表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さ迷う竜は、番(人間)の足に追い縋る  作者: ゆいみら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/71

心を乞う竜4

 

 町の外れの墓地で、ローゼは埋葬される母親を見届けた。


 男達が犠牲になった人々を、あらかじめ掘った穴へと並べて土をかけていく。布にくるまれた彼女の母親に土が掛けられる番となり、ローゼは目を反らさずにそれを見ていた。


「お母さん」


 土の上に、ささやかな花束を置いた彼女は、長い時間その場に立っていた。もう涙は乾いていた。


 そこかしこから微かに上がる煙が、青空に灰色を溶け込ます。


 酷く孤独だった。淋しくて悲しくて怒りで一杯の心に、あの銀髪の青年の言葉が浸透することはなかった。

 母親の遺体を目にし、その死を認めると、興奮状態から一変、虚無感に押し潰される。


 幼い少女の心には、母親を失った衝撃が強すぎて何も受け入れる余地は無かった。


 ぼんやりと地面を見つめる少女の、か細い背中を辛抱強く見守っていた黒苑は、後ろから彼女の肩に手を回して抱き寄せた。


「ローゼリア、貴女をやっと見つけたと思ったのに……兄上までも……」


 悔しそうな声音を隠すことを止め、黒苑は膝を付いて、彼女の顔を自分に向けさせた。


「あの男の言葉は偽りだよ」


 一言一言少女に教え込ませるように、同じような顔をした青年が、彼を否定する。


「信じてはいけないよ。信じれば傷付くのは自分なのだから。貴女を愛せるのは俺だけ。誰かが貴女に愛を囁くなら、疑って否定して、それは違うから。間違って誰かを好きになってはいけないよ、辛い目に合うから。ご覧……貴女の両親のようになってしまうよ」

「信じては、だめ……?」

「そう、ローゼは俺を見たらいい」

「みる?」

「そう、俺だけを」


 彼女の頬にキスをして、彼は微笑んだ。


「今は情勢も落ち着かないし、貴女はまだ幼い。でも時が来れば、きっと貴女を救ってあげる」


 虚ろな目で見上げる少女を、黒苑はうっとりと見つめて呟いた。


「ああ……貴女はまるで人形のようだ」


 その直後、戦は終結し、自分で生活できるようになったら自宅に帰るという約束の元、ローゼは一旦孤児院へと預けられた。


 銀髪の青年が再び姿を現したのは、最初に会ってから3ヶ月後のことだった。

 彼女が庭で花を摘んでいたら、満面の笑みで駆けて来る青年がいた。


「ローゼ!俺の番!」


 ひしっと少女を抱き締め、彼は泣きそうな声を出した。


「会いたかった!早く来たかったのに、アースレンとの戦後の交渉に時間が掛かってしまった。ローゼ、元気だったか?」


 成長ぶりを確かめるように、彼女の頬やら肩に触れていた紫苑だったが、ローゼが彼を見たまま無言なのに、ようやく気付いた。


「どうした、ローゼ?」

「お兄ちゃん、誰?」

「え?俺だ」

「知らない」

「ほ、ほら、俺だ、変態とか言ってただろ?」

「知らない」


 春風に少女の髪がふわりとそよぐ。

 紫を映す彼女の瞳は透明に澄んでいて、怪訝な表情をしていた紫苑は、やがて唇を噛み締めて目を伏せた。


「……………そうか。辛かったものな」


 そっと少女の手を取って、彼は淋しそうに笑った。


「いいさ、いずれは俺と共に生きてくれるんだ。お前を迎えるその時まで、俺がお前を知っていればいい。だから代わりに……」


 頭を垂れた紫苑は、ローゼの手の甲に唇を押し当てた。


「いつか……ずっと先でもいいから、俺にお前の心をくれないか?」











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ