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16.届かぬ謝罪。

神様(茶)視点です。

お楽しみいただけますように。

さくら達に花火を見せてやる事が出来た。

なかば騙し討ちの様な形になってしまったが、前の世界で生きていた時のさくら達が 最後にしていた約束だったので どうしても叶えてやりたかった。

少しでも前を向いてくれれば…との願いも込めて。


だが、魔王と同棲する結果になるとまでは思っていなかった。

少し…いや、かなりモヤモヤしている。

さくらを『俺』から解放してやる事を望んでいた筈だ。

それなのに、神である『私』の中に未だにいる人間の『俺』を納得させる事が出来ずにいる。

2人を残して急逝してしまった『俺』。


異界の神になってから、たまに覗いていたさくら達をある事をきっかけに時間の許す限り見守り続けるようになった。


「愛しい」・「一緒にいたい」「守りたい」という感情を抑えられず、何度も「連れて」行ってしまいそうになる『俺』。

だが、その度に自分にその資格がない事を思い知る。

何故なら、さくら達の姿を覗き見て「連れて」行きたくなる時は、決まって『俺』がまだ健康で、存命中の頃にすでに疎遠になっていたはずの『俺』の「親」が関わっているからだ…。


はじめ、『私』が様子を見ていたのは、2人が家に居る時が多く、外での様子はほとんど見ていなかった。

だが、異変には、すぐに気付いた。

明らかに さくらの様子がおかしかった…。

酷く塞ぎ込み、子供に向けられる笑顔もいつも悲しげだったからだ。

病院で見ていた表情よりも更に青白く、暗い。

「原因を知りたい」と思った。

何が、さくらをあれほど疲弊させているのだろう…。

そう、ポツリと呟いた『俺』の言葉を

たまたま創造神が聞いていたのだろう、

背後から唐突に「知りたいか?」と問われ、一瞬の間も開ける事無く頷いてしまっていた。

「知らない方がいいかもしれないけどね~。」とニヤリと笑いながら、小声で言っていた事には、気づかなかった。


これがきっかけとなって、『俺』は軽くストーカー紛いにさくら達を見続けるようになってしまうのだった。


それから見せられたもので、『俺』は初めて自分の親に殺意を抱いた。


水盤に映し出された映像には、見慣れた殺風景な空間に置かれた数脚の椅子と机。

そこに座り、俯いて 祈るような姿勢で佇むさくらと、彼女の向かいの席に深く腰掛けてうっすらと笑みを浮かべているようにすらみえる『俺』の父親がいた。


何を話しているのか、思わず水盤に近づいて覗き込んでしまう。


「あんたには、わしらの面倒をみてもらうからな。

長男の所に嫁に来たからには、当然の事だよ。

解っているだろうな…あいつがどうなろうと、そんな事は関係ない。

とにかく、わしらの面倒をみる事は、絶対だ。いいな!」


見慣れているはずだ、そこは『俺』が最後を迎えた病院にある待合室のひとつだった。

たしか、手術中の患者の家族や見舞いにきた人達が待機する為の場所であったと思う。


もしや、これは『俺』の手術中の出来事なのか?……自分の息子が生死のかかった手術をしている最中に自分達の面倒をみろと心労でやつれ、顔色も悪いさくらに詰め寄っているのか?

愕然として、不意に隣に目をやると、

普段は フードを目深に被り表情を見せる事の無い創造神が、なんとも言えない顔をして立っている。

『俺』の入院後半から、さくらが疲れている事には、気づいていた。

時々、酷く疲弊している時もあり、毎日の病院通いと慣れない育児が原因だろうと勝手に思っていたが、どうやらそれは、間違いだったようだ。

『俺』の看病の傍らで義理の「親」の面倒までみさせられていたのか…。

彼女の疲弊の原因は、『俺』の「親」だったのだ。

その事実に今更気づかされるなんて、

「最低だろ…こんなの…。」

あまりの怒りで身体が震える。

大の男が、泣くなんて思ってもみなかったが、鳶色の瞳から一筋 涙がこぼれた。

そして、どうにか声を絞り出すと、

絶望で表情が消えたさくらに向かって

決して届く事のない心からの謝罪の言葉を口にする。

「さくら……すまない。」…と。

最後までお読みいただきありがとうございます。

遅筆ではありますが、完結まで頑張って書いていきたいと思います。

お付き合いいただければ幸いです。

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