了解した」
再びミーナを連れて村に戻るガルド。
彼は何も言わない。ただ、歩く。
「……なんか今日はおかしいな。みんなの姿も見えないし……」
村の広場に差しかかると――
「ミーナ、誕生日おめでとうーーー!!」
クラッカーの音。
飛び出す笑顔。
そして、手作りの花飾りの冠が、彼女の頭にそっと乗せられる。
「えっ……えええっ!? なにこれ、なんで、え、ガルドさん……?」
ミーナがぽかんと振り返ると、そこには無表情のまま、
手にケーキを持つガルドの姿があった。
「……運んだ。壊れてない」
「そっち!?」
「あと……その、誕生日……おめでとう」
たどたどしいが、確かに込められた一言だった。
ミーナは、くすっと笑った。
「うん、ありがとう。……今日のガルドさん、わかりやすすぎたけどね」
「……ばれてたか」
「うん。でもね、そういうの、うれしいよ」
不器用なサプライズも、気持ちがこもっていればちゃんと届く。
ガルドなりの“祝い方”に、ミーナも笑顔を返してくれました。
次回は、“迷子の猫”大騒動!
筋肉で猫を追いかける、シュールでほのぼのな一日をお楽しみに!




